現在の世界共通の課題の一つとなっている「持続可能な開発(Sustainable Development:以下、SDという)」ができる社会を構築していくため、2005年1月から「国連持続可能な開発のための教育の10年」(United Nations Decade of Education for Sustainable Development:UNDESD)が開始され、同年9月にUNDESD国際実施計画(以下、「国際実施計画」という)、2006年3月には、UNDESD 国内実施計画(以下、「国内実施計画」という)が策定されました。
同時に、国連大学ではUNDESDを推進するため、世界各地域でそれぞれの関係者が連携を強化して、地域の特性に応じたESDに取り組むとともに、その成果や課題を共有化することにより、ESDの効果的な推進を目指す「ESDに関する地域の拠点」(Regional Centre of Expertise on Education for Sustainable Development:RCE)構想を提唱しました。
岡山地域では、この考え方に賛同し、2005年4月、関係各組織・団体間等の関係者で構成する岡山ESD推進協議会を設け、この協議会を中心に、岡山地域で効果的なESDを推進していくことを目指して「岡山ESDプロジェクト基本構想案」を作成し、広く公表するとともに、これに基づく活動を開始し、同年6月には国連大学から世界で最初のRCEのひとつに認定されました。
プロジェクトが開始されて4年を経過し、一定の成果や課題等が明らかとなってきたことから、2005年に策定した基本構想案を見直し、新たに、今後、地域全体で効果的なESDを推進していくため、関係各組織が取り組むべき共通の方向性を明らかにした新たな基本構想を策定することとしたものです。
岡山ESDプロジェクトが開始されて以降4年間で、岡山ESDプロジェクトへの参加組織は約40から約100組織に増え、市域の小学校区の約6割で何らかのプロジェクト関連活動が行われているほか、公民館や大学等のESD活動が活発化し、世界的にも注目されてきています。
また、広域的なESDの推進に主体的に取り組む組織や、公民館区(中学校区)全体でESDに取り組む地域が増加するなどの成果が上がってきています。このように、各組織等における主体的な取組の輪が広がっていることに伴い、岡山ESD推進協議会自体の役割が次第に変化してきており、設置当時に比べて、主に、各組織間の活動の調整機能面に重点を置くことが求められています。
一方、このプロジェクトが目指す地域全体の意識改革や、持続可能な社会の実現という面ではまだまだ課題が多く、今後、効果的なESDプログラムの開発、教員研修、参加型学習のファシリテーターや組織間コーディネーターの育成、ESD活動の育成・支援、地域全体への啓発等について、各組織が連携して取り組むための体制強化が求められています。
さらに、現在、世界全体でRCE認定地域が55地域となるなど、国内外におけるESDの取組が広がってきている中で、世界最初の認定地域として、岡山地域の成果や経験に関する情報提供や交流等を通じて、他の地域のESDの推進に貢献していくことが期待されてきています。
このプロジェクトは、以下の視点に立って実施します。
このプロジェクトは、「持続可能な社会の実現に向け、共に学び、考え、行動する人が集う地域づくり」を目的とし、それを実現するための目標を次のとおりとします。
このプロジェクトの目的を踏まえて、次の事項に取り組むこととします。
このプロジェクトに取り組む各組織間の連携・調整を図るとともに、地域全体で、効果的なESDが推進されていくため、次の役割を担います。
(ア)岡山ESDプロジェクトの基本方針の策定
(イ)プロジェクトの趣旨に合致した活動及びこれに取り組む組織の指定や支援、協働によるプロジェクトの推進
(ウ)ESDに取り組む各組織間の連携や交流の推進、連絡調整
(エ)地域全体のESDに関する知識・理解の向上
(オ)ESDに取り組む他地域や関係機関との情報交換や交流の推進
また、この役割に基づいて具体的な事項を進めるため、次の附属組織を設けます。
岡山地域でESD活動に取り組む組織の中で、岡山ESDプロジェクトの趣旨に賛同して、研修や情報交換、取組成果の提供等を行う組織を協議会が指定するものです。
また、指定の対象は、原則として、ESDに取り組む組織全体を指定することとしますが、組織自体が大きい場合などには、必要に応じて、個別の活動単位で指定することとします。
なお、重点取組組織の中で、財政的な基盤が極めて弱い組織については、協議会が、その活動経費の一部を助成することとします。
重点取組組織をはじめ地域内で行われる様々なESD活動を支援するため、指導者の育成や異なる組織間の連携・交流のコーディネート、地域全体のESD活動に関する情報発信等の特定の機能等に関して、地域全体のESD推進の中核機能を有する組織です。
《参考》
平成20年度現在の該当組織としては、下記の組織が考えられます。
重点取組組織をはじめ、地域で様々なESD活動に取り組む組織等を支援する機能を有しており、プロジェクト全体の推進に貢献する組織です。
《参考》
平成20年度現在の該当組織としては、下記の組織が考えられます。
国連大学等と連携を図りながら、プロジェクトを発展させていくための調査・研究や、地域の各組織が取り組むESDの評価、指導者の育成等を通じて、プロジェクト参加組織活動のサポートを行う組織です。
岡山ESDプロジェクトに参加している組織の中で、ESDに関する専門的な知識や技能を有する大学等の組織が担い、それぞれの組織の目的や特性等を踏まえて行います。
また、このプロジェクトの参加大学やプロジェクトの趣旨に賛同する研究者等で、任意に連携組織を設け、情報交換や連携強化を図ることにより、地域の研究組織としての機能を補完します。
《参考》
平成20年度現在の該当組織としては、下記の組織が考えられます。
