今回で5回目となるESD岡山アワード。国内外で取り組まれているESD活動の中から優れた取り組みを表彰し、多くの人々に知ってもらうことで、ESDを普及することを目的に、2015年度から開催されています。
2019年度は11月24日(日曜)にESD岡山アワードの表彰式と、受賞事業のプレゼンテーション、全員参加型のパネルディスカッションが行われました。また今回は開催5年目を記念し、これまでの受賞事業の代表者によるポスターセッションや、特別講演なども開催されました。
午前の部では、ESD岡山アワード2019「グローバル賞」「岡山地域賞」の表彰式が行われました。グローバル賞は42か国から94件の応募があり、Web投票の結果を踏まえた予備選考及び審査の結果、2事業が選出されました。岡山地域賞は8件の応募があり、優秀賞1件、奨励賞3件、審査員特別賞1件の受賞が決まりました。
大森雅夫岡山市長による「岡山市は国内外のESDをリードしていくため、一体となって持続可能な地域づくりに取り組んでいきたい」とのあいさつに続いて、各受賞団体に表彰状が手渡されました。
受賞団体の皆さま
続いて、グローバル賞及び岡山地域賞 優秀賞を受賞した事業について、各団体の代表者によるプレゼンテーションが行われました。
事業名
真のアフリカ若手女性リーダーの育成授業
団体名
女性のリーダーシップと研修プログラム(南アフリカ)
農村地域における若い女性に向けた問題解決スキルの向上や、リーダーシップの育成を目指す事業。重点テーマは、ジェンダー、環境、生物多様性と気候変動。ジェンダーでは、啓発活動や教育プログラムを通じて農村地域の女子や女性のリーダーシップ能力の向上に焦点を当てています。
添付ファイル
事業名
地域に根差した包摂的な防災に向けたコミュニティの能力強化
団体名
学習とコミュニティ発展のための人々のイニシアティブ(フィリピン)
障がい者や女性、子どもなど社会的弱者グループの包摂的かつ積極的な参加を促しながら、地域コミュニティにおける防災・減災の取り組みを行っています。カルボヨグ、カトバロガン、サマール地区における12のバランガイ(最少の地方自治区)で、自然災害に対する復元力向上などにも取り組んでいます。
添付ファイル
事業名
岡山後楽館高等学校「まちなかのふるさと教育」
団体名
岡山市立岡山後楽館高等学校
総合的な学習の時間「探求『岡山の未来』」において、地域をテーマにした研究活動に取り組んでいます。このほか特別事業として、月1回食堂を開放し地域の方との交流を図る「らっかんランチ食堂」、岡山県産木材を使った作品の製作を行う「岡山県産木材ふれあい事業」、西川の自然環境保全の大切さを伝える「西川水族館」など、多様な事業を行っています。
添付ファイル
岡山地域賞 奨励賞、審査員特別賞を受賞した事業の概要は下記の通りです。
事業名
食とエネルギーの地産地消を考える
団体名
おかやまエコマインドネットワーク
「食とエネルギー」をテーマに、市民向けの講演・イベントを開催するなど継続的に持続可能な社会づくりに向けた啓発活動に取り組んでいます。主な取り組みとして、先進的な地域の視察や、ESD活動に先進的に取り組んでいる団体や個人との交流のほか、映画の上映会やマルシェの開催など誰でも気軽に参加できる活動を行っています。
事業名
私たちの国際協力
団体名
倉敷市立第二福田小学校
6年生による国際協力実践活動のプロジェクト。インドの最貧州・ビハール州に設立されたニランジャイナスクールの学習環境改善を応援する活動を行っています。総合的な学習の時間において、途上国の現状を学んだ後、外部専門家の方から話を聞いたり、現地の子どもたちと交流したりして、ニランジャイナスクールに通う子どもたちの生活環境について知り、自分たちがやるべき課題を見出しています。またフリーマーケットなどで得た収益で物資を購入し、現地に届けています。
事業名
