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先輩起業家から学ぶ!フィールドワークセミナー開催レポート

[2026年3月31日]

ID:80905

2025年10月18日、ローカルベンチャーカレッジOKAYAMAの第1回として、フィールドワークセミナーが開催されました。岡山県西粟倉村で地域資源を活かした多角的な事業を展開する株式会社エーゼログループを訪問し、代表の牧氏より、地域で事業を創るための考え方や方法について、お話しいただきました。また、自然資本事業本部の西岡氏に各事業現場をアテンドいただき、事業の立ち上げや取り組みについて伺いました。

ローカルベンチャーカレッジOKAYAMAとは...

「岡山で、地域を元気にする事業をつくりたい」

そんな想いを持つ方を対象に、3日間の実践型プログラム「ローカルベンチャーカレッジOKAYAMA」を開催。2025年10月から12月にかけて、14名の参加者が地域課題をビジネスの力で解決するアイデア創出に挑戦します。

株式会社エーゼログループについて

2009年に木材加工事業から始め、2023年に合併し「株式会社エーゼログループ」に。事業領域として、「自然資本領域」、「社会関係資本領域」、「経済資本領域」の3つを設定。これらの事業領域間の有機的な関わり、循環を通じて「未来の里山」の実現を目指す。

目次

視察先のご紹介 西粟倉村・株式会社エーゼログループ

2004年、西粟倉村は政府主導で行われた “平成の大合併” で周辺市町村が統合を進めるなか、近隣と合併せず自立して生き残る道を選びました。

 村が自立して生き残るためには地域資源を生かして循環させることが重要である。

そう考えた同村は、村の主要産業である林業を軸とした理念『百年の森林(もり)構想』を掲げます。

この構想には行政はもちろん、民間企業が二人三脚で取り組みました。その中心人物が、株式会社エーゼログループ代表の牧大介さんです。

株式会社エーゼログループ代表の牧大介氏の写真

牧さんは村の木材を加工し付加価値を高めて提供していく「林業の6次化(生産・加工・販売までを一貫して行う取り組み)」に挑戦するため、2009年に『株式会社西粟倉・森の学校』(現:木材事業「西粟倉森の学校」)を創業しました。
地域おこし協力隊制度を活用したり、メディアで村をPRしたりすることによって、西粟倉村でチャレンジしてみたいという人を呼び込むことにも成功。「起業家(ローカルベンチャー)が集まる村」として認知され、これまでに西粟倉に移住をした人は200人を超えます。
現在は、「未来の里山」の実現に資する事業を自然資本領域、社会資本領域、経済資本領域において実施されています。

(株式会社エーゼログループHP:https://a-zero.group/別ウィンドウで開く

代表 牧氏によるプレゼンテーション“地域で事業を創るための考え方や方法について”

西粟倉村の地域課題解決につながる事業の立ち上げ背景や想い、地域課題解決のために重要なことを学びました。

実際の講演でマイクをもって話す牧氏の様子
参加者がマイクをもって話している様子

講演のポイント

1. 事業を作る上での5つの考え方

(1) 怒られ続ける力

「企業は自分の価値観や考えを貫いていかないと、個性のある事業になっていかない」

地域の皆さんと仲良くしたいという気持ちで自分の軸を失うのではなく、時には嫌われることを恐れずに、自分の信念を貫くことの重要性を強調されました。地域との関係性は、結果として後からついてくるものだそうです。

(2) 「何が地域資源かではなく、何を地域資源とするか」決めるのは自分

「この地域じゃないとできない事業というのは意外とない」

地域の特徴を探すことに時間をかけすぎず、まず自分がやりたいこと、活かせると思うものに着目することが大切だと説明されました。一般的には課題と捉えられる高齢化も見方を変えると、地域の歴史や文化を深く知るおじいちゃんおばあちゃんは地域の重要な資源である等、発想の転換で地域資源を捉える方法も学びました。

(3) とにかくやってみる、打席に立つ

情報収集や計画も大事ですが、「実際にやってみて痛い目にあうことで集まってくる情報の方が多い」と実体験を語られました。事業を立ち上げられる人の共通点は、結局「やり続けること」だと言います。

(4) 行き当たりばっちり

ただし、「どんな未来を実現したいのか」というビジョンを持つことが重要であるという点を踏まえた上で、厳密な計画を立てすぎないことを推奨しています。(前述の「とにかくやってみる」にも繋がる視点です)今やっていることを、そのビジョンに紐付けながら意味付けしていく積み重ねが、結果的にビジョンの実現へと近づいていくそうです。

