2015年9月に国連が採択した「SDGs(持続可能な開発目標)」。2030年に向けた17の目標の実現のために、岡山地域のビジョンと具体的なアクションについて共有し合う「SDGsフォーラムin岡山2020」が岡山大学で開かれました。
2回目となる今回のフォーラムには、SDGsを推進する産学官民の有識者をはじめ、地域活動や社会課題に取り組む人、SDGsの活動に関心のある人が多数参加。2030年の岡山のありたい姿や、その実現に向けた具体的なアクションをテーマに、講演会や分科会などさまざまなプログラムが催され、参加者はSDGs達成に向けた課題への理解を深めました。
開会にあたり、岡山大学の槇野博史学長と、岡山経済同友会の代表幹事の宮長雅人さんより挨拶がありました。槇野学長は「岡山県は電通の調査でSDGsの認知率が全国1位。このフォーラムを通じてさまざまな取り組みを共有し、SDGsを浸透させていくきっかけにしたい」と語りました。宮長代表幹事からは「岡山県を『SDGs推進県』とするのが目標。パートナーシップを大切に、地域で協働して課題解決に取り組んでいきましょう」と挨拶がありました。
広島大学 教育開発国際協力研究センター長 吉田和浩教授
ユネスコスクール数の推移や国際教育への試みを紹介
開会の挨拶に続き、広島大学の吉田和浩教授による特別講演が行われました。吉田教授は世界銀行や国際協力銀行(現国際協力機構)に長年勤務し、途上国の教育事情にも精通。SDGsの第4目標の起草に携わり、世界の教育政策と実践についての研究を行っています。
講演ではSDGs4の「教育」について、途上国の学習到達度に関するデータや世界の教育開発に関わる活動実績を紹介。学校に通えない子どもが多くいる現状を取り上げ、「すべての人々に包摂的かつ公正な質の高い教育を確保する」というSDGs4の目標に込められた想いや、社会全体に深く関わる教育の重要性について解説しました。
吉田教授は、「教育はすべてのSDGs達成の鍵である」と提言。「学習指導要領においても、持続可能な社会の形成と、その創り手となる人材の育成が掲げられています。未来に向けて教育がどういった役割を持つのか、誰しもが身近な課題として考えることが大切」と述べました。最後に、SDGsへの先進的な取り組みを行う岡山の教育にも大きく期待を寄せていると話しました。
学生2名によるSDGs活動の発表とともに、事前に開催された「SDGs×ユース・ネットワーク・ミーティング2020」の報告を行いました。SDGsを共通言語と捉えることで、活動層と未活動層との垣根をなくし、誰もが共有できる取り組み方を「My SDGsからOur SDGsへ」と題して提案。「一部の人の活動しかSGDsと認識されず裾野の広がらない現状がある」と、発表者の中澤さん。誰もが身近にできること、岡山だからできることをみんなで意識することが必要だと訴えました。
岡山一宮高校の楠木知華さんはユネスコ部の活動を発表
岡山大学の中澤拓也さんは途上国の給食を支援する活動を紹介
パネルディスカッションでは、午後から行う6つの分科会のテーマを発表。司会を務めた岡山NPOセンター代表理事の石原達也さんが、各テーマをSGDsの17の目標のターゲットにそれぞれ当てはめて解説しました。事前に内容を擦り合わせることで各テーマへの理解が深められ、分科会への効率的なアクションにつなげることができました。
分科会の登壇者6名が各テーマを発表
NPO法人岡山NPOセンター代表理事の石原達也さん
SDGsフォーラムに合わせて「第4回おかやま協働のまちづくり賞」の表彰式が開催されました。今回は「すべての人に健康と優しさを」をテーマに、子どもからお年寄りまで心豊かに生活できる地域社会を実現するための取り組みを募集しました。
大賞には岡山市中区で医療や健康、福祉を軸とした地域づくりを行う市民団体「なかまちーず」が選ばれたほか、8組の団体が入賞や奨励賞を受賞し、大森雅夫岡山市長から賞状と記念品が授与されました。
大賞・なかまちーず表彰の様子
受賞者全員で記念撮影
午後から開催された分科会では、6つのテーマに沿った事例発表や問題提起、参加者同士のディスカッションが行われました。
世界的に自然災害が頻発している昨今、防災・災害対策は地域の優先的課題となっています。中でも、避難所の環境は過去の災害経験からアップデートされていないのが現実です。分科会では避難所の現状や課題を認識し、「どんな人にも優しい避難所運営」という観点から、多様な人々に向けた被災者支援の在り方について考えました。
岡山で暮らす外国人が増加する一方で、地域によっては日本語を身近に学ぶ場が無いのが現状です。前半は総社市や岡山学芸館高校の取り組みを学びながら、外国人市民が孤立せずに暮らすためにはどうするべきか、教育や交流の可能性について考えました。後半はグループディスカッションを行い、参加者は地域の中での多文化共生について積極的に意見を出し合いました。
アユモドキの人口繁殖やキリンビール工場のCSV活動など、地域の豊かな自然と生きものの恵みを2030年に残すための自然保護活動を紹介。発表後はグループに分かれてキーワードを出しながら議論を行い、自然を守るための気づきと行動について意見を交わしました。海洋ごみを減らすための調査回収や啓発活動についても話題が上がりました。
気候変動や環境問題の観点から、私たちが未来のエネルギーをどう選択するのかをテーマに掲げ、再生エネルギーを取り巻く環境と動きについて話を聞きました。京都大学の塚本さんは、自然エネルギー100%化の実現を目指すさまざまな活動と、脱炭素化のためのプロジェクト「脱炭素大学」の活動実績を報告。後半は、ワークショップ形式により意見交換を行いました。
虐待や貧困、ひきこもりなど、子どもたちを取り巻く問題が増え、支援を行う側にも多くの課題が残されています。分科会では話題提供者から現場の声を聞き、子どもたちが夢を抱ける社会の実現に向けて多くの人たちが参加できる仕組みづくりが議題に。活動支援につながる基金や2万人の市民サポーターの実現など、具体的な対策案が挙がりました。
1年に600万トンという食品ロスが問題となっている日本。分科会では企業や個人店の食品ロス削減への取り組みを発表し、参加者はグループワークを通して、家庭や職場でできる取り組みを話し合いました。後半はマイナスな印象を持つ「食品ロス」に代わるネーミングを考案。「レスキューフード」「わらしべフード」など多彩な名前が登場し、盛り上がりました。
全体会では、各分科会の代表者からそれぞれの活動内容について報告が行われました。各分科会での議論を反映した目標と、そのための取り組みを順番に発表し、司会進行の石原達也さんが内容をその場でテキスト化していきます。石原さんはフォーラム全体を振り返りながら、「ここで終わらせず、ぜひ今後のアクションにつなげていってほしい」と話しました。
特別講演を行った広島大学の吉田教授からは、「それぞれのテーマに行動と学びの姿勢がつながり合い、SDGsの美しい循環ができていると感じます。みなさんの活動に拍手を送りたい」と熱いコメントをいただきました。
閉会式では、岡山ESD推進協議会会長の阿部宏史さんが参加者や関係者に謝辞を述べ、「今年はSDGs活動の新たな展開を迎える年。それに対して示唆を与え、今後の動きにつながる意義のある会になりました」と締めくくりました。
各分科会の代表者が分科会の内容を発表
ESD推進協議会会長 阿部宏史さん
1日を通して、地域が抱えるさまざまな課題と、その解決に向けた産学官民の取組を共有する有意義なフォーラムとなりました。これからも、岡山のSDGs活動にご注目ください。