令和7年度予算案並びに関係諸議案のご審議をお願いするに当たり,市政運営に関する所信を申し上げ,市民並びに市議会の皆様方にご理解とご協力を賜りたいと存じます。
私は間もなく3期目の最終年度を迎えます。これまでふるさと岡山の飛躍と市民の最大幸福の実現を目指し,誇りと愛着の持てる岡山市を実現させるべく,「住みやすさ」「力強さ」「安全・安心」を市政推進の3本柱に掲げ,都市の総合力を高める政策に全力で取り組んでまいりました。
具体的に何点か申し上げますと,まちなかにおいて賑わいの拠点づくりや歩いて楽しいまちづくりを進め,岡山のまちに大きな変化をもたらすとともに,魅力と活力あふれる持続可能な地域づくりを進め,あわせて,利便性の高い公共交通ネットワークの構築を推進してまいりました。また,ピーク時には849人に達した保育園等の待機児童の解消や子ども医療費助成の大幅拡充などの子育て支援,教育委員会と各学校が一体となって達成した子どもたちの学力の大幅な向上,そして,「ポジティブ・ヘルス・オカヤマ」の推進により,子育てがしやすく,健やかに暮らせるまちを実現してまいりました。
経済面では,イノベーション創出と経営基盤強化支援による産業振興や文化財と観光の融合による観光誘客を進めるとともに,再開発をはじめとした新たな民間投資を呼び込むなどまちに好循環を生み出しました。平成23年から10年間の市内総生産の伸び率は政令指定都市の中で3位,民間投資の伸び率は2位を記録しております。
災害対策については,未曽有の被害をもたらした平成30年7月豪雨を教訓として,ハード・ソフト両面から総合的な浸水対策が着々と進んでおり,自主防災組織の組織率は94.3%に達しております。
これまでの取組が結実して,市民の皆様の暮らしやすさや,岡山の都市としての力強さ,そして安全・安心は大きく向上しており,様々な場面で「岡山のまちは動いている」との評価をいただく機会が増えているところです。
3期目の最終年度となる令和7年度におきましては,これまでの歩みを止めることなく様々な取組をステップアップさせるとともに,市民の皆様の心を豊かにし,わくわくさせるような施策を進めてまいります。経済界やトップチームとともにアリーナの整備に挑戦し,若者や子どもたちの未来への希望を大きく育むとともに,岡山の歴史に関しても,「新たな倭国論」や「戦国宇喜多家の顕彰」など,従来とは違う視点からの分析・発信を行い,市民の皆様の郷土を愛する心に訴えてまいります。さらには,これまでで初めて1年間に複数の岡山市主催の国際会議,「グローバルRCE会議」と「ユネスコ創造都市ネットワーク文学分野に関する国際会議」を開催し,国際社会における岡山市のプレゼンスを高めてまいります。
これらを通じて,市民の皆様の岡山のまちへの誇りと愛着がさらに高まるよう,力を注いでまいります。
それでは,令和7年度予算案の概要について申し上げます。
一般会計の予算額は,前年度から237億円,率にして6.2%増加し,過去最高額の4,093億円となっております。
一般会計の歳入のうち市税収入は,雇用者所得の改善による個人市民税の増加や好調な企業業績による法人市民税の増加等により,4年連続で過去最高額を更新する1,400億円となる見込みです。一方,歳出については,児童手当の拡充等により社会福祉のための扶助費が73億円増加し,新庁舎整備に伴う消防指令システムの更新等により普通建設事業費が87億円増加しております。
予算編成に当たっては経常的経費の見直しや有利な財源の活用等に努めており,令和7年度の市債発行額は479億円となっておりますが,実質的な負担額を267億円程度に抑えております。
また,財源調整のための基金の取り崩し額は80億円とし,基金残高は前年度とほぼ同水準の295億円を維持しております。
その結果,本市の財政状況は,様々な施策を積極的に実施しながらも,政令指定都市の中で上位クラスの健全性を維持しております。今後とも,将来世代に負担を先送りすることなく,中長期的な展望に立ち,財政運営の健全性を確保した上で,岡山市の持続的な発展と市民生活の充実に資する施策を着実かつ積極的に進めてまいります。
市域全体,そして都市圏全体の発展の原動力となるまちなかでは,これまでハレまち通りの一車線化による歩道拡幅や岡山城のリニューアル,岡山芸術創造劇場ハレノワのオープン,下石井公園の天然芝生化など着実に事業を進めてきたところであり,表町商店街やハレまち通りで新規出店が増えるなど,まちの活性化につながっています。今後も様々なプロジェクトを展開し,市民や観光客の皆様にとって居心地がよく,楽しく快適に過ごせるまちづくりを進めてまいります。
