「つながる!協働リレーコラム」では、岡山で協働を進めている皆さんに、自分たちの活動や経験を通じて、「協働」に関して感じていること・考えていることについてコラムでご紹介いただきます。
なお、内容は執筆当時のものです。
山陽新聞社提供
1960年、岡山市生まれ。
慶応大学法学部政治学科卒。1983年、山陽新聞社に入社し、社会部、津山支社、東京支社などの記者として取材活動。「岡山の遅れ取り戻さねば」―。こんな見出しで山陽新聞の記事を書いたのが、2014年7月のことでした。行政と市民団体などが連携して公共サービスの提供や地域課題の解決・改善を図る「協働」についての調査で、岡山県内の取り組みが遅れていることが明らかになったのを受けた記事です。
調査は民間団体が行い、各自治体の協働の条例や指針の作成、推進態勢、実際の活用・点検状況などを調査指標に沿って6点満点で採点し、全国レベルの調査と比較しました。その結果、岡山県は3.00で都道府県平均(3.38)を下回り、岡山市は2.53と政令指定都市平均(3.16)から大きく遅れていました。倉敷市は2.83で中核市平均(2.91)より少し低めでした。
「ESD市民活動推進センター」<山陽新聞社提供>
といっても、岡山市では改善へ向けた取り組みがスタートしていました。
その前の月に、協働の拠点となる「ESD市民活動推進センター(現在のESD・市民協働推進センター)」が市役所内に開設されたのです。市と市民団体のマッチングや相談窓口となって市役所各部署と市内で活動するNPO、市民らをつなぐ役割を果たす機関です。市役所の担当職員と、市民活動支援の民間団体のスタッフが一緒に対応する。市役所内に民間スタッフが常駐しているのは画期的といえるでしょう。
市は14年度から、高齢の障害者支援、不登校の小中学生の相談・居場所づくりといった社会課題に対応した協働モデル事業も始めました。15年度に「市民協働局」という名称をつけた市の部門を発足させたことも、少し前では考えられなかったことでしょう。
そして16年度、改正された岡山市協働のまちづくり条例が施行され、協働を進めるための態勢はかなり整いました。条例で、民と官を「対等」としたのは注目されます。とかく市民活動を行政の〝下請け〟としてきた従来型からの転換を打ち出した形になりました。
その上で協働を実際に進めるための仕組みをつくりました。市の関係各課に「協働推進員」となる職員を配置し、各部署で活動団体との連携を図るよう促したり、それに資する人材を育成する研修などを行ったりするということです。さらに「協働のまちづくり賞」なども設けられました。
次の段階では、こうして整ってきた仕組みを有効に活用できるかが問われます。もちろん、以前に比べて協働が進んだのは確かでしょう。モデル事業から一般施策に移行できるケースも出てきました。表彰制度を通じて、地道な市民活動が掘り起こされてきたりもしました。それでもモデル事業を提案してくる市の部局は、ある程度一部に限られているような気がします。今後、もっと多様な部局が協働を進めたり、企業を巻き込んだ新たな協働を打ち出したりしてもらいたいと思います。
「災害ネットワークおかやま」の会議<山陽新聞社提供>
協働の必要性を痛感させられる出来事がありました。昨年7月の西日本豪雨の後の対応です。甚大な被害を受けた被災者のニーズの把握や物心両面の支援など、多様な面で長期にわたり細やかな配慮が求められます。行政の画一的な措置だけでは、迅速で的確な対応はとてもできません。岡山では被災直後からさまざまなNPOが被災者支援に乗りだし、ボランティアやNPOなど約150団体に行政もからんで「災害支援ネットワークおかやま」ができました。被災者の困りごとや不足物資などの情報を共有化、互いにできる貢献をするシステムができました。そのため、今年の新見市での局地的な豪雨被害でも迅速な支援につながりました。
被災者支援に限らず福祉やまちづくりなど広い分野で、専門性や強い問題意識を持って実践するNPOなどがかかわることで、行政のみで行うよりも、住民ニーズに合った対応や行政効率の向上が期待されます。企画段階から行政とNPOなどが一緒に取り組むことで、役所の仕事内容を市民目線に変えるといったことも求められます。NPOの側も経験を重ねて成長する。そんな姿を思い描きます。
それは市民社会の熟度を上げ、住民自治を高めることでもあります。協働分野の後進性を脱してきた岡山市が、さらに高いステージに向かうことを期待します。
ありがとうございました。次は誰が登場するかな??