(補足)事業計画の作成や数字の計算に慣れていない方は、計画作成のトレーニング等の基礎スキルは必要になります

(5) 周りを巻き込む、想いの共有

具体的な答えは一人では出てきませんし、ビジョンの実現も一人で出来ることは限られています。周りを巻き込む過程では「自分自身が誰よりも楽しくチャレンジできていることが大事」と強調されました。楽しいと苦しいはなかなか分離できず、真剣に楽しくやることは大変だけれども、それでもやりたいという気持ちで生きている人たちが、結果的にワクワク型合意形成で仲間を増やしていくと語られました。

2. 組織づくりの哲学“批判的であることがイノベーションを生む”

「悪の組織」を目指す

地域の悪循環の構造にうまく収まることが正義であるならば、私たちは常に仮面ライダーで言う悪の組織「ショッカー」でなければいけない、と牧さんは語ります。倒されても倒されても闘い続けるショッカーのような集団でなければ、悪循環の構造と闘いながら、守るべきものを守っていくことはできない。地域の悪循環から抜け出すためには、「今のままでいい」という現状維持の姿勢に対して、敢えて波風を立てる覚悟が必要です。大方の人に合意してもらって忖度するのではなく、「一緒にやろうよ」「楽しそうだよね」という仲間を増やしていくアプローチが、結果的に地域を変える力になると説明されました

長期的な信頼関係

短期的に好かれることを目指すのではなく、長期的に信頼を積み重ねることを重視しています。表面的に好かれる、攻撃されない、合意されるということではなく、自分の軸をしっかり持って、長い目で見た信頼関係を築いていくことが大切だと語られました。

3. 地域活性化の本質

「地域活性化より、まずは自分活性化」

元気に生き生きとしている人がいる、自分自身を活性化できている人たちがたくさんいる地域が、活性化していく、という考えの下、地域課題の解決よりも、まず自分自身がやりたいことで元気になっている状態が第一段階として重要だと語られました。

昼食@BASE101%-NISHIAWAKURA-

昼食は地域の可能性を発掘することをテーマにした複合施設「BASE101%-NlSHlAWAKURA-別ウィンドウで開く」にていただきました。BASE 101%では、地元食材や顔の見える生産者さんの食材を中心としたレストラン・カフェ、自家製完熟いちごを堪能できるいちご狩り・直売所、材木屋ならではの木材ファクトリーショップ、村内や近隣地域のいいものを集めたおみやげ屋など、様々な楽しみ方で西粟倉村を堪能できます。

1番のおすすめメニューは、ジビ工事業で仕入れた鹿肉を使用した鹿肉ロースト丼。参加者の皆様からも1番人気でした!

みんなで昼食を食べている風景

また、昼食時にはリムルベーン(養蜂事業)※3の立ち上げメンバーである講神航(こうじんわたる)氏にご参加いただき、養蜂事業に取り組み始めた背景や地域課題解決での面白さやリアル等をお話しいただきました。

説明している講神航氏の写真

リムルベーン(https://reml-behn.com/別ウィンドウで開く

「森から生まれ、森を生み出す蜂蜜づくり」をコンセプトとし、「森を生み出す養蜂家」を目指しています。「百年の森林」の自然が与えてくれる蜂蜜を販売するだけでなく、商品のストーリーを通して、蜜蜂たちと森林の関係、そこに暮らす人たちの思い、そして、西粟倉村の情景物語を深く伝えているのが特徴的です。

現場視察ツアー 自然資本事業本部 西岡氏

午後は現場視察ツアーとして、未来の里山的生態系デザイン・文化生態系のデザインを実現する事業の現場を見学しました。

(1)木材事業「西粟倉森の学校」

「目的に合わせた手段」をとる、そしてそれを応援する人を募る重要性を教えていただきました。周りに助けを求める時には「やりたい、やるべきこと、なくてもやるんだ」のエネルギーが大事なのはもちろんですが、「何がなんでも自分たちでやる」ではなくてもいい。コストや手段の観点から、周りにお願いしていくことも必要だと語られました。

木材工場の写真
材木工場の写真

学生でもできるものづくり(高卒採用)という目的に合わせ、職人技がなくても加工ができる大型設備の開発を目指しました。開発には1億円という巨額な資金が必要でしたが、個人の方に100万円を支援していただくなど、多くの方に応援いただきながら資金調達に成功しています。

また、森の歩留まりを削減するためには、原木市場へ出さずに地域内で付加価値を高めて売ることが必要であり、既存の流通を変える、という大きな挑戦に挑みました。

ユカハリタイルの写真
ユカハリタイルを見学している参加者の様子

ユカハリタイル*は賃貸住宅に住む人のための無垢床で、生活空間を自分で創り出す喜びを提供する商品です。

 *ユカハリタイル…間伐材を使用し、置くだけでお部屋を本物の木の床に出来る商品。

 (商品ページ:https://morinogakko.jp/category/item/yukaharu/yukahari-tile/別ウィンドウで開く

工場内の写真

加工の最初の段階で、2メートルにカットすることで、女性でも加工ができるようになり、地域のお母さんたちの新たな働き場所となりました。

(2)観光いちご農園

森の経済循環から育てる甘酸っぱい完熟いちごを育てています。いちごの培土には杉・桧の樹皮やおが粉を活用し、暖房機の炭酸ガスを再利用するなど循環型農業の実践を目指しています。

