「いきいき社会貢献」では、のっぷとティアが社会貢献活動に取り組む岡山の企業を取材します。第八回は、池田促成青果有限会社におじゃましました!
なお、内容は取材当時のものです。
岡山市の良いところといえば、何が思い浮かびますか?
晴れの日が多い、地震が少ない等、気候や災害に関することが多く挙げられますね。
では、岡山市の「まちの魅力」といえばどんなことが思い浮かびますか?
神戸市のようにおしゃれなまち?京都市のように日本古来の文化が息づくまち?
まちの魅力は、地域のアイデンティティであり、そこに暮らす人々が地域に対して抱く愛着にもつながります。
今回のいきいき社会貢献では、西川緑道公園エリアを中心に様々なイベントを仕掛け、まちの活性化、そして魅力づくりに取り組む「池田促成青果有限会社」についてご紹介します!
池田促成青果有限会社(以下、池田促成青果)は、1972年より西川緑道公園エリア(以下、西川エリア)に店舗をかまえる「八百屋さん」です。店舗での販売だけでなく、岡山市中心部にある100店舗の飲食店に野菜を卸しており、岡山市の食産業を広く支えています。
2015年には、改装にあわせて店舗の名称も改めました。その名も「池田促成青果ラボ」。まちに開かれた八百屋さんとして、定期的に農家を招いて対面販売を行ったり食に関するイベントを開催したりと、農家と消費者をつなげる様々な「実験」を行っていくそうです。
農家を招いての対面販売
店舗販売されている食材
池田促成青果は、八百屋さんの延長線上で農家と消費者をつなぐための取り組みを行う一方で、西川エリアを拠点にした、まちの活性化や魅力づくりにも取り組んでいます。西川エリアでは、約10年前からキャンドルナイトやマーケット等のおしゃれでユニークなイベントが行われています。これらはNPO等の市民団体が主体となった取り組みですが、2009年からは西川エリアの飲食店によるイベント「ハレノミーノ」等も定期開催されるようになりました。
NPO法人タブララサ主催のキャンドルナイト
有機生活マーケット「いち」の様子
この仕掛け人の一人が、池田促成青果三代目オーナーの池田一晃さんです。
西川エリアでは飲食店の出店が増えており、池田促成青果にとっては取引先が増えるチャンスとなります。そこで、「各飲食店の繁盛が自社の成長につながる」という思いから、個々の飲食店と連携してイベントを開催するようになりましたが、どれも一時期の盛り上がりで終わってしまい、飲食店の認知度や利益の向上につながらないものばかり。池田さんは悩み模索した結果、「個々の取り組みではなく、飲食店が一体となって西川エリアを盛り上げることが、継続的に人を呼び込み、まちの活性化や魅力づくりになるのではないか」と考えたそうです。
「西川エリアの飲食店が連携して実施できる取り組みを考えた時、西川エリアには商店街振興組合のような『飲食店同士の横のつながりがない』ことに気づきました。そこで、まずは店同士をつなげるきっかけとして『ハレノミーノ』を開催することにしたんです。早速、同じような思いを持つ飲食店と協力して、いろんな店への声がけを始めました。そこで生かされたのが、池田促成青果が築いてきた飲食店とのネットワークです。見ず知らずの団体が声をかけたら、怪しまれるだけだったかもしれません。しかし、日頃から野菜の配達等で顔の見える関係にあった私たちの呼びかけに、『とりあえず、やってみようか!』と賛同してくれる店が少しずつ増え、最終的には46の飲食店が協力してくれることになりました。
開催に向けては、飲食店を交えた打ち合わせを何度も行い、イベントのシステムや広報戦略、当日の交通誘導等について話し合いました。初めての取り組みで山のように課題はあったのですが、いろんな苦労を乗り越えて2013年に1回目のハレノミーノを開催することができました。
多くの人がハレノミーノのチケットを持って、まちなかを笑顔で歩く姿を見たとき、それまでの苦労が一気に吹っ飛んで涙が出てきましたねー。自分の会社や飲食店の利益のためだけでなく、まちに暮らす市民としても『地域活性化』の意義とその必要性を強く感じました。」
ハレノミーノの様子
ハレノミーノでは、参加者がチケット(5枚つづり)を購入し飲食店に持っていけば、チケット1枚で飲み物1杯と1皿の料理を味わうことができます。第1回目は46の飲食店と約2,000名の市民が参加。1セットのチケットで1人最大5つの店舗を巡ることができ、新しい店を知ったり、前から気になっていた店に行ったりできることからたちまち話題となりました。
