私は2025年春に入庁した新規採用職員です。今年の5月末から7月頭にかけて行われた岡山城本丸跡の発掘調査は、私にとって人生で初めての発掘調査現場となりました。というのも、私がこれまで専門としてきたのは近世日本美術史で、考古学は未経験です。先輩方のお話の半分も理解できていないままに参加した調査でしたが、多くの学びを得ることができました。
現在の岡山県立図書館から目安橋を渡ると、岡山城の大手口にあたり、有名な石垣の巨岩が出迎えてくれます。史跡整備のため、その枡形にある石塁の上面と下部を掘るという調査で、主な目的は内下馬門の柱礎石など、遺構の状態を確認することでした。
最も印象に残ったのは、土の中から遺物や遺構が実際に現れることでした。当然といえば当然なのですが、伝世品ばかり扱ってきた私にとっては、モノが実際に出てくる瞬間というのは印象的でした(既に一度発掘された区域を掘っていたので、遺物の位置は動いています)。最終的に内下馬門、太鼓櫓を支えていた礎石9点が検出され、そのうち3点は今回初めて確認されたものでした。
左側の石塁と道を挟んだ右側の石塁の上に内下馬門が乗っていました。
今回の発掘調査で新たに見つかった礎石。南側の石塁の上、中央付近で出土しました。
岡山城の往時の姿は、絵図類によってかなり明らかになっています。その内容に対応しそうな遺構が見つかるたび、「本当にここにあったんだなあ」と不思議な気持ちになります。私がこれまで学んできた歴史もこうした発掘調査に裏打ちされたものであったということ、また遺物や遺構だけでなく、土地そのものからも様々な情報が読み取れるということを知りました。大袈裟かもしれませんが、埋蔵文化財について学ぶことで、私たちは土として積み重ねられた歴史の上に立っていることを感じるようになりました。
焼失前の岡山城を映した古写真。目安橋の奥に見えるのが内下馬門と太鼓櫓。
考古資料は、意識的に保管された伝世品と違い、偶然遺り、私たちの前に姿を現します。土の中に残された貴重な情報を逃さないよう、経験や知識を蓄積しなければならないと感じた現場でした。
所在地: 〒703-8284 岡山市中区網浜834-1 [所在地の地図]
電話: 086-270-5066 ファクス: 086-270-5067