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#94「農業を基盤とした持続可能なライフスタイルの構築~少年自然の家 ファミリー農園クラブ~」

[2021年7月28日]

ID:38693

ファミリー農園クラブの立ち上げ

岡山市立少年自然の家は、岡山市北区日応寺にある青少年教育施設です。平成23年度から、この施設の指定管理業務を行っているのが「観空産業株式会社」であり、岡山桃太郎空港の付近にある桃園・マスカット園・畑などで、農業に関する事業を展開しています。

昨今、特に市街地に居住する人たちは、大地の恵みを育む農業に対しての関心が薄れてきており、農業体験の機会も減少しているのが現状です。

SDGsアイコン2

そのような状況の中で、少しでも農業に興味を持つ家族に対して、一年間を通して農業体験(農作業)を継続して行ってもらうことにより、農業に対する関心を高め、農作物を育て収穫する喜びを味わってもらいたい、という願いから、岡山市立少年自然の家の主催事業として、平成24年度に「ファミリー農園クラブ」が発足しました。そして、併せて「岡山ESDプロジェクト」に参画する運びとなりました。ちなみに、SDGsに関連して、私たちが目標としているのは、2の「飢餓をゼロに」であり、ターゲットは、2.1と2.4です。

1年目は14家族50名の皆さんに参加していただきました。「観空産業株式会社」の畑を活動拠点として「野菜や桃、マスカット等の収穫体験」を中心に活動を組みました。年に5回足を運んでいただき、普段の生活の中ではなかなか体験できない「桃の袋かけ」「桃の収穫」「マスカットの収穫」「玉ネギの定植」などの活動に参加していただくとともに、畑で栽培している様々な野菜や果物を収穫して、お土産としてお持ち帰りいただきました。
また、昼食時には、少年自然の家の野外炊事場に設置してあるかまどを利用して「カレー」「牛丼」「焼きそば」「豚汁」などの野外炊事に取り組んでいただいたり、「餅つき」に挑戦していただいたりしました。桃とマスカットの収穫は、参加者にとって大変魅力的な活動であり、2年目以降のファミリー農園クラブの活動の目玉となっていきます。

桃の袋掛け
マスカットの収穫

この年は初年度ということもあり、準備から活動に至るまで、少年自然の家の職員や講師の方、そしてボランティアスタッフがリードしながら実施しましたが、全活動終了後に実施したアンケートの中で、参加者から「準備段階から参加してクラブの役に立ちたい。」という意見をいただいたことから、2年目以降、新たな取り組みを加えることになります。

その後のファミリー農園クラブ

2年目からのファミリー農園クラブの歩みについて、その経緯をトピック的に紹介しましょう。

畑を耕す様子
野外炊事の様子

平成25年度(26家族93名)

野菜や果物の収穫体験を主とした活動を実施していましたが、参加者の主体的な活動を目指すべく、畑を「ファミリースペース」として参加家族に提供し、年間通して野菜作りや収穫に取り組めるようにしました。初めて経験する家族がほとんどであったため、なかなか思うように栽培することができない家族もありましたが、自分たちの畑で収穫した野菜を大事に持ち帰る姿が大変印象的でした。

平成26年度(19家族68名)・27年度(24家族84名)

参加者に「食」について考えていただくことと、参加家族同士の交流と人間関係づくりを目指して、新たに「火育」の観点を織り込んだ「薪を使って煮炊きをする野外炊事」のさらなる充実を目指すことにしました。どの家族も、繰り返すうちに、薪を使った火の扱いがどんどん上手になっていきました。

平成28年度(21家族74名)

この年には、参加者の中に繰り返して参加する、いわゆる「リピーター」の家族が目立つようになりました。このことにより、初めて参加する家族が、リピーターの家族にアドバイスをしてもらいながら野菜作りに取り組むといった光景が展開されるようになりました。

一方、初年度から実施してきて人気度の高かった「餅つき」ですが、このころから「ノロウィルス」の影響が世間で大きく取り上げられるようになり、衛生上の問題からやむなく中止することにしました。

平成29年度(20家族66名)

この年も、参加家族の約半数をリピーターが占めており、初めて参加する家族の良き手本となって活動してくださいました。それもあってか、年5回のクラブ実施の日だけでなく、それ以外の日にもたびたび畑に足を運び、草を抜いたり水やりをしたりする家族が目立つようになりました。クラブ会員相互にとって、大変良い刺激となったことは間違いありません。中止した餅つきの代わりに「七輪」を使った活動(せんべい焼き)を実施し、好評を得ました。