路面電車の駅前広場への乗り入れについては,観光客を含む全ての方々の利便性と分かりやすさの向上を目的とし,令和8年度末の完成を目指して整備を進めており,今月末には一般車ゾーンが完成する予定です。また,駅前広場が岡山市の玄関口であり,政令指定都市岡山の顔であることを踏まえ,全体として統一感のあるものとすることが重要であることから,バス乗り場の上屋及び修景ゾーンについて,令和11年度上半期の完成を目指して整備を進めることといたしました。
本市のシンボルである岡山城を中心とした一帯は歴史と文化が薫る重要なエリアであり,これまで天守のリニューアルや石山公園・旭川河畔での賑わいづくりなどに取り組んでまいりました。さらなる魅力アップに向けた憩いや賑わいの機能の充実については,一帯には民間施設等も所在するため,関係者の合意形成を図りながら長期的に取り組む必要があります。そこで,まずは令和7年度に,岡山城西の丸周辺に位置する市民会館跡地について,将来的な機能拡充にも対応できるよう,オープンスペースを基本とした自由度の高い広場の整備に着手いたします。
新庁舎については令和8年度の完成を目指して整備を進めており,現在の本庁舎を解体した跡地に整備する新たな地下駐車場や大供公園などについては,緑あふれる日常的な休息の場となると同時に,イベントによる賑わいや人々のつながりが生まれる場となるよう,検討を進めてまいります。
文学によるまちづくりについては,ユネスコ創造都市ネットワークを生かして,文学に関する国際会議を開催いたします。現在ダニーデン・シアトル・富川・メルボルン・エジンバラの各都市から参加の内諾をいただいており,各都市の優れた取組を共有するとともに,岡山市の国際的なプレゼンスを高めてまいります。
3年に1度の国際現代美術展・岡山芸術交流については,現代アート作家のみならず音楽家などにも参加いただくことで親しみやすく,また,会場を屋外に広げることでまちそのものの雰囲気が変わるような魅力のあるものにしてまいります。
観客が主役となる「魅せるアリーナ」の整備については,地元トップチームが活動を継続していくために必要な環境整備であるとともに,コンサートなどで若者や子どもたちに夢を与える重要な事業であると認識しています。そして,その認識は経済界にとどまらず,県内各市町村とも共有しているところです。しかしながら,現在,席数の増加に伴い事業費が大幅に増加しており,アリーナが県内全域の利益となる事業であるにもかかわらず,このような大きな事業費の負担を岡山市民のみに求めることについては,いかがなものかと思わざるを得ません。したがって,岡山県が参画しない中,経済界に応分の負担をお願いせざるを得ないと考えており,経済界からも一緒に頑張ろうとの声をいただいているところです。経済界・トップチームとともに一丸となってアリーナ整備実現に向けて動いてまいります。
各地域の振興については,経済・産業の振興,歴史・文化の継承,生活機能の維持・向上という3つの視点から,地元の皆様と相談しながらこれまで以上に大きく地域振興基金も活用し,魅力と活力ある持続可能な地域づくりと地域課題の解決に向けて総合的に取り組んでまいります。
経済・産業の振興では,新規就農者の支援や農産物のブランド化,コミュニティビジネスの創出支援等により,各地域の活力を高めてまいります。
歴史・文化の継承では,戦国宇喜多家ゆかりの乙子城・亀山城の環境整備など歴史を生かした魅力づくり,日本遺産「桃太郎伝説」と「北前船」の構成文化財を生かした地域活性化や,造山古墳の保存整備など史跡・文化財の保存・活用・発信などにより,地域の誇りの醸成と活性化につなげてまいります。
生活機能の維持・向上では,令和7年度において新たに新任町内会長への説明会の開催等により地域の担い手の確保・育成を図るとともに,担い手不足を補い地域活動の負担感を軽減するため,国の補正予算を活用した町内会による草刈り機等の物品購入の支援を予定しているところです。
まちと地域をつなぐ公共交通のうち路線バスについては,減便や路線廃止がさらなる利用者の減少を招く「負のスパイラル」から脱却するため,バス事業者と協力して効率化と利便性の向上を図る中で,バス路線再編を進めております。令和7年度からは,岡山市が幹線と支線の乗り継ぎ環境の整備を行い,バス事業者が公設民営方式の導入と運行支援の下で小型バスによる支線の運行を開始いたします。まず4月に新設路線である「妹尾・北長瀬線」の運行を,下半期からは順次,高島方面,西大寺方面,庭瀬方面の運行を開始する予定としております。
また,高島駅及び上道駅の駅前広場の整備やエレベーターの設置を行うことにより交通結節点の機能強化を図るとともに,公共交通が不便な地域については,高齢者等の移動手段を確保するため,新たに横井地区でデマンド型乗合タクシーの試験運行の開始を予定しており,あわせて,犬島航路の高齢者・障害者運賃割引を行ってまいります。
