会期:令和3年2月5日(金曜日)から3月9日(火曜日)まで ※月曜休館
会場:岡山市立中央図書館 2階視聴覚ホール前展示コーナー
令和3年1月26日(火曜日)に第36回坪田譲治文学賞が発表されました。
この機会に、岡山市出身の児童文学者で岡山市名誉市民でもある坪田譲治ゆかりの当館所蔵資料(計54点)を展示して、作家の人柄と坪田文学の魅力を紹介します。
なお、展示資料は主にご遺族からの寄贈によるものです。
展示資料
展示の様子(1)
坪田譲治は、明治23年に岡山県御野郡石井村島田(現在の岡山市北区島田本町)に生まれました。
大正4年に早稲田大学英文科を卒業すると、ランプ芯を製造していた実家の島田製織所の経営に携わり、帰郷と上京を繰り返す中、文学を志して同人誌等に作品を発表していました。
ところが昭和8年、43歳の時、島田製織所の経営を巡り取締役を解かれたため、上京して文学に専念することとなりました。
以後数年間、「吾は窮鼠文学の猫を噛まん」という言葉で語るほど生活に窮するものの、強い覚悟で文学への情熱を燃やし続けました。
この時期に書かれた『お化けの世界』(昭和10年)、『風の中の子供』(昭和11年)、『子供の四季』(昭和13年)は高い評価を得て、作家生活も安定してきました。
展示資料
<写真パネル>金川中学校の頃
<写真パネル>早稲田大学英文科卒業生(大正4年)
「河童の話」(『赤い鳥』昭和2年6月号)※復刻版
色紙「吾は窮鼠文学の猫を噛まん」(昭和9年)
『お化けの世界』(竹村書房, 昭和10年)
『魔法』(健文社, 昭和10年)
<写真パネル>新宿・秋田屋にて(昭和11年頃)
『風の中の子供』(新潮社, 昭和14年)
北村透谷記念文学賞 賞牌と透谷会からの通知(昭和12年)
『子供の四季』(新潮社, 昭和13年)
小穴隆一「T君」(油彩画)(昭和15年)
展示の様子(2)
坪田譲治は、昭和36年、雑司ヶ谷の自宅に「びわのみ文庫」を開設して、地域の子どもたちに開放しました。
さらに、昭和38年には童話雑誌『びわの実学校』を創刊して、若手作家の活躍の場としました。
坪田譲治の文筆活動は、小説と児童文学の両方にわたっていましたが、その他にも、昔話、児童文学論、随筆、『赤い鳥代表作集』の編集や教科書の監修など、幅広く活躍しました。
坪田譲治の文学の特徴として、子どもが生き生きと描写されていること、大人の世界と子どもの世界が見事に交流していること、郷土・岡山が作品世界の主要な舞台となっていることなどが挙げられます。
展示資料
<写真パネル>早稲田大学大隈講堂にて(昭和26年)
<写真パネル>雑司ヶ谷の自宅にて(昭和27年)
<写真パネル>雑司ヶ谷の書斎にて(昭和30年)
<写真パネル>金重陶陽宅にて(昭和30年)
日本芸術院賞 受賞牌(昭和30年)
『坪田譲治全集』(新潮社, 昭和29年)
<写真パネル>妻・ナミコと共に(昭和36年)
『びわの実学校』創刊号(昭和38年)
<写真パネル>びわのみ文庫書斎にて(昭和38年)
<写真パネル>日本芸術院会員祝賀会・椿山荘にて(昭和39年)
<写真パネル>岡山市立図書館50周年記念講演会 -館長室にて姉・伊丹政野と(昭和41年)
<写真パネル>びわのみ文庫前にて子ども達と共に(昭和43年)
<写真パネル>『びわの実学校』編集同人と共に
『かっぱとドンコツ』(講談社, 昭和44年)
展示の様子(3)
岡山市立中央図書館では、ご遺族から寄贈された「びわのみ文庫」の蔵書、坪田譲治の蔵書、原稿、色紙、軸物、写真、扇面、短冊、書簡、愛用の品々などを「坪田文庫」として保存しています。
今回の展示では、その中から主要なものを選びました。
他に、岡山市立中央図書館前庭には「坪田譲治文学碑」(蛭田二郎作)があり、「童心浄土」の文字が刻まれています。
坪田譲治の業績をたたえて制定された「坪田譲治文学賞」は「大人も子供も共有できる世界を描いたすぐれた作品」に与えられ、今年で第36回を迎えます。
その間、後に直木賞、芥川賞を受賞する作家を輩出し、映画化、ドラマ化される人気作品も生み出しました。どの受賞作も魅力的で、幅広い年代の方に読まれています。
展示資料
『ねずみのいびき』(講談社, 昭和48年)
野間児童文芸賞 賞状(昭和48年)
朝日賞 受賞牌(昭和49年)
岡山市名誉市民肖像画(複製)(昭和54年)
愛用のステッキ
愛用のインバネス(着物用のコート)
愛用の帽子
愛用の硯箱と筆
第1回坪田譲治文学賞冊子(昭和61年)
展示の様子(4)
展示資料
手稿「でんでん虫」 初出:『赤い鳥』昭和10年2月号
鈴木三重吉による朱筆書き込みがあり、厳しい指導の様子がうかがえます。
手稿「子供の四季(5)」 初出:『都新聞』昭和13年
『都新聞』に掲載される前の草稿で、推敲を経て、掲載されたようです。
手稿「京山の思出」
旧制中学時代に京山へ登り、岡山城を遠望したときの思い出を綴った随筆です。
手稿「童話と人生」
晩年の坪田譲治が、自分の人生を振り返って執筆した随筆です。
坪田譲治が書いた色紙・短冊からは、ふるさとへの思い、子どもへの深い愛情が感じられるものが多く残っています。
展示資料
色紙「故郷に花静なる田園あり」
色紙「古里の小川に鮒はまだ居るだろうか」
色紙「清純にして素朴」
色紙「心の清きものは幸なり」
色紙「童心浄土」
短冊「子供は咲く花」
短冊「子供極楽」
展示の様子(6)
今回の展示にあたり、主に以下の文献を参考にさせていただきました。
所在地: 〒700-0843 岡山市北区二日市町56 [所在地の地図]
電話: 086-223-3373 ファクス: 086-223-0093