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第19回子ども学会議への参加について

[2024年12月3日]

ID:65659

第19回子ども学会議への参加について

「ユース活動支援助成金」事業報告(環太平洋大学 景山愛梨)

私たちは、ユース活動支援助成金を活用し、2023年9月23日、24日の2日間、第19回子ども学会議に参加し、ポスター発表、シンポジウム聴講をしました。また、9月25日には、レイモンド南蒲田保育園に視察に行きました。

第19回子ども学会議

今回、私たちは白百合女子大学で行われた第19回子ども学会議に参加しました。日本子ども学会は、『子どもは未来である』との至言を残した故小林登先生が創設された学会です。今回の会議では、”子どもの今”に注目し、”子どものよりよい未来”を展望することを目的として開催されました。テーマは「子ども期のしあわせを考える〜社会の中での子どものクオリティ・オブ・ライフ〜」でした。

1日目は、学会主催シンポジウム“Happiness for all children:子どものしあわせが実現する社会・政策”「こども家庭庁への期待」と主催校企画シンポジウム1「親の別居・離婚に直面する子どもへの支援の現状と課題」、主催校企画シンポジウム2「子ども期の逆境とレジリエンスを考える」を聴講しました。シンポジウムでは、こども家庭庁の基本姿勢についてや子どものしあわせを社会・制作で実現するために必要な視点を学びました。午後からはポスターセッションで、本学で私達が学び調査した「ニュージーランドの保育施設におけるESDの取り組みとその成果」についてポスター発表を行いました。

2日目は、市民公開シンポジウム「子育て・子育ち支援の今:親子のしあわせをつくる」を聴講させて頂きました。このシンポジウムでは、日頃から子どもたちの学びと育ちに関心をもち、それぞれの専門性を生かした活動をされている登壇者の方々から親子のしあわせをつくることを視野に入れた社会的取り組みについて学びました。

白百合大学では、2017年から「エデュメント大学」を実施しています。エデュメントとは、エデュケーションとエンターテイメントとが合わさってできた造語です。白百合女子大学 やた みほ先生は、20年前から編み物で作るアニメーション「編みメーション」を制作し、映像を扱う部署で主に視覚玩具や映像を使ったワークショップに携わっています。今回は「クレイアニメをつくろう」というテーマでお話をしてくださいました。実際にリアルタイムで大学内にてワークショップを行い,その様子を中継で繋いでくださいました。ワークショップの内容は子どもたちが粘土でオリジナルのキャラクターを作り、それを動かしながらコマ撮りでアニメーションを作るというものでした。子どもたちの創造力がとても育つ活動であると思いました。セッションの終わりには完成した子どもたちの作品を鑑賞しました。普段経験することが難しいアニメーション制作等の活動を地域の大学でできる環境があることがとても素敵なことだと思いました。他にも、調布市せんがわ劇場演劇ディレクター、「せんがわ劇場DEL」の櫻井拓見さんの「表現ワークショップ」に関するお話や、特定非営利活動法人 子ども大学たま副理事長、斉藤れいなさんの「子ども大学たま」に関するお話を聞きました。

3人の登壇者の方々のお話を聞き、子どもを社会の中で育てていくことの大切さを強く感じました。これからの未来を生きる子どもたちが、それぞれのしわあせに気づいたり見つけたりすることができるような環境を岡山でも作っていきたいと思いました。

今回の日本子ども学会議では、保育現場のことだけではなく、子どもに関わっている様々な方の視点から考えを聴講することができ、大学では学ぶことができない貴重な経験をすることが出来ました。

レイモンド南蒲田保育園を視察

レイモンド南蒲田保育園では、様々なESDの取り組みが日常の保育の中で行われています。

まずは、保育環境に合ったESDとしての取り組みの中から2点を紹介します。

一つ目は、手作りのほうきです。自然の素材を使い保育者が作ったほうきが設置されていました。子どもは自然の植物からほうきを作ることができることを知るだけでなく、SDGsの達成目標12「作る責任使う責任」を考えるきっかけになります。子どもでもわかりやすいようなパワーポイントなどを用いて、子どもたちの興味を伸ばしていけるよう工夫されていました。