障がいがあっても、いきいきと人生を生きれるように
~のぼり旗の端材を利用し、障がい者が商品化。企業、学生とのコラボ事業!~
団体名
株式会社ありがとうファーム
これまでは廃棄処分されていたのぼり旗の端材を、株式会社ありがとうファームで働く障がい者が手編みで商品化・店頭販売を行い、障がい者の収入向上、廃棄の削減に貢献しています。のぼり旗の端材は、同製品の大手メーカー株式会社イタミアートから譲り受けたものを使用し、商品開発には地元の大学生も携わるなど、企業・学生が協働して取り組む事業です。
事業名
岡山における民間ユネスコ運動としてのESD関係活動
団体名
岡山ユネスコ協会
ユネスコスクール加盟校の小学生から高校生を中心に、地域コミュニティにおけるESDやボランティア活動を促進する「ESDパスポート」事業を進めています。そのほかに、小中学校を対象に自分のまちの宝物を探し、絵で伝える「絵で伝えよう私のまちのたからもの絵画展」や、岡山市内の寺社での「平和の鐘を鳴らそう!運動」、「ユネスコ地球環境講座」の4つの事業を柱に、持続可能な社会の担い手、創り手を育成しています。
午後からは、これまでのESD岡山アワード受賞事業・計24団体の代表によるポスターセッションが行われました。世界各国の事業の先進的なESDの事例を学ぶ機会ということで、いたるところで熱心な意見交換や交流が生まれ、会場は熱気にあふれていました。
ポスターセッション会場の様子
歴代の受賞者も参加
ポスターセッションに続いて、来場者全員によるパネルディスカッションが行われました。参加者それぞれがESD活動を継続する秘訣や、成功のカギについて3つずつキーワードを発表。そのあと小グループに分かれ、意見交換を行いました。ディスカッションでは「活動を継続するには楽しいと思えることが重要」「これまで交流のなかった分野の人々と繋がっていくことも必要」などの意見が出ました。参加者からは「問題や課題を見つけた時こそチャンスにつながる」「多くの人と意見交換ができて大変有意義な時間だった」などの感想が寄せられました。
全員参加のディスカッション
モデレーターの大安喜一さん
パネルディスカッションの最後にはモデレーターの公益財団法人ユネスコ・アジア文化センター教育協力部 部長の大安喜一さんより「ESD活動の活性化のためには子どもたちの力を大切にしたボトムアップが重要。社会全体のために何ができるかを考え、社会を巻き込んでいく“巻き込み力”が大切」とのあいさつがありました。
今回で5回目となるアワードを記念して、認定NPO法人EDGE会長・APDF2020 in 岡山実行委員会委員長の藤堂栄子さんによる「インクルーシブ教育とESD」、公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)タスクフォース・藤野純一さんによる「サステイナビリティとオリンピック」の2講演が行われました。
藤堂栄子さん
藤野純一さん
藤堂さんは、障がいの有無に関わらず誰も取り残さない教育を推進する必要性を、ディスレクシアを持つ3名の事例を挙げながら講演。また藤野さんは、資源管理や環境保全など多様な側面から持続可能性に配慮したオリンピックの設計についてユーモアを交えながらお話しされ、参加者はメモをとりながら熱心に聞き入っていました。
式典の後は会場を移し、軽食などをとりながら交流会が行われました。参加者は、アワードでの発表をねぎらうとともに、お互いの活動について質問や話し合いを行うなど、和やかな中にも熱いひとときを過ごしていました。また会場のあちこちで参加者同士が記念撮影をする姿なども見られ、参加者たちはリラックスして思い思いに楽しんでいた様子です。
交流会の様子
各国からの参加者同士で交流
今回のESD岡山アワードで発表・表彰された優良事例が、地域でのESDの取組の参考となり、SDGsの目標達成や、さらなるESDの普及・発展につながっていくことを期待します。