岡山県ユネスコスクール高校ネットワーク顧問の柴川さんから、ユネスコスクールの高校生と、それを支える大学生スタッフの活動を中心にお話しいただきました。
柴川さんは、大学時代に留学したアメリカ・オレゴン州でESDと出会いました。オレゴン州は「全米一サステナブルな州」といわれています。教育実習を行った小・中学校では、手作りの校門やビオトープがあったり四季折々のアートが飾られていたり、子どもたちは自由な雰囲気の中で生き生きと学んでいたそうです。
帰国後、柴川さんは高校の英語教員となり、本格的にESDに関わり始めます。文化祭で生徒たちと一緒にフェアトレード商品や地産地消商品を販売したり、探究学習において地域で海外の方を受け入れる活動をしたりしました。そしてESDの面白さと難しさを実感し、より多くの経験を積み、研究したいと考え、大学院に進学します。
現在は岡山大学で教員養成に携わり、ESDに関する調査・研究、大学内でのESDの推進、企業や団体との連携、学校でのESD実践の支援をしています。
ユネスコスクールは、ユネスコの理念「戦争は人の心の中で生れるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない」に沿った取り組みを継続的に実践する教育機関として認定された学校のことで、ESD活動の推進拠点になっています。1953年に発足し、現在は世界182か国で11,500校以上が加盟、そのうち日本は1,116校となっています。
岡山県ユネスコスクール高校ネットワークは、2014年に岡山市で開催されたESD・ユネスコ世界会議のStudent(高校生)フォーラムを機に結成されました。県内各地の私立・公立計11校のユネスコスクール加盟校で構成されています。
Studentフォーラムには30か国以上から200人を超える高校生が集まって「私たちにとってESDとは何なのか」「高校生として何ができるのか」を考え、共同宣言をしました。フォーラムを終えて、先生たちの「一度きりで終わらせるのはもったいない」という想いからネットワークが結成され、活動を続けています。
岡山県ユネスコスクール高校ネットワークでは、年に一回、他の高校との実践交流会を行っています。これまで、料理やスポーツを通して海外の高校生と交流したり、エコな商品を作ったりするワークショップを行ってきました。
コロナ禍で直接の交流が難しくなってからも、オンラインで交流を続けています。2020年にはコロナ禍そのものを題材にして高校生の不安や悩みを共有し、最後には前向きなESDアクション宣言をまとめることができました。翌2021年は、オンラインでブルガリアの高校とSDGsカレンダーを協働制作しました。
学生スタッフは、実践交流会開催に向けて何度も打合せを重ね、当日はファシリテーターの役割を果たしながら、高校生を支えています。
岡山県ユネスコスクール高校ネットワークは、年度ごとに幹事校が変わります。どの学校も「次は自分たちの番だ」「自分だったらどうするか」と自分ごととして捉えることができるので、継続していくためによい仕組みだと考えているそうです。
また、実践交流会では毎回違うテーマに取り組んでいますが、これからは一つの長期的なテーマを決めて時間をかけて取り組むことも、継続性を生むのではないかと思っているとのこと。
今回のESDカフェには、現役の学生スタッフの他、OB・OG、ネットワーク結成を呼びかけた先生など、多くの方々が参加してくださいました。中には、高校・大学でネットワークに関わり、現在は高校ユネスコ部の顧問として活動を支えている先生も。こうしたことからも、ネットワークのつながり・環を感じることができました。