2016年1月21日(木曜日)に第9回ESDカフェを開催しました。テーマは「ちょうどいい豊かさってどんなもの?~小さなソーラーユニットから考えた持続可能な社会への小さな提案~」。ゲストスピーカーに、ESDコーディネーターとして活躍し、岡山大学環境理工学部の非常勤講師を務める原明子さんと、原さんが担当するESD実践演習の受講生をお招きして、電気という切り口から持続可能な社会について考えました。
持続可能な社会づくりをテーマに、毎年ちがった切り口から授業を展開している岡山大学の「ESD実践演習」。
今回は、「わがや電力」という本を教材に、実際に5万円で作成可能なソーラーユニットを組み立てて、持続可能な社会について「電気」という切り口から考えました。
授業の中で、まず学生さんたちに投げかけられたのは、「電気はどこから来ているでしょうか?」という問い。電気が電柱や電線をつたって家に送られるという仕組みは分かっていても、電気がどこでつくられて、どのように運ばれてくるのか?発電所や変電所などのことまでは意外に思い至らない。学生さんたちは、この問いを通じて「電気を使っているのによく知らない」ということに気づいたそうです。
ある授業では、現在、岡山の中学校に短期留学しているカンボジア人の中学生3名を招き、現地の暮らしについて話を聴きました。
彼女たちの暮らす村では、2015年に初めて電気が来たばかり。夜は真っ暗。村ではまだ、ごはんを薪で炊く暮らしをしているそうです。学生さんたちは話を聴いて、日本と比べるとカンボジアの生活はとても不便だけれど、逆に電気がなくても心の豊かさがあることに気づかされ、電気の使い方について改めて考える機会になったそうです。
学生さんたちからの発表を受けて、ESDカフェでは参加者全員で「ちょうどいい豊かさって何だろう?」という問いについて考えました。
などの意見が出ました。
ESD実践演習で、学生さんたちは、より多くの人に電気という切り口から持続可能な社会づくりについて考え、行動してもらうためにはどうしたらよいかについて考えました。
そこで、考えた企画が「脱出ゲーム〜電気を取り戻せ」。子どもから大人に伝える方がより効果的ではないかという理由から、企画の対象を子どもに設定しました。
脱出ゲームは、授業中に突然教室が暗くなり、子どもたちがいくつかのクイズに答えると闇から脱出できるというもの。数日前には、怪盗X(エックス)からの手紙を小学校に送り、子どもたちにワクワク・ドキドキ感を芽生えさせるなどの工夫も凝らしました。
子どもたちからは、「ワクワクした」、「楽しかった」、「明るいのも暗いのもどっちも好き」、「暗くしても意外と楽しかった」、「いつもは明るすぎるのではないか?」という感想があったそうで、いつも当たり前のようにある電気について、改めて考えてもらうきっかけになったようです。
原さんのESD実習演習を受講した学生さんたちは、授業の感想を次のように述べていました。
学生さんたちは様々な側面から考え、最適なものを選択していくこと。そして、自分一人だけではなく、より多くの人を巻き込みながら持続可能な社会をつくっていくことの大切さを学び、その一歩を踏み出してみようという意欲が生まれたようです。
ESDカフェ当日は、「わがや電力」の著者であるテンダーさんにもお越しいただきました。
テンダーさんは「わがや電力」を書いた理由を、「自分の暮らしが誰かを傷つけていないかを考え、問い直してほしい。そのきっかけをつくりたいと思ったからです」と語りました。
テンダーさんは、1972年に出版された「成長の限界」という本の中に記されていた、「地球を持続させるための条件」として、文明を環境汚染を止めるために活用すること、最貧困+10%の文明レベルに押さえるなどについて教えてくださいました。テンダーさんは、持続可能な社会を実現するためには、「成長のスピード」を緩めることが必要だといいます。
電力だけではなく、水や空気などの自然、自分を取り巻く人々や社会など、現在当たり前にあるものが、これからもずっと続くとは限りません。資源の枯渇や貧富の差の拡大、自然災害の増加など様々な問題を解決しながら、現代を生きる私たちが先代から受け継いだ地球を、未来の世代にも引き継ぐために、当たり前のものを見直し、様々な選択肢の中から選んで行動していくこと。その一人ひとりの心がけと気づき、行動することの大切さを伝えていく社会の担い手づくりとして、ESDがこれからもますます重要になっていくのではないでしょうか?
2014年度第4回ESDカフェでは、「ESD実践演習」を受講した学生3名が大量生産、大量消費、大量廃棄の問題を解決するために、身近なことから楽しく実践できることについて紹介しました。
岡山市市民協働局ESD推進課 小西・流尾
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