ハレノミーノの受付ブース
参加者には専用のマップを配布
ハレノミーノは2015年秋で8回目を迎え、参加店舗の増加によりエリアも広がっています。
ただ、ハレノミーノのような大きなイベントを頻繁に開催すると、飲食店の負担が大きくなり継続できないのではないか。そんな懸念から、池田さんはまちなかで定期的に開催できる活動を模索。そこで出会ったのが全国で始まっていた「満月BAR」の取り組みでした。
満月の日、もしくはその日に近い土曜日に開催される「満月BAR」。岡山では緑あふれる西川緑道公園で、おいしい料理やドリンク、ライブ等を楽しめる場として、2013年から月1回のペースで開催してきました。まちなかに気軽に立ち寄れるおしゃれな空間が生まれたことで人気が高まり、毎回500名以上の市民が参加しています。料理やドリンクの提供には、ハレノミーノにも参加している8つの飲食店が協力しています。
多くの人でにぎわう満月BARの様子
全国各地では、飲食店主等で開催している満月BARもあるそうですが、「岡山では、若者主体で開催することで地域の未来を担う人材を育てたい」という思いから、池田さんは10代から20代の若者を集めて実行委員会を発足。そして西川エリアにある飲食店、行政と連携しながら満月BARを開催しています。満月BARのおしゃれな雰囲気に惹かれ、実行委員会に参加する若者も増加。まちづくりの活動が若者の日常生活に新たな刺激を生み、いろんな団体の活動に参加する人も増えていきました。
池田さんは若者の主体的な活動を促しながらも、若者と飲食店をつなぐパイプ役となったり、食材の扱い方や会計等を指導したりと「縁の下の力持ち」として満月BARを支えてきました。
コックの格好で若者と料理を提供することも
若者に会計の指導をしている様子
若者をサポートする中で、池田さんは満月BARを始めたきっかけやまちづくりに対する熱い思いを、あえて語らないようにしているそうです。その裏には、「まちと関わる純粋な楽しさから、少しずつ若者がまちなかに飛び出し、自由かつ主体的に活動してほしい」という思いがあるのだとか。
しかし、ハレノミーノや満月BARにスタッフとして参加していた学生に話を聞いてみると、池田さんの情熱がしっかりと伝わっていることがわかりました。
ノートルダム清心女子大学 大森美彩さん
「以前は、休日に出かけるとしたら、特定のお店に行って買い物したり友達とご飯を食べたりしていました。
西川エリアのまちづくりに関わるようになってからは、ご飯を食べた後に西川緑道公園で開催されるイベントに寄ってみたり、周辺のお店の人に会いに行ってみたりと、まちの楽しみ方や関わり方がぐっと広がったと思います。自分たちの活動でも、新しい楽しみがどんどん生まれて、まちのにぎわいにつながると嬉しいです。」
池田促成青果は、ハレノミーノを通じて西川エリアにある飲食店同士のつながりをつくり、満月BARを通じて若者がまちづくりに参画するきっかけをつくってきました。同時に、「おいしい飲食店が集まっている」「満月BAR等のおしゃれなイベントが定期的に行われている」といった、西川エリアの「魅力」を育んできたのです。
西川を「岡山市中心部の背骨」として発展させることで、自然と西川につながる路地にも店が増え、人のにぎわいが生まれていく。池田さんは、そんなまちの未来図を実現させるために西川飲食店組合を設立し、飲食店、市民、行政だけでなく様々な分野のプロと協働しながら新たなまちづくりに取り組んでいくとのことです。八百屋さんの「ラボ」は素敵に楽しい挑戦を続けていくようです。
次の休日に何をしようかな。そんな時は、西川エリアに繰り出してみませんか?まちの新たな楽しみ方や、まちをつくるユニークな人々と出会えるかもしれません。
わくわくボランティアでは、西川緑道公園でキャンドルナイト等を開催しているNPO法人タブララサの活動について紹介しています!
次はどんな企業におじゃましようかな?楽しみだなぁ!
なお「いきいき社会貢献」では、「取材にきてほしい!!」という企業を募集中です。希望される方はお問い合わせフォームより、企業名、社会貢献活動の内容を添えてご連絡ください!