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わくわくボランティア その25|人の手で、豊かな自然を後世へ!【龍泉寺の自然を守る会】

[2024年8月5日]

ID:62773

「わくわくボランティア」では、のっぷとティアがボランティア活動の現場におじゃまし、ボランティア活動の楽しさや大切さ・ボランティアに取り組む人たちの思い・各団体の思いについて取材しています。

25回目は、「龍泉寺の自然を守る会」の活動について、「龍泉寺の自然を守る会」の村上さんにお話をうかがいました。なお、内容は取材当時のものです。

「龍泉寺の自然を守る会」とは?

県立自然公園内に位置する、龍泉寺(北区足守)。
敷地内に点在する湿地には、トキソウやサギソウ、ハッチョウトンボなど希少な動植物が自生・生育しています
この豊かな自然を守り、後世に残そうと活動しているのがボランティアグループ「龍泉寺の自然を守る会」(以下「守る会」)です。

「守る会」の設立は、2009年1月。前年の5月、のちに会の発起人となる二人が、灌木や枯草の間でひっそりと咲くトキソウの花を発見したことがきっかけでした。
「湿地を甦らせるため、灌木や雑草を刈り取りたい」とお寺に相談し、快諾を得られたことから友人らに声をかけ、活動が始まることになりました。
このときの会員は、写真を撮ることが好きな人や山野草の愛好家ら12人でした。
さっそく枯草や灌木を刈り取り、湿地の外に搬出したところ、この年の5月にはトキソウが、8月にはサギソウが一斉に開花しました。
人の手を加えて生育環境を整えれば、湿地が復元することを体感した会員の感激は、ひとしおだったといいます。

ハッチョウトンボの写真

ハッチョウトンボ

トキソウの写真

トキソウ

サギソウの写真

サギソウ

※写真提供:村上昇さん

地元の新聞にも掲載され、大勢の人が訪れるようになったことから、間近で観察できるよう手づくりの木道橋などを設置。植物の観察会を開いたり、紅葉シーズンにはスタンプラリーのイベントを実施するなど、一般の人に自然や環境保全に興味を持ってもらうための活動も始めました。
「守る会」の設立から16年、現在の会員数は47人(※賛助会員含む)で、三代目の会長を務めるのは、村上昇さんです。

村上昇会長のお話

村上:
「活動を始めた当初は、可憐な花に魅了されサギソウやトキソウを中心に保護してきましたが、活動するうちに龍泉寺の湿地とその周辺には絶滅危惧種や準絶滅危惧種も多く生育・生息していることが分かりました。また、健全な湿地のバロメーターといわれるモウセンゴケやミミカキグサといった食虫植物も自生しています。」

村上昇会長の写真

龍泉寺の自然を守る会
村上昇会長

モウセンゴケの写真

健全な湿地のバロメーター
モウセンゴケ

守る会が設置した木道橋
現在も継続的に整備している

※写真提供:村上昇さん

これらの植物にとって重要なのが、湿地の“貧栄養状態”を維持することです。
枯草を放っておくと、やがて腐敗し養分となって湿地が肥沃化するため、「守る会」は冬場に湿地の下草刈りをして、搬出しています。
湿地が肥沃化すると背丈の高い植物が生育領域を拡大して土地が乾燥し、湿地外に生育するススキなどが侵食してくるからです。

つまり人の手で草を刈って搬出することにより、湿地の環境が保たれるのです。

草を刈る前の湿地の写真

草を刈る前の湿地

会員による草刈りの写真

会員による草刈り

搬出の様子の写真

搬出の様子

※写真提供:村上昇さん

村上:
「繁殖力の強いススキや、セイタカアワダチソウ、メリケンムグラといった外来植物を見つけたら、根から抜いて除去しています。また、土のうを積むなどして湿地に流す水の量を調整することで、湿地の植生をコントロールできることが分かりました。湿地以外でも、お寺の人や、龍泉寺の池の水を灌漑用水として使っている地元の人が、土手の草刈りをしてくれています。
おかげで野生では珍しくなっているオミナエシやキキョウが咲き、その蜜を求めて青色の体色が美しいナミルリモンハナバチやオオセイボウが飛来します。ほかにもハッチョウトンボの生育環境を改善するために、湿地の水路をせき止めて水たまりを作りました。こうしてできた水たまりがニホンアカガエルなどの産卵場所にもなっています。
人の手が適度に入ることで生きものたちにとって豊かな環境になり、湿地とその周辺では絶滅危惧種・準絶滅危惧種29種を含む多様な動植物が自生・生育しています。」

オオセイボウの写真

オオセイボウ

ナミルリモンハナバチの写真

ナミルリモンハナバチ

※写真提供:村上昇さん

豊かな自然を後世へ

豊かな自然を守り、後世に残すこと。
これは会の設立当初から変わることなく受け継がれている理念です。しかし会の設立から15年以上が経ち、体力的な面から活動を辞退する人も増えてきました。

村上:
「定番行事となっているトキソウ(5月)、ハッチョウトンボ(6月)、サギソウ(8月)の観察会などは一般の人に自然や環境保全に興味を持ってもらうきっかけになればという思いで開催しています。
実際、観察会をきっかけに入会してくれた人もいますが、会員47人のうち、定例会や保全活動に出てきてくれるのは15人程度です。とくに冬場に行う枯草の刈り取り・搬出は重要な活動ですが、加齢や体力の問題で参加者は年々少なくなっています。
会員の平均年齢は70歳。豊かな自然を後世に伝えていくためには、後継者が必要です。」

観察会ではガイドのほかに受付や写真撮影、枯草撤去では草の搬出のほかに記録や軽トラの運転など様々な役割があり、「守る会」では“できる人が、できることを、できるだけ”という精神で活動しています。

観察会の様子1の写真

観察会(2024年5月)の様子1

観察会の様子2の写真

観察会(2024年5月)の様子2

観察会の様子3の写真

観察会(2024年5月)の様子3

※写真提供:村上昇さん

村上:
「私が「守る会」に加わったのは、ハッチョウトンボの写真を撮りに龍泉寺を訪れたのがきっかけでした。活動を続けるなかで知ったことですが、1円玉ほどの大きさしかないハッチョウトンボは長距離移動ができないため、生まれた場所で生涯を過ごします。
また、日当たりのよい湿地を好むので、背丈の高い植物が生育領域を拡大して湿地が乾燥すれば死に絶えてしまいます。
ハッチョウトンボに限ったことではありませんが、半世紀ほど前はあちこちで見かけていたのに、今や絶滅危惧種や準絶滅危惧種となった動植物が多くあります。
しかし、人の手で生き物たちが生育しやすい環境を守っていくことができます。

毎回の参加は難しくても、“できる人が、できることを、できるだけ”。
単発でのボランティア参加でも構いません。この貴重な自然を後世へと伝えていくため、一人でも多くの方が活動に加わってくれることを期待しています。」

のっぷのイラスト

人の手が入ることで守られる自然環境もあるんだね!
まずは興味を持つことが第一歩♪
のっぷもいろんな季節に行ってみよぉ☆

お問い合わせ

龍泉寺の自然を守る会
メールアドレス:sizen.ryusenji@gmail.com

関連リンク

龍泉寺の自然を守る会
ホームページ:https://ryusenji-ncc.org/別ウィンドウで開く