宝永5年(1709)、岡山城三之外曲輪南部の屋敷で火災が発生しました。火は北東方向へ広がっていくと旭川東岸にまで到達し、翌日の明け方まで燃え続けました。100軒以上の士屋敷、300軒以上の町屋が全焼したこの火災は、出火元となった屋敷の持ち主の名前から「大村火事」という名称で記録に残っています。火災の範囲は現在のハレノワ周辺から京橋の北にある森崎稲荷にまで及ぶと推定され、如何に大規模な火災だったのかが伺えます。
紹介する遺物はその大村火事を実際に経験した磁器たちです。どれも茶色っぽく変色していたり、瓦や土塊、別の破片と溶着してしまっています。これらの現象はすべて、長時間高温にさらされたことによって起きた変化です。
2019年に実施した岡山城三之外曲輪跡の発掘調査では、大村火事による江戸時代の焼土層が確認され、このような陶磁器や瓦片が多数出土しました。被災した遺物の多くは直径3m程の大きな土坑から出土しており、火災後にまとめて廃棄処分されたのでしょう。
こうした歴史の一場面に遭遇するのも、発掘調査の面白いところです。
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