産業の振興について,その前提となる市内の経済状況をみると,近年の市内総生産や民間投資の伸びに現れているようにマクロとしては順調に推移しており,本市のこれまでの企業立地促進やスタートアップ支援などの産業振興施策も,これに寄与しているものと考えております。一方で,今後の課題として,賃金の上昇が物価の上昇に追い付いていないことが挙げられます。
そこで,企業収益の向上のため,新たな事業領域に挑戦する意欲的な中小・小規模事業者の設備投資を支援してまいります。また,人材確保が厳しさを増す中で投資を行う企業を後押しするため,政令指定都市で初の取組として,企業立地に関する補助金について雇用要件を撤廃いたします。これらの取組がさらなる賃金の上昇につながればと考えています。さらに,新規創業を支援して経済を活性化するため,財政基盤が安定しない創業初期の融資返済の負担を軽減するための支援や,ワークショップ等による女性起業家の育成支援を行ってまいります。
これらに加えて,令和7年度完成予定である吉備スマートインターチェンジ24時間化・大型車対応や県道岡山赤穂線等の環状道路の整備,県道岡山児島線,県道箕島高松線等の幹線道路の整備など,渋滞の緩和や物流の効率化に寄与する道路ネットワークを強化し,企業の物流拠点の集積を図ってまいります。
観光振興については,文化財と観光の融合をキーワードに,造山古墳の形状の復元,VR動画制作,浦間茶臼山古墳の周辺整備等により「5世紀初頭は吉備と大和の二頭政治だった」とする新たな倭国論を伝えるとともに,戦国宇喜多家の顕彰を進めることにより,葬られた歴史に光を当て,郷土岡山の先人たちの偉大さや魅力を発信してまいります。また,岡山城や万富東大寺瓦窯跡などの史跡保存整備やイベント実施を行い,後楽園などとあわせてPRすることにより,市民の誇りの醸成や国内外からの観光誘客につなげてまいります。
また,世界が注目する大阪・関西万博や岡山芸術交流,瀬戸内国際芸術祭の開催を大きなチャンスと捉え,西のゴールデンルートアライアンスや県内の自治体と協力して万博へPRブースを出展すること等により,岡山の認知度向上とインバウンド誘客を促進してまいります。
子育て分野では,様々な課題解消に向けた取組を着実に進めてきており,これまでの取組をより一層発展させながら,安心して子どもを生み育てることができる環境づくりを進めてまいります。
放課後児童クラブの待機児童問題については,小学校入学後も子どもを預けて働きたいという保護者のニーズに応えるため,令和9年度での待機児童ゼロの実現に向けて取り組んでまいります。令和7年度には14か所の専用施設の建設に着手するとともに,新たに民間事業者に対する安定的な運営のための支援を大幅に拡充して新規参入を促し,受け皿確保を強力に進めてまいります。
また,保育園等における障害児等の個別の事情がある児童の受け入れや障害児の通所支援を拡充するほか,社会的養護が必要な子どもの健やかな育ちを保障するために里親による養育を推進してまいります。
さらに,不妊治療について,令和4年度から一部に健康保険が適用されたもののなお経済的負担が大きいことから,不妊に悩む方々が経済的な理由で子どもを産むことをあきらめることなく安心して治療を受けられるよう,支援を行ってまいります。
教育分野では,第2期教育大綱に掲げる「自らの個性を磨き,選択と挑戦を繰り返すことができる子ども」の育成に向け,ICTの活用により子どもが夢中になる授業づくりを行うとともに,不登校児童などの支援を必要とする子どもたちに対する外部専門家によるアセスメントの充実を図ってまいります。
また,学校給食における保護者の負担軽減のために,燃料費等を公費で負担するとともに,国の補正予算を活用した食材費の高騰による影響の緩和を予定しています。さらに,部活動などの際の生徒・教職員の熱中症を防止するとともに,災害時等に事前避難や長期避難のために使用した際の避難所環境を改善するため,市立中学校の体育館に空調設備を整備してまいります。夏場に特に高温多湿となる学校給食調理場については,固定式のスポットクーラーに追加して,新たに移動式のスポットクーラーを配備し,給食調理員の労働環境の改善を図ってまいります。
さらに,様々な事情により十分な教育を受けられないまま中学校を卒業した方などの学び直しの機会を確保するため,今年4月に夜間中学を開設いたします。
高齢者に対する定期予防接種となる帯状疱疹ワクチンについて,自己負担額を軽減して必要な方が接種しやすい環境を整えるとともに,認知症の方やご家族の不安に寄り添うための相談窓口について,これを拡充してまいります。
