川入・中撫川遺跡は「吉備穴海」と呼ばれた内海に注ぐ足守川の河口付近にあたる遺跡です。立地や出土遺物などから港やその関連施設の遺跡ではないかといわれています。
この瓦は市道中撫川平野線建設に伴う発掘調査で出土したもので、吉備では最古の瓦の1つです。同じ模様の瓦は、吉備では足守川をさかのぼった岡山市津寺遺跡、政所遺跡、都窪郡山手村末の奥窯跡などで見つかっていますが、この瓦を葺いた寺院跡は見つかっていません。一方、大和(今の奈良県)では、同じ模様の瓦が奥山久米寺などいくつかの蘇我氏宗本家に関わりの深い寺院跡などで見つかっています。また、末の奥窯跡で焼かれた瓦がやはり蘇我氏に関わりの深い尼寺、豊浦寺に運ばれていることがわかっています。この瓦も同じように大和の寺院に葺くために吉備で焼かれたものが、何らかの理由で地元に残されたものなのでしょう。
そもそも、蘇我氏は大王家の直轄地である屯倉の設置をつうじて吉備の豪族達に強いコネがあったようです。吉備側にとっては瓦などの供給地の1つになるかわりに、仏教や瓦を含む先進技術などを得られるギブ・アンド・テイクの関係にあったのでしょう。建物に葺く訳でもなくこうした瓦が地元で残されていたのは、何より当時最新の文化である仏教をこの瓦は象徴するものだったからにちがいありません。
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