二つ目は、絵本のコーナーです。絵本コーナーの一部として、SDGsに繋がるような絵本が設置されていました。私が、その中で気になった絵本は「タンタンタンゴはパパふたり」という絵本です。同性愛を扱った絵本であるがストーリーもわかりやすく子どもでも楽しく、このテーマを自然と受け入れることができるものであると思いました。実際に子どもにも人気の絵本であると保育者の方が教えてくれました。子どもには少し難しいのではないかと感じるようなテーマの絵本ですが、子どものまっさらな感覚の中に保育者の思いを入れていくことを大切に絵本コーナーの工夫がされていました。

次に、日々の保育活動の中で行われているリユースやリサイクルに関する取り組みについてです。

一つ目の取り組みは、セブ島への物資支援です。保護者の方々と協力して、着られなくなった服やおもちゃなどをセブ島の子どもたちに届けているそうです。自分は使わなくなってしまったが、それが誰かの役に立てることを知ったり、自分が大切にしていたものがほかの人の手に渡り、新たな持ち主が嬉しそうにしてくれている様子を見てそれを嬉しく思ったりしているそうです。持続可能な社会への興味のきっかけとなるような活動が行なわれていました。

二つ目の取り組みは、ペットボトルキャップの回収です。リサイクルを目的にペットボトルキャップを回収しはじめたわけではないそうですが、「ペットボトルキャップはリサイクルできて新しいものに変わるらしい」ということを子どもが発見したことから、集めたものをどうしたいか子どもと保育者が一緒になって考えるようになったそうです。

子ども発信の意見、子どもの興味を大切にしながらペットボトルキャップを集め、集めたキャップはどこに持っていけばいいのか、沢山集まったからどうやって持っていけばいいかなど、ステップを踏みながら子どもと一緒に時間をかけて活動した様子を教えていただきました。ただ単にリサイクルのためにキャップを回収することを呼びかけるのではなく、子どもにとって新たな発見や経験をすることができるように保育者の工夫がされていることが伝わりました。

これだけ様々なESDの取り組みを園で行うことができているのはなぜだろうと疑問も持ったので、ESDの取り組みが園の中でどのようにして始まったのかを保育者の方に聞いてみました。園で「SDGsに繋がる取り組みをしよう」と決まってから、一人の保育者が頑張って学び、発信するのではなく、園の保育士がみんなで一緒に考え意見を出し合う時間をとっていると仰っていました。また、「SDGsを身近にとらえてもらう」ために、保育者のプライベートや園の中で取り組んでいるSDGsにつながるアクションを、子どもと保護者が見える場所に掲示することを実践したそうです。保育者が日々、色々なことにアンテナを張っておくことの大切さがわかりました。

保育者から子どもへ、そこから子どもの保護者、地域へとESDが広がっていき持続可能な社会づくりがされていることがわかりました。なお、今回視察にてご教示くださった保育活動については、書籍『SDGsと保育スタートBOOK-つながる保育で実践する幼児期のESD』青木一永著、株式会社みらい(2023年)にて写真とともに事例が紹介されております。

今後の展望

今回の学会参加、視察を通して、大学からできるESDの取り組みとして2点考えました。1点目は、日ようび子ども大学(大学コンソーシアム岡山主催)や学内で実施している子育てカレッジ(岡山県備前県民局おかやま子育てカレッジ地域貢献助成事業)に力をいれていくことです。子どもたちが日常の中ではなかなか経験することがないようなことを経験できる機会であると考えられるので、その中でESDに繋がるような内容を取り入れ、ESDについて知ってもらう機会をつくることが良いのではないかと考えます。視察園では、ESDの取り組みを園で行うことによって子どもたちから家庭へとESDが広がっているとのことでした。このように大学で子ども向けのイベントを開催することで、子どもたちからESDが大人にも広がっていくことが期待できるのではないかと考えます。