平成30年度(19家族66名)・31年度(18家族61名)

家族で協力して農作業や収穫体験をすることで、自然に会話がはずみ、微笑ましい光景がふんだんに見られました。最終回である5回目のクラブ実施日に、会員同士の交流活動として「お楽しみ会」(簡単なゲーム)や自然物を使った創作活動を取り入れてみました。ファミリースペース活動も収穫体験も一つ一つが充実し、「ファミリー農園クラブ」の安定期に入った感がありました。

ファミリー農園クラブwith Corona

令和2年度(18家族67名)・3年度(10家族35名)

猛威をふるう「新型コロナウイルス感染症」の拡大を受けて、私たちの「ファミリー農園クラブ」も甚大な影響を受けました。

まず、令和2年度には、3密を避ける必要から、5回のクラブ実施日には、参加家族に一堂に集まっていただくことをやめました。そのため「野外炊事」も、中止せざるを得なくなりました。また、ファミリースペースでの活動や収穫体験も、家族ごとの活動時間をずらして設定するなどの工夫を加えることでなんとか成立するという厳しい状況が続きました。家族同士の交流活動が組めないのが、最も残念な点でした。
ファミリー農園クラブが発足して10年目を迎える令和3年度は、新型コロナウイルス感染症拡大防止対策として、参加家族数を例年の約半数(10家族)に絞り込むとともに、昨年度同様、家族ごとの活動時間をずらして設定して活動を始めようとしているところです。

いつまでこのような状況が続くのか、今の段階では、長いトンネルを抜け出せる見通しは持てていませんが、ワクチンの接種が進んで社会全体が集団免疫を獲得し、日常が戻った運びには、再びファミリー農園クラブが本来の活発な活動を始めることができるものと、期待してやみません。

参加者の感想等(令和元年度までの感想から)

  • 自分で掘った里芋で芋餅を初めて作って、とてもおいしかったです。岡山ならではの桃やマスカットの収穫は、他ではできない体験で、本当にありがたいです。野菜を育てることの難しさ、旬の野菜のおいしさを味わうことができて、とてもよかったです。
  • ファミリー農園クラブの開催回数は子どもたちにとっても飽きずに楽しめるもので、よかったです。畑の収穫がなかなか上手にできないので、今は畑の難しさを感じています。野菜がうまく育ち実れば、畑のおもしろさがもっと伝わったのかと思います。
  • 本当にたくさんの企画をありがとうございました。大変でしたが、野菜を作る楽しさや大切さがわかりました。来年も参加したいですが、家の近くに畑を借りることができたら、新しい畑を楽しみたいと思います。主人は、人生観が変わったと言っています。
  • 親子共々、毎日楽しく参加させていただきました。野菜の収穫体験、桃やマスカットの収穫は、特になかなか体験する機会がないので、とても貴重な時間となりました。
  • 火を使った炊事体験がとても楽しかったので、もっとたくさんの料理を作ってみたいです。また、季節の野菜収穫ができ、旬の野菜で作った料理が楽しめ、農業や食の学習ができ、満足です。
  • 1年を通してたくさんの経験をさせていただき、親子の交流する時間を持てました。スタッフの皆様ありがとうございました。
  • 活動も楽しかったですが、他の家族との交流もあり、とても楽しく参加ができました。また、来年も申し込みたいです。

岡山市立少年自然の家 所長 平坂正夫さん

平坂正夫さんの写真

2016年 岡山市立小学校を定年退職の後、岡山市立少年自然の家の指定管理業務にあたっている「観空産業株式会社」に入社する。
以来、少年自然の家の次長として3年間、所長として2年間勤務し、現在に至る。

元々、身体を動かすことが大好きで、若い指導員に混じって、子どもたちや家族が歩く山の中の活動路点検(約2時間)にもしばしば出かける。

次の執筆者さんからのメッセージ!

岡山ビューホテル 代表取締役 上野宏一郎さん

野菜や果物の収穫体験は家族の絆づくりになり、特に子どもたちにとってよい経験になりますね。これまで続けてこられたことは素晴らしいと思いました。

コロナによってなかなか開催できないとのことですが、楽しみが少ない子どもたちのためにも、感染対策や人数制限などをして何とか開催できる日が来るのを願っています。

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