抱っこやおんぶは、ママやパパと赤ちゃんとの大切なふれあい。でも「抱っこがうまくできない」「抱っこをし続けると肩や腰がつらい」「長時間の抱っこで腱鞘炎になってしまった」などという声も少なくありません。
そこで今回は「赤ちゃんとの生活をもっと楽しくラクに」をモットーに、ママと赤ちゃんの体や抱っこ&おんぶについてのアドバイスやサポートをしている、理学療法士の濱田由紀さんにお話を聞きました。
2017年から、理学療法士としてお母さんの体にかんする相談を受け、ストレッチやエクササイズを紹介してきました。その中で、腰痛や肩こり、腱鞘炎などの原因のひとつが抱っこの姿勢にあると気づいたのです。
ポイントを押さえて抱っこをすると、お母さん・お父さんの体への負担が少なくなり、赤ちゃんはリラックスしてくれますよ。
抱っこには「横抱っこ」と「縦抱っこ」の2種類があり、首が座るまでは「横抱っこ」、以降は「縦抱っこ」が基本といわれています。
これらは、お母さん・お父さんの負担を減らし、抱っこを少しでも楽にするため、そして赤ちゃんの反り返りや向きぐせを防ぎ、心地よくリラックスしてもらうためのポイントです。どれが正しくどれが間違っていると難しく考えるのではなく、「今の抱っこの仕方はしんどいな」と思った時に、できることから試してみてくださいね。
大切なのは赤ちゃんの体をすぐに離さないことです。体を密着させた状態から、コマ送りで少しずつおろしてみましょう。
ベッドや布団に赤ちゃんのお尻をつけたらちょっと待つ。背中までおろしたらちょっと待つ。頭を支えている手を離したらちょっと待つ。そうして最後に体をそっと離す。そこまでの動作をコマ送りにして、ひとコマごとに15秒から20秒くらい動きを止めながら進めるのがポイントです。
赤ちゃんが眠っている時の危険を避けるために、硬いベッドを選ばれている方も多いようです。ところが、硬すぎるとCカーブを描いている赤ちゃんの背骨が引き伸ばされるため、抱っこからおろした時に居心地の悪さから赤ちゃんが目を覚ますことがあります。軽くCカーブを保てるようにクッションなどを置いてあげるとよいと思います。
「抱き癖がつくから抱っこのしすぎはよくない」といわれた時代もありましたが、今は「抱っこは自己肯定感にもつながる愛着形成によい」といわれ、たくさん抱っこしてあげることが勧められています。
ただし、泣いたらすぐに抱っこしたり、おろすと泣くから抱っこし続けたりするのでは、お母さん・お父さんの体がもちません。「泣く」という現象に惑わされず、赤ちゃんをよく見てあげてください。なんで泣いているのだろうか、泣き方はいつもと同じだろうかなど、まずは考えてあげられるといいですね。
おんぶ抱っこで肩や首がつらいというお母さん・お父さんは、赤ちゃんの首がしっかりと座ったら、おんぶ紐を試してみてはいかがでしょう。
体のつらさが軽減されるだけでなく、両手を自由に使えるようになるので、赤ちゃんを肌で感じながら家事をできるようになります。おんぶされた赤ちゃんは、お母さん・お父さんとしっかり密着できるので安心感を得られます。そして、肩越しにお母さん・お父さんと同じものが見える共同注視で経験値が蓄積されることは、脳や情緒の発達によいとも言われています。
いっぽうで、抱っこやおんぶと同じくらい、赤ちゃんには「床遊び」が必要です。ただ天井を見ていたり、手足をバタバタさせたり、おもちゃを取ろうと手を伸ばしたり、はいはいしたり…。なにげない動きに見えても、赤ちゃんは重力を感じながら遊んでいるのです。
そうした自発的な動きが制限される抱っこやおんぶの時間があまりに長くなると、「床遊び」の時間が足りなくなってしまいます。時には、「この子は床でしっかり遊べているかな」と考えてみてくださいね。
抱っこ紐やおんぶ紐は、「誰が」「どのくらいの時間」「どんなシーンで使うのか」を考えて選びましょう。
体の大きさが異なるお母さんとお父さんが共用する場合は、調節が可能なものを。家のなかで寝かしつけの時だけ使うのであれば、着脱が簡単なものを。よだれが多い赤ちゃんなら、自宅で手軽に洗えるものを。
また、おんぶ紐兼用の抱っこ紐の場合、おんぶした時に赤ちゃんの位置が低すぎて視界が遮られたり、反り返ったりすることもあるので、購入する前に試着して確認しましょう。
各種抱っこ紐
使用に適した月齢は、同じ種類でも商品ごとに異なりますし、お母さんの体つきや赤ちゃんの発達もさまざまですから、試着して確認したうえで購入することをお勧めします。
理学療法士として一般病院のリハビリテーション科やデイサービスでの臨床経験を経て、母となりました。自ら体験した育児の大変さをきっかけに、2017年から吉備中央町の地域子育て支援拠点での活動を開始。
2021年に岡山市に転居した後は、岡山県内のさまざまな地域子育て支援拠点や赤ちゃんサロンなどでの出張講座、乳児健診でのママの身体相談、自宅訪問、親子教室などを行っています。