「あかるく やさしく たくましく」をモットーに、724名(注)の児童が学ぶ倉敷市立第二福田小学校。同校の総合的な学習の時間では、自分で考えて実践する力を育むことを目的に、3年生以上は子どもたちが意見を出し合って実施内容を決めています。2019年度に6年生が取り組んでいるのは、インドの最貧州といわれるビハール州のNGOスクール「ニランジャナスクール」に通う児童を支援する活動。2016年にスタートし、「まだまだ応援が必要」という前年の6年生の思いを引き継ぐ形で、継続して取り組んでいるものです。
その「私たちの国際協力」活動が、この度ESD岡山アワード2019にて岡山地域賞 奨励賞を受賞しました。今回は、ニランジャナスクールに贈る物資を選ぶ授業の様子を中心に、同校の取り組みをご紹介します。
(注)2019年12月現在。
添付ファイル
活動のスタートにあたっては、まず貧困や経済格差が存在しているインドの現状と、児童労働や少年兵の徴用といった現地の子どもたちが抱える問題について知ることから始めます。これまで、現地で活動する外部講師を招いてお話を聞いたり、ニランジャナスクールとビデオ通話を行ったりすることで、インドの現実に目を向けてきました。世界に今も広がる格差や同年代の子どもたちの苦しみを知ってショックを受けた6年生は、問題を解決するために何かできることはないか考えはじめたといいます。
ビデオ通話による交流の様子
フリーマーケットで支援に向けた資金を集める
話し合いを通じて、貧困対策には将来を担う世代への教育が大切だと結論づけた子どもたち。フリーマーケットを通じて資金を集め、ニランジャナスクールの学習環境改善に向けて支援を行うことになりました。
この日は、フリーマーケットの収益金およそ35,000円を、どのように使うか話し合う授業が行われました。テーマは、「座標軸を使ってよりよい支援の方法を考えよう」。ニランジャナスクールの子どもたちにとって「役に立つか立たないか」の縦軸と、「気持ちが伝わるかそうでないか」の横軸で構成された座標軸をもとに、一番喜んでもらえる贈り物は何か、意見を出し合います。
座標軸を使い意見を可視化
グループごとに意見交換
大切にしているのは、同年代だからこそわかる、子どもの気持ちに寄り添った支援です。もし自分たちが受け取る側だったらどう感じるか、前回の授業で候補に挙がった品物ごとに、より深く考えていきます。
例えば、鉛筆は必要な物資ではありますが、子どもたちからは「もらってわくわくしない」という意見も。同じく日本では必需品の消しゴムについても、「ビデオで見るとニランジャナの子どもたちは消しゴムを使う習慣がなさそう。喜んでもらえないのでは」という声が上がりました。
その他にも、ホワイトボードの板書に使うカラーペンについて、「板書がわかりやすくなるから必要」という意見がある一方で、「板書する先生だけカラーペンを持っていて、自分たちは持っていなかったら悲しい気持ちになりそう」といった子ども目線ならではの意見もありました。
話し合いを通して、贈り物の新たなアイディアも生まれました。あるグループは、バッグの中に文房具と手紙を入れたセット、通称「二福バッグ」を提案。第二福田小学校の学校名と、バッグに2種類の「福」が入っていることを掛けたネーミングです。児童からは、「手紙が入っていたら心に残ると思う」「バッグを使うたびに、第二福田小学校のことを思い出してもらえそう」などと賛成の意見が上がっていました。
授業中は活発に手が上がる
時間いっぱい意見を出し合い、この日の授業は終了となりました。「みんなの話を聞いて、自分の考えにも変化があった」「意見を言いきれなかったので、もっと話し合いたい」と、子どもたちは次の授業が待ちきれない様子。
ニランジャナスクールへの贈り物は、ビデオ通話で現地の子どもたちの意見も聞きながら、今後協議を重ねて決定します。NPO法人を通じて、年度内には現地へ届けられる予定です。
授業を終えた児童は、次のように話してくれました。
「この活動で、ニランジャナスクールのみんなが、たくさんの友達と一緒に楽しく勉強できるようになればいいなと思います。」
「私たちの学校からの応援だけではなく、いろいろな方面からニランジャナスクールに応援が届いてほしいです。」
「教育によってインドが豊かになって、貧困のない国になってほしいです。」
「相手の目線で支援の内容を考えることが大切だと思いました。インドのすべての子どもたちが教育を受けられるようになればいいと思います。」
活動を通して、これまで知らなかった世界へと視野が広がっているようです。
未来を生きる子どもたちにとって、「世界中の子どもたちと共存していく」という視点はとても大切です。この授業をきっかけにESDの観点を育み、一人ひとりが広い視野をもって問題を考えることで、持続可能な社会へ貢献できるという実感を持ってほしいと思っています。
また、これから将来の夢を描いていく中で、このような活動をきっかけに、高い志を持った子どもたちが増えていくことを願います。そのためには、小学校から「国際協力」の学びが大切になってくるはずです。この倉敷市立第二福田小学校からも、未来の担い手が生まれてくれたらうれしいですね。
国際協力を学んだ子どもたちが、ESDの輪を広げるきっかけになるといいね!