また,すこやか住宅リフォーム助成金を拡充することにより,日常生活で介護を必要とする高齢者や障害者の方のご自宅での暮らしを支援してまいります。
激甚化・頻発化する豪雨災害から市民の皆様の安全・安心を守る浸水対策については,これまで今保・白石ポンプ場の整備や国富・浜地区の取水ゲート拡幅,用水路の事前水位調整の取組強化などを行ってまいりました。
令和7年度は,浦安11号雨水幹線2工区の工事着手や,山崎排水機場の整備と津島排水区のポンプ場の設計を行うとともに,引き続き雨水流出抑制施設の設置支援や自主防災組織等の地域防災活動への支援などのソフト対策を進めることにより,浸水対策の充実強化を図ってまいります。
あわせて,防災備蓄倉庫の整備や上下水道施設の耐震化などに取り組み,災害に強い都市づくりを進めてまいります。
地域の安全・安心については,全国で学校への不審者侵入事案が相次いで発生し,学校における安全性の確保が課題となる中,児童生徒の安全・安心の確保のために,全ての市立学校に防犯カメラを設置いたします。また,全国各地において悪質で凶悪な事件が頻発する中,社会全体で防犯対策を強化する必要性が高まっており,国の補正予算を活用し,町内会による防犯カメラの設置に対する支援を拡充することを予定しております。
そのほか,用水路転落危険箇所や通学路など身近な道路の安全対策にしっかりと取り組むとともに,医療機関の受診や救急車を呼んだ方がいいか迷うときに専門家からアドバイスを受けることができる電話相談窓口「救急安心センター♯7119」を,岡山連携中枢都市圏の構成市町と連携して設置いたします。
なお,先日埼玉県八潮市で発生した下水道管の破損による道路陥没事故を受け,築造40年以上かつ直径2メートル以上の下水道管について緊急点検を進めており,市民の皆様の安全・安心を確保してまいります。
脱炭素社会への取組については,公共施設の省エネルギー化を図るとともに,市民・事業者のスマートエネルギー導入を支援し,2050年二酸化炭素排出実質ゼロの実現に向けた取組を積極的に進めてまいります。
SDGsの推進については,今年10月に岡山市で,国連大学サステイナビリティ高等研究所や岡山ESD協議会と協力して国際会議「グローバルRCE会議」を開催いたします。世界と岡山のESDの推進に貢献してSDGsの達成に寄与するとともに,岡山市の魅力を広く世界に発信する機会としてまいります。
続きまして,その他の議案の主なものについて申し上げます。
甲第21号議案は,政務活動費の額を改めるものです。
甲第23号議案は,国家公務員等の旅費に関する法律の一部改正等に伴い,旅費の種目及び内容を改めるものです。
甲第24号議案は,効率的,効果的な業務執行体制を整備するものです。
甲第25号議案は,普通財産及び行政財産の貸付に関し,無償貸付又は減額貸付をすることができる場合を追加するものです。
甲第26号議案は,岡山市スポーツ・文化振興基金の設置目的に多目的屋内施設(アリーナ)の整備を追加するものです。
甲第27号議案は,政令の一部改正に伴い,国民健康保険料の賦課限度額を改める等のものです。
甲第53号議案は,あしもり認定こども園及び西大寺認定こども園を設置するとともに,大井保育園ほか1園及び足守幼稚園ほか4園を廃止するものです。
甲第64号議案は,夜間学級における授業等に従事する教育職員に対し,夜間学級教育業務手当を支給する等のものです。
甲第65号議案は,外国語指導助手等の会計年度任用職員に係る給料及び基本報酬の月額の上限を改めるものです。
甲第69号議案から甲第78号議案までは,岡山市立川張老人憩の家等の施設について,いずれも指定管理者の指定を行うものです。
甲第79号議案及び甲第80号議案は,総社市及び備前市との連携中枢都市圏形成に係る連携協約を変更するものです。
以上で提案理由の説明を終わります。
よろしくご審議の上,議決を賜りますようお願い申し上げます。
ただいま上程になりました報告についてご説明申し上げます。
報第2号は岡山市新庁舎整備事業庁舎建築に伴う衛生設備工事について,報第3号は岡山市民会館解体工事について,報第4号は岡山中央中学校区公民館ほか新築工事について,それぞれ契約金額を変更したものです。
報第5号は市有自動車の事故について,報第7号及び報第8号は退職手当の過少支給について,報第9号は固定資産税の賦課手続の不備について,報第10号は道路の管理瑕疵による事故について,それぞれ相手方と和解し,賠償額を決定したものです。
報第6号は,市有自動車の事故について,賠償額を決定したものです。
なにとぞよろしくお願いいたします。
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