7月21日(木曜日)に、2016年度第4回ESDカフェ「微笑みの国タイで訪れた地域の学びの場」が開催されました。上道公民館主任の吉田郁美さんをゲストに迎え、岡山市の公民館やタイのコミュニティ学習センター(Community Learning Centre以下、CLCとする)との共通点や違い等についてお話いただきました。参加者は17名でした。
日本に公民館が誕生したのは戦後まもなくの1946年7月5日。文部省の社会教育課長(当時)寺中作雄が町村公民館の設置を奨励しました。『公民館の建設』によると、公民館設置の目的は以下のとおりです。
岡山市に公民館が誕生したのは1949年。現在は、各中学校区に設置されており、市内にある計37館ほぼ全館に社会教育主事の資格を持った職員が配置されています。公民館では、公民館が主催・共催する講座の他、持ち込み企画の講座、クラブ講座、部屋貸し等が行われています。併せて、5,000冊程度の蔵書がある図書コーナーもあり、全館の利用者は年間延べ130万人。男女比では女性が7割と多く、赤ちゃんから高齢者までが利用していますが、若者や勤労世代が少ないのが現状です。
公民館は、学びあいの場、集いの場、活躍の場であり、地域課題を掘り起こし、解決に向けての学びをつくる拠点。吉田さんは「学びで人が変わる公民館」と表現していました。
公民館が、「持続可能な開発のための教育(ESD)」の推進拠点として活用されている点も岡山市の特徴です。岡山地域は2005年に国連大学によりRCEに認定され、2014年には「ESD推進のための公民館—CLC国際会議」が開催され約700人が参加しました。成果文書として「岡山コミットメント2014」が採択され、住民の主体性や参画を促すことや、世界の人と協力して課題を解決していくことが宣言されました。公民館でもこの宣言を実現していくために取組を進めています。
吉田さんは岡山市の公民館とタイのCLCの交流をすすめるきっかけづくりとして、今年の5月8日から14日にかけてタイを訪問しました。プーケットにおけるCLCの国際会議に参加後、エクスカーションで公共図書館2カ所、CLC2カ所を訪れたそうです。また、チェンマイ県では、CLC3カ所、高齢者学校2カ所、学習リソースセンター2カ所を訪れました。
タイは、立憲君主制の国で、国王の存在は大変大きく、国民も国王やその親族を敬愛しています。図書館やCLCにも国王や王女を讃える掲示があるそうです。
CLCには、タイ政府教育局ノンフォーマル・インフォーマル局(Office of Non-formal and Informal Education(ONIE))が設置しているものとコミュニティが設置しているものがあります。CLCで実施している事業は主に次の4つです。
CLCでは現地のニーズに合わせた事業が実施されています。例えばプーケットのCLCでは、ホテルで働く人のために、タオルの折り方や飾り方を学ぶ技術を身につけるプログラムが行われています。リゾート地として有名なプーケットならではの学びです。職業技術訓練だけでなく、代替教育や、収入向上プログラムも日本の公民館とは異なる点で、CLCの基礎教育や経済活動を支える拠点としての役割が重視されていることがわかります。
タオルの折り方を学ぶ訓練
吉田さんは、タイのCLCから学んだことも多かったそうで、例えば、CLCで運営組織図が掲示されているのを見て、帰国後、早速公民館の運営委員会の組織図を掲示したとのことです。新しい試みに、地域の方も大変関心を持ってくださったとのことでした。
高齢化は、タイでも喫緊の課題の1つ。吉田さんはCLCの他にも、高齢者を対象とした「高齢者学校(Elderly School)」も訪問したそうです。学校といっても一般的な学校ではなく、高齢者が集まり、学び、活動する施設です。訪れた施設は、廃校になった小学校を利活用しているもので、学習者は52人で、収入向上や、コミュニティづくり、言葉・文化の継承、研修旅行などを行っています。
少数民族の伝統文化を継承する取組
開館日は水曜日午前9時から午後4時のみ。公民館は水曜日以外毎日午前9時から午後9時まで開館していますが、なぜ高齢者学校は開館時間が短いのでしょうか?地域の人は、他の日は農業などで働いているそうです。タイは年金が十分ではなく、働いて収入を確保する必要があります。収入向上プログラムを実施しているのもそのためで、高齢者学校で作ったかごや小物は、市場等で販売しています。
高齢者学校でのかご作り
吉田さんのお話を受けて、参加者同士で、以下の2つの質問について話し合いました。
岡山市ESD推進協議会(岡山市ESD推進課内)宮崎・小西
電話:086-803-1351
電子メールアドレス:esd@city.okayama.lg.jp