「岡山芸術創造劇場 ハレノワ」は、岡山市北区表町の南端、「千日前」とよばれるエリアに2023年9月にグランドオープンした劇場です。
皆さんは、劇場とはどのような場所だと思いますか?
華やかなステージで、オペラや演劇、舞踊やミュージカルや音楽のコンサートが開かれ、たくさんの人が見に行く場所。そうです。岡山芸術創造劇場では毎日のようにさまざまな公演が行われ、多くのお客様が訪れています。
ですがここは、公演を見に行くだけの場所ではありません。岡山芸術創造劇場は、その名のとおり「創造する」場所でもあります。グランドオープンの際には「100人ダンス」と銘打ち、大人も子どもも参加し、ダンサーと自分たちでつくった踊りを披露するダンスパレードや盆踊りを行いました。また高校生たちが自ら戯曲を書き、舞台美術をつくり、観客の前で演じる「ハイスクール演劇公演」という事業も行われました。このほか様々な視点でのワークショップが行われ、多くの市民の方が参加し、「創造する」体験をしています。
劇場の愛称「ハレノワ」は、市民の方々からの応募で選ばれた名前です。晴れの国岡山で、ハレの輪が広がるように、市民に身近な劇場になることを期待して付けられた愛称です。この愛称のとおり、ハレノワは多様な人々と連携し、文化の輪がどんどん広がっていくようにしたいと考えています。
普段は劇場に足を運ぶ機会がない人、舞台芸術を見たりつくったりすることにこれまで興味がなかった人、仕事や家事で忙しい人、子どもたち、高齢者、障害のある人、岡山に住む外国の人・・・。そのような方々も、気軽に来て文化芸術に触れられる場所になりたいと考えています。
ハレノワにはいろんな方に来てもらいたいのですが、まずは子どもたちにとって楽しい場所、自分たちにとって親しみのある場所だと思ってもらいたいと考え、子どもたちがハレノワに来て遊べるワークショップ「ハレノワひろば」を企画しました。
劇場が子どもたちに開かれ、思う存分遊べる場所になる、という試みは、埼玉県富士見市の公共文化施設「キラリ☆ふじみ」など、全国で行われています。そういった例を参考にさせていただきました。
「ハレノワひろば」は、2023年10月から、月に1回程度開催しています。ここでは、演劇の演出家やダンサー・振付家など、アーティストが子どもたちと一緒に遊びます。
ワークショップ当日、子どもたちはワクワクした顔で集まってきます。
「何してあそぶ?」というアーティストに「おにごっこ!」「工作!何か作りたい!」と次々に声が上がります。
あるときは、劇場の長い廊下に養生テープを貼ってリレーじゃんけんをしたり・・・
工作で作ったもので遊んだり・・・
新聞紙でつくったボールでドッジボールをしたり・・・
劇場の技術スタッフからもらった廃材でこんなことも。
みんなでおにごっこや「だるまさんがころんだ」をしたり、ひとりで絵を描いたり、2時間たっぷり遊んで、「楽しかった!また来たい」という声とともに帰っていきます。
アンケートでは、「自由にあそべてたのしい」「それぞれ好きなことができてよかった」という声が聞かれます。何をしてもいい、自由に遊んでいいという時間は、子どもにとって実は貴重なのかもしれません。
保護者の方からは、「劇場を身近に感じる経験ができたので、大きくなったらまた劇場に一緒に来たい」という声も聞かれました。
「ハレノワひろば」は今後も継続していきます。
子どもたちには、「劇場って楽しい場所だ」「遊んだり作ったりする自由な場所だ」「アーティストはおもしろいことを共有できる人だ」と思ってもらいたいと思います。
将来的には、中学生、高校生、大人になって、ハレノワにそれぞれのやり方で関わってもらえればうれしいです。遊びに来る、演劇やダンスを見にくる、つくることに興味をもつ、など、いろいろな関わり方をしてもらえたら良いなと思います。
これからも岡山芸術創造劇場ハレノワでは、子どもたちだけでなく、多様な方々と連携し、文化芸術の輪がどんどん広がっていくような機会、プログラムをつくっていきたいと考えています。
岡山県出身。岡山芸術創造劇場には、開館準備中だった2020年から関わってきました。
岡山の方々と劇場の関わりを考える「いどばた会議」や「いどばたシンポジウム」、多様な人々と劇場の連携をさぐる「劇場ラボ」を実施しています。岡山の人はクールなようで、実はとてもクリエイティブで面白いんじゃないかと最近思うようになりました。岡山市中心部の南東に、新しい芸術文化の拠点が誕生したことで、多様な渦がたくさん巻き起こると思います。その渦たちの輪が広がることで、地域が笑顔になることを期待しています!