地域に暮らす60代、70代の男女11名(男性1名、女性10名)で構成された「三門学区地域のみんなでつながり隊」。
自分たちが暮らす地域の高齢者を支えていこうと、2014年に結成されました。70歳以上のひとり暮らし、または夫婦二人暮らしの世帯を対象に、掃除や買物同行などを無料(1回1時間以内)で行っています。
結成から4年、これまで取り組んできた案件は延べ2,270件(2014年3月から2018年9月末現在)にもなり、その功績から「ESD岡山アワード2018」では奨励賞を受賞しました。そこで今回は、「三門学区地域のみんなでつながり隊」の活動内容をご紹介します。
このボランティアが生まれたきっかけは、地域の交流拠点である岡西公民館で耳にする高齢者の日常生活の悩みや困りごとの声でした。
「日よけを出したいけれど、自分では出せない」「庭の草抜きができない」といった“日常生活のちょっとした困りごと”は、どこに頼んだらいいかわからない、という声が多かったのです。
この問題を目の当たりにした当時の館長は、「もっと身近で利用者に寄り添えるボランティアが必要」と強く感じ、受け皿の設立に向け奔走。館長の思いに賛同してくれるメンバーが集まり、「三門学区地域のみんなでつながり隊」が結成されました。
活動内容はゴミ出しや草抜きが多く、他にもエアコンのフィルター掃除、買い物、ドアノブの修理など多岐にわたって行っています。高齢者の話し相手になったり、離れて暮らす子どもに代わってひとり暮らしの高齢者の様子を見守ったり、特別な知識や専門技術がなくても解決できる、日常生活の延長線上にある困りごとであれば柔軟に対応しています。
活動の流れはシンプルで、公民館に届いた困りごとが、まずは月当番に伝えられ、月当番から各メンバーへと連絡が回り、最終的に対応できるメンバーで行います。二人一組での活動を基本とし、困りごとに応じてメンバーを増員。体調が悪い、家庭の都合で活動できないなどの場合は無理をせず、できる人ができる時に活動することで、スムーズな支援を持続することに成功しています。
ドアノブの修理、ごみ出し、草抜きなど、高齢者の日常生活を支援
資格や専門知識がなくても解決できる困りごとを基本としていますが、活動中に気づいた問題点を解決するためにメンバー全員で勉強することもあります。
例えば、認知症と診断されている依頼者のもとへ行く時には、認知症についての学習をしてから活動に臨みました。また、車いすを利用する高齢者から依頼があった際に、みんなで車いすの操作方法を学んだこともありました。
歩いているときは何とも思わなかった道が、車いすで進むと凸凹や段差が多く、スムーズに進めない形状であること。
スーパーの通路は車いすには狭く、買い物がしにくいレイアウトであること。
ATMの操作パネルは、車いすに座ったままでは見えないこと。
…車いすを利用する高齢者と接することで、メンバーにはこれまでと違った社会の景色が見えてきました。
公共の場にバリアフリー化が進み、ユニバーサルデザインの採用が増えてきているとはいえ、当たり前の日常を誰もが気持ちよく過ごせる社会は、残念ながらまだまだ遠いのが現状なのです。
活動から見えてきた問題点や気づいたことなどは、月に一回の定例会議で話し合います。この会には公民館のスタッフ・地区担当の保健師や地域包括支援センターの職員なども同席するので、情報を共有し、連携を取りながらよりよい支援のあり方を一緒に考えていきます。
定例会議は岡西公民館で開催
活動事例や地域課題について情報共有
活動から4年、「三門学区地域のみんなでつながり隊」は地域に浸透し、果たす役割はとても大きくなっています。この活躍は市内外に伝わり、北は津山市から南は岡山市南区灘崎まで、「同じようなボランティアの仕組みを自分の地域でも展開したい」との声が続々と上がっています。メンバーは各地からの要請に応えて体験談等を話す場に出向き、地域社会を支えるボランティアの構築に貢献しています。
地域住民の手で始まった高齢化社会を支えるボランティアの「つながり」は、これからもますます広がっていきそうです。
高齢者に寄り添った、きめ細やかな支援が暮らしやすい地域社会を築いていくんだね!