模擬国連とは、国際連合の会議を模倣した教育活動であり、学生が各国の大使として参加し、英語を用いて国際問題について話しあう場です。最終日までに決議案を作成することを目的としています。
ノートルダム清心女子大学が参加している模擬国連会議には、模擬国連世界大会(NMUN)、日本学生英語模擬国連大会(JUEMUN)、岡山学生模擬国連大会(OkaMUN)の3種類があり、今回はドイツで行われた模擬国連世界大会についてお話ししていただきました。
今回の模擬国連世界大会には、ノートルダム清心女子大学から10名が参加しました。2人一組で担当国(メキシコ・ベトナム)の大使として国連総会、人権理事会、国連環境総会にそれぞれ参加し、担当国の立場で議論しました。
この会議に臨むにあたり、参加者はポジションペーパーという意見表明資料を作成する必要があり、参加者それぞれがそれを読んだ状態で会議は始まります。スピーカーの3人は、ポジションペーパーで意見を確認し、自分の担当国と同じ立場をとる国の大使を見つけ、論点を整理し議論を深め最終的な合意形成へと向かっていく。という手法でそれぞれの会議にて活躍したそうです。
会場からは、合意形成の難しさは?積極的に話しかけることは難しくない?等、たくさん質問が出ました。庄司さんから、合意形成に必要な要素として、まず、徹底した事前のリサーチが必要であり、思い切って話しかけること、丁寧に議論を進めていくこと等心掛けたことについてのお話がありました。そして、会場から、ぜひ具体的な議題と決議案を知りたいという要望も出て、菅形さんからは具体的な議論内容の紹介がありました。
菅形さんは、国連総会にメキシコの大使として出席しました。総会で実際に扱う議題は1つですが、2つの議題について事前に調査しポジションペーパーを作成した上で、会議に臨みます。会議の場に集った際に、参加者全員でどちらの議題を選択し話し合うか決め、議論に入ります。今回選ばれたテーマは、「持続可能な開発のための科学・技術・革新」でした。
5つの決議案の中の代表的なものとして、「地域委員会等のローカルコミュニティーの関与の必要性」「科学技術分野において活躍する女性のキャリア支援」等が挙げられました。
カフェ参加者から、国際的な枠組みで議論する際には、とかく国の施策のみに焦点があたるが、今回、ローカルコミュニティーの関与についての必要性を言及するに至った経緯について教えて欲しいという質問も出ました。菅形さんから、「地域での取組」というのは、いわゆる学校教育等の公教育とは別の、民間での取組等を意図してこの議論がなされたと思う。学校でのカリキュラムに入れ込むのは難しいという意識があった。公民館のような社会教育の場も想定しているというのもあると思う。という回答がありました。
続いて、堀田さんからは、人権理事会へ参加した内容の報告がありました。こちらもおなじく2つの議題について準備し、会議の場で「紛争と暴力の文脈における食料への権利の促進」というテーマが選択されました。メキシコの大使として参加した堀田さん達は、メキシコの現状を正確に捉えた上で、メキシコ政府として外国に取り上げられたくない情報もあるため、慎重に議論を進めていきました。その中で、ウクライナからの穀物輸出を確保するための回廊を作るよう、国連計画(UN Plan)にサポートを呼びかけるという提案をしました。
堀田さんからは、やはり、合意形成には積極性が大切だというお話がありました。そして、まずは、相手の意見を聞き、何を考えているかを知る必要があり、もちろん事前リサーチは必須だが、ポジションペーパーの細かい意図がやはり会って話してみてわかることもあるため、直接相手の意見を聞くことは大切だと感じたとのことでした。
また、菅形さんは、まずは、立場の近い国の大使と合意形成することが大切と感じたとのことでした。担当国がメキシコだったので、ラテンの国々とは立場が近く、連携して合意形成していったとのこと。担当国の実情によっては、大使として議論する際に触れたくない部分もあるため、そこに触れることを避けながら、合意形成していく過程が難しく、また面白いと感じたとお話がありました。2022年に初めて模擬国連に参加した際は、積極的なタイプの自分でさえ圧倒され、大変驚いた。2回目である今回は、最初から積極的に行こうと心に決めていた。そのとおり頑張れたと思う。経験を積むことも大事。日本人は、この会議においても受け身で聞いていることが多い。自分から発信することにかなり意識して臨み、成果も出たと思う。またそれぞれの立場で、使いたい単語や表現、逆にどうしても使いたくない単語や表現があるため、決議書づくりは慎重にならざるを得ない。しっかり注意を払わなければならないし、主張すべきはしなければならないということを学んだ。とのことでした。
会場より、「グローバルな人材であることと、英語が自由に使えることについての関係についてどのように考えるか。」という質問が出ました。3人からは、「英語を話しているときの自分の態度、話し方、速さは、日本語を話す時と違う。もちろん、自分のアイデンティティーは大切にしつつ、英語を使う人同士の中で、どのような態度でいるか等言語外の情報もコミュニケーションには大切。今回の経験を通じて、英語は道具だと強く感じる。議論をする際、前提となる知識がもちろん必要、また、他者との違いを受け入れる寛容さも必要。道具としての英語をうまく使えるようになると、外に飛び出して行く自分に自信が持てる。グローバルな人材であるために、交渉力、積極性、傾聴力の全てが必要な要素であると感じた。」との回答がありました。
庄司さんより、ESDカフェ参加者へ「今後どのような活動をしていけば、学びを地域へ広げていけるか。」について問いかけがあり、様々な立場から提案が挙げられました。中学校教諭の方からは、「大学生になったらここまでできる、と中学生に見せてあげたい。模擬国連の手法は、他国の立場になって考えること。また、考える前にしっかりと調べる「調べ学習」も重要に思う。他国の立場で考えるのは難しいかもしれないが、例えば他県の立場で、子供向けに模擬国連的な視点でコンテンツを作り、パッケージ化し夏休みに公民館等で無料塾のようなものをしたらいかがか?」等、具体的な提案もありました。
また、行政職員からは、「行政の各分野とコラボすることも、模擬国連の活動を広めることができる手段だと思う。岡山市が今年度認定されたユネスコ創造都市関係の文学のイベントが市内各所で行われる予定のため、模擬国連の活動を冊子にまとめ、文学イベントに出展するのも良いかと思う。行政にはいろんな分野の課がある。工夫次第で、様々な課のイベントに参加していくことができるのでは?」という意見もありました。
3人は、「様々な立場からの意見をもらい、参考になった。自分達で考えるだけでは思いつかないアイディアであるため、やはり、多様な人と話し合うことは大切だと実感する。」と締めくりました。
この活動に、岡山ESDプロジェクト ユース活動支援助成金が活用されているよ!
岡山ESD推進協議会では、ユース・人材育成を重点取組の一つとして、35歳以下のユース世代の人材育成に力を入れているんだ。詳しくは、ホームページを確認してね。