ハウスの中でイチゴを栽培している写真

(3)ビオ田んぼクラブ

もともと湿地だった場所を田んぼにしているため、湿地に生息する生き物がたくさんいます。田んぼを自然ごと増やすことで生き物も増やし、「その土地の自然と文化を守りながら、美味しい、楽しい、嬉しいを増やしていく」取り組みが実践されています。

ビオ田んぼクラブの写真
田んぼの写真

(4)ジビエ事業

自然豊かな中国山地の谷あいにある西粟倉村近郊の野山を駆け巡った鹿肉・猪肉をお届けしています。視察当日の午前中も、解体が行われていたそうです。お昼にはBASE101%にて、鹿肉のロースト丼もいただきました!

(5)森のうなぎ(旧影石小学校 体育館)

養殖に取り組んでいた経験も活かし、人とうなぎと自然の持続可能な関係をつくりたいとうなぎの加工販売に取り組んでいました。通常の養殖では成長が遅い「ヒネ」「スソ」と呼ばれるウナギを仕入れて、環境負荷の少ない養殖を目指していました。しかし、養殖には大きなコストや資源を要し、環境負荷も大きいことから、仮に完全養殖が実現しても自然保全には直結しないという葛藤がありました。また、スジエビがたくさんいる廃校のプールにウナギの稚魚を放したところ手をかけなくても美味しく成長したという経験から、養鰻事業は2024年12月より休止しています。現在は“うなぎ食べ継ぐプロジェクト”等、野生のウナギが生息できるような自然環境を守り、創出していけるのかという「自然環境の保全」や「天然資源の持続可能な資源管理」に真っ向から挑戦されています。

森のうなぎの室内を見学している参加者の様子

「エネルギーが上がる選択を繰り返す」

自然資本事業本部 西岡氏が参加者へ説明している様子

何事でも、新たな一歩を踏み出す時は、楽しみもあり、同時に不安もあるものです。しかし、自分自身のエネルギーが上がる選択肢を取り続けていけば、自分の理想に向かって全力を尽くしていける。視察の最後に、これから新たな挑戦に取り組む参加者の皆様へ向けて、西岡さんより力強いお言葉をいただきました。

振り返りワークショップ

1日の最後には、フィールドワークセミナーを経て、自分の事業づくりに活かせそうだと思ったことを参加者同士で話し合いました。短い時間ではありましたが、参加者の皆様からは「チームで話すことにより、色んな角度からの意見が聞けて参考になった」等のお声をいただきました。

メモを取っている参加者の写真
楽しく話している参加者の写真

参加者の声

参加者の皆様に、フィールドワークセミナーを通じて感じたこと・考えたことを伺いました。

  •  未利用資源は、現状では採算が厳しいことが多いので、既存の仕組みを壊したり、付加価値をつけていく仕組み、アイデアが必要だと再認識しました。上手くいってるイメージのエーゼロさんも、試行錯誤を繰り返して今があるし、社会のニーズや偶然によって上手くいくこともある。まずは動いて試行錯誤することが重要だと感じた。
  •  重要なのは、軸を持ってブレないこと、怒られる嫌われるのは避けて通れないこと。手段を目的化しないこと。ワクワクする方へ進むこと。自分の事業や想いを話してどんどん応援してくれる人、仲間を見つけること。
  • 自分の軸をしっかりと持つという視点の必要性を強く感じました。「地域のため」「こうあるべき、こうあったらいいのに」という抽象度が高く、軸が自分ではなかったように感じました。批判されること、理解されないことはあるだろうと認識はしていましたが、改めて嫌われる覚悟みたいな部分は強くなりました。

まとめ

地域で事業を立ち上げることの本質は、計画や戦略よりも、まず「自分がやりたいことに正直であること」「自分の軸を持つこと」「打席に立ち続けること」だと分かりました。

そして、地域活性化とは、地域そのものを変えることではなく、そこで生き生きと生きる人を増やすこと。人間や生き物が持つ本来の力を信じ、それを発揮できる環境を作っていくこと。「悪の組織」という刺激的な言葉の裏には、現状に妥協せず、本当に大切なものを守るために戦う覚悟と、長期的な信頼関係を築いていく誠実さがありました。

参加者全員での記念撮影

岡山市の地域課題を解決するローカルベンチャーを志す参加者の皆さんにとって、実践に基づいた貴重な学びの機会となりました。アイデア創出セミナーでは、さらに実践的なワークショップを通じて、岡山市の地域課題解決に向けて各自の事業アイデアを深めていきます。次回の開催レポートもお楽しみに。