ポケットサポートは、慢性疾患や難病などいわゆる「重い病気」を抱える子どもたちの支援を行う団体です。重い病気とは、長い期間の入院や治療・療養を必要とする、小児がんや心臓疾患などのことで、インフルエンザや風邪のような一過性でない状態の病気を対象としています。
子どもが病気になると、その状態によっては入院が長くなったり、入退院を繰り返したりするようになります。すると、地元の学校へ通えない期間が長くなり、友だちと遊ぶなど様々な体験ができない空白(ポケット)が生まれます。私たちはそのような子どもたちの教育や体験、孤独から生まれる心の空白(ポケット)を支援(サポート)したいという思いから、この団体を立ち上げ活動を行っています。
具体的には、外来通院前後や自宅療養中に利用できる学習スペース「ポケットスペース」(岡山市奥田本町22-2)での「学習・復学支援」、夏祭り・遠足・クリスマスなど季節の行事を楽しんでもらうための「交流イベント」の企画・運営等を実施しています。また、講演会や学生ボランティア育成等の啓発活動も盛んです。
ポケットスペースでの学習・復学支援
代表の三好自身が5歳の頃から慢性疾患を抱えていたことや、スタッフや仲間たちにも幼少期から疾患を抱えている者も多く、当事者性を持って寄り添う支援を行っていることも特徴です。
現在、医療技術のめざましい進歩、また現行の医療制度により、子どもたちの入院が短期化や頻回化(何回も入院や退院を繰り返すこと)する傾向が見られます。そうした状況でも、日本の子どもは等しく教育を受けることができるはずなのですが、病気の子どもたちはその権利を十分に行使できていないというのが現状です。
入院中の子どもたちが通うことのできる、いわゆる「院内学級」という制度がありますが、「大きい病院・長期入院・転校が必要・主に義務教育」というように条件が限定されており、小児科のある病院の3割程度にしか設置されていません。そのため、病気の子どもたちには「学習の空白」「学習時間の制約」「(身体)運動の制限」「集団活動の不足」など、様々な「生活の制限」が課されることとなります。
これは、SDGsの4番目の目標「すべての人々に包摂的かつ公平で質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する」に対する課題のひとつともいえます。そのような諸課題を解決したいという思いから、我々は「病気を抱える子どもが将来に希望を持ち自分らしく暮らせる社会」というビジョンのもと、以下の3つのミッションを掲げています。
病気を抱えていても子どもらしい時間が過ごせるように、学習・復学・自立支援ができる環境を作る
病気による困難を抱えていても前向きに生きていけるよう、当事者や専門家と共に子どもや家族の「生きる力」を育む
病気の子どもに関わる人をつなぐコーディネートを行うと共に、社会への理解啓発により支援者を増やしていく
「病気だから…(できなくて)仕方ない」と諦めるのではなく、「だったら、こうしてみたら」という建設的な議論を重ねながら、この3つのミッションを通して、子どもたちの未来のため様々な連携のもと、新たな病弱児支援の岡山モデルを目指して活動していきたいと思います。
講演会による社会への啓発活動
5歳で慢性のネフローゼ症候群を発症。義務教育のほとんどを病院で過ごす。
岡山大学大学院保健学研究科で、病気の子どもの教育支援を研究。自身の経験から、病弱児の学習・復学・自立支援や、環境理解のための講演活動を行う。重い病気を抱える子供たちへの教育支援も「子どもの権利条約」に批准している日本では整備すべきもの。でも不十分なところを「ポケットサポート」の皆さんが支えてい活動はとても重要で貴重なものと思います。
SDGs4番目の目標と独自の活動目標を掲げて、めざす社会像実現に向かう姿は、小中高校や大学の関係者が多い私たちの団体の活動目標にも重なります。自然観察から得られる「感動する心の発見」が役に立てればと思います。紙面の上から万感のエールを送ります。