このプロジェクトを推進するため、[1]上記のプロジェクト推進組織、[2]このプロジェクトに賛同して自ら活動する機関、及び[3]このプロジェクトを支援する機関等で「岡山ESDネットワーク」(以下「ネットワーク」)を構築します。
なお、このネットワークは、特に新たな組織化を図るのではなく、岡山ESDプロジェクトに係わる機関等により形成される緩やかな協力関係の構築です。
また、ネットワークに参加する機関への関連情報の整備・提供を図るため、関連情報の整備・提供システムの構築を図ります。
ESDに係る各組織や中学校区単位等の地域が、それぞれの特性に応じたESDの実施能力を高めていくため、次の事項に取り組みます。
地域内で、ESDに取り組んでいる様々な組織・機関等の教育者、担当者等を対象に、SDの最新知見や先進的なESD事例等に関する講習会や、多様な組織の指導者が情報や意見の交換などができる場を設けること等により、その資質能力の向上を図ります。
このプロジェクトに参加している組織・機関等の成果や課題、他地域の先進事例等を踏まえ、対象者等の属性や、学習目的、組織や施設の役割・特性等に応じた多彩なESD学習プログラムや教材等を体系的に整備し、また、それを適切に提供する仕組みを整備します。
各組織・機関等における効果的なESDの推進を支援するとともに、地域全体へのSDに関する知識・理解の向上等を図るため、次の事項に取り組みます。
市民や事業者等による主体的な持続可能な社会づくりへの取組や、ESD推進組織・機関による効果的な活動を支援すること等のため、地域の環境や社会、経済、文化等に関する種々の情報を、それらの相互関連のもとに総合的・体系的に整備していきます。
地域内には、現在、多くの社会教育や学校教育関連施設等があり、地域全体の教育活動の中で中心的な役割を担っており、これらの諸施設との連携を図って、それらの施設のESD機能の強化を図ります。
なお、今後、地域に新たに設けられるESD関連施設や制度の創出に当たっては、ESD推進の拠点機能が付加されていくよう、関係組織・機関等との連携強化に取り組みます。
地域から持続可能な社会づくりの輪を広げていくためには、関連各組織・機関等において、適切なESDが推進されることにより、地域全体のSDに関する知識・理解の向上が図られ、その成果に基づき、身近なところから、自主的・積極的なSD活動が推進されることが重要となります。
このため、このプロジェクトに参加する各組織・機関等において、まず、自らがSD活動を実践するとともに、それぞれのESD対象者等によるSD活動が発展するよう、その育成・支援等に取り組みます。
地域内で関連組織が連携してESD活動を行うとともに、関連イベントでのパンフレットの配布やパネルの展示、重点組織の活動の紹介等により、地域全体へのESDの啓発を図るとともに、若者の積極的な参加を促します。
岡山地域関係者の広域的なESD関連会議・イベント等への参加や、他のRCE認定地域関係者との相互訪問による交流や情報交換等の促進、国連大学への地域の取組成果に関する情報提供等を通じて、広域的なESDの推進に貢献するとともに、それらで得られた他地域の情報を地域内に広く紹介することにより、地域の効果的なESDの推進を図ります。
このプロジェクトの活動資源については、それぞれの組織が既存の資源を活用することを基本とするとともに、必要に応じて、外部資金を中心に新たな資金の獲得に努めることとします。
一方、協議会自体の活動資源については、対象地域の自治体が負担することとします。
このプロジェクトは、2年ごとの事業期間を設定しており、既に、開始以来4年を経過したことから、これまでの成果や課題等を踏まえ、今後6年間(第3期~第5期)における地域全体のESDを効果的・計画的に推進するため、次のような方針で段階的に事業を進めることとします。
なお、地域全体や個別の地域・組織での取組の進捗状況、課題等を踏まえて、適宜必要な見直しを行うこととします。
第1期及び第2期事業における成果と課題を踏まえ、次の事項に取り組むこととします。
ア.地域の関連組織・機関等の主体的な参加、地域内外との連携を促すこと
イ.指導者等のSDに関する理解・認識を高めること
ウ.岡山地域の特性を活かしたプロジェクトや教育プログラムを作成・実施し、市民への啓発を図ること
エ.プロジェクトに参加している財政基盤の弱い組織の活動を支援すること
オ.中核組織や中間支援組織との一層の拡大を図ること
カ.地域全体へのSDに関する知識の普及を図ること
キ.アジア地域等、他のRCEと連携して、生物多様性条約第10回締約国会議に貢献すること
第3期事業における成果と課題を踏まえ、第2期事業ア~カの他、次の事項に取り組むこととします。
ア.岡山地域の特性を活かして実施したプロジェクトや教育プログラムの実施、検証を行う。
イ.2015年以降も主体的、継続的にESDが推進される枠組みを整備する。
このプロジェクト全体の成果や課題等を総括し、今後、岡山地域で、各組織・機関等がそれぞれ主体的なESDに継続して取り組む枠組みや、必要な場合には、中核組織等が連携して地域全体のESDを推進していくための新たな組織づくり((仮称)岡山ESD推進連絡協議会)を整備した後、プロジェクトを終了します。
岡山ESD推進協議会及び岡山市は、プロジェクト参加各組織・機関からの取組状況や自己評価等に関する報告結果等をとりまとめるとともに、必要に応じて、その結果等に基づき、ESD評価委員会や岡山市環境保全審査会ESD推進手法検討専門部会、大学等の研究組織が、プロジェクト全体の実施状況の評価を行い、その結果を公表するとともに、関係機関に提供します。
また、必要に応じて、市民等を対象としたESDへの参加状況、SDの認識度、持続可能な社会づくり活動への参加状況等に関する意識調査を実施します。
地域全体や各個別の地域・組織での取組成果や課題等に的確に対応するため、見直しが必要な場合は、適切に対応していくこととします。
この基本構想については、必要に応じ、岡山ESD推進協議会において改訂します。
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