地域猫とは、「所有者のいない猫(ノラ猫)のうち、特定の飼い主ではなく、その地域に住む人々が共同で飼育と管理をしている猫。地域でトイレの設置やエサの後片付けなどを行い、繁殖防止のための不妊・去勢手術をしている猫」のことです。
手術時の麻酔が効いているときに手術済みの印に耳先をV字にカットするのは「手術済みで子猫は増やせません」というマークです。
「そこまでするんなら好きな人が家で飼えばいいんじゃないの?」
そういう疑問をお持ちになった方もいるでしょう。数多くのボランティアの方々が猫の保護活動していますが、キャパシティをオーバーしていることが非常に多いです。あるボランティアさんは、20匹以上の猫を保護して飼っています。猫は自分のなわばりを重んじる生き物ですから、多くの他の猫と暮らすことは、時にストレスとなります。
また、地域の問題をボランティアだけでは解決できません。せめて増えないように手術をしておこう、というのが地域猫のシステムです。もちろん、特定の家に飼われるようになればいいのですが、成猫を人馴れさせて譲渡するのはとても大変です。
「じゃあ野良猫のままでもいいんじゃないの?」
手間をかけてまで所有者のいない猫を地域猫にするのには理由があります。
それは、増える猫の問題で、猫を大切にしたい方と猫が苦手な方とがトラブルになることを防止することです。不妊・去勢手術を受けることでその猫は子孫を残せない「一代限り」の猫となります。そして天寿をまっとうすれば、猫の数は増えません。
地域猫として管理されることは、猫が苦手という方にもメリットがあります。不妊・去勢手術によって猫達は発情期がなくなるので静かになりますし、オス猫の場合は闘争心が薄れるので喧嘩も減ります。
地域猫にトイレを覚えさせることで、糞尿等の問題が少なくなり、改善に向かいます。さらに、現在取り組んでいる地域では、子孫を残さず天寿を全うすることで、地域猫化した猫は減少しています。
地域猫化のシステムは猫を大切にしたい方と猫が苦手な方、双方にメリットがあります。
設置した猫トイレ
最初は猫の問題でギクシャクしていた地域でも、地域で考え、問題対策が行われることによって、状況がよくなっていくという安心感を得られます。
さらに、猫問題が少なくなる効果を実感すれば、猫の様子を聞いたり、活動の内容に興味を持ち聞いてみたりということになり、猫の生態を理解することによって地域の所有者のいない猫への理解と許容を得ることができます。
食事する猫たち
食事を終えてくつろぐ地域猫
所有者のいない猫といっても、野生動物ではなくヤマネコを家畜化した「イエネコ」で、人と一緒に暮らして初めて幸せになれる動物です。家庭で飼われているはずのペットが様々な要因で所有者のいない猫になっています。
所有者のいない猫の管理について、地域ぐるみで対策を考え、やってみることで、どんな問題につながっているか見えてくるきっかけになってほしいと思います。地域の猫の多さから、子猫の譲渡を始め、ノラ猫の不妊・去勢手術を始めましたが、限界を感じ、町内会に協力を求め、有志が集まって活動するようになりました。平成27年9月設立、2市10町内会と活動を行い、127匹に不妊・去勢手術を行い、残頭数65匹が地域で管理されています。(平成29年7月末現在)
猫を大切にしたい方、苦手な方、そして猫自身、みんなにとってメリットのあるしくみを、地域ぐるみで考えていかれているのが素晴らしいと思いました。活動の過程で、地域全体が変わっていくのが想像できました。
「つながる協働ひろば」でNPO法人岡山ニャンとかし隊さんの活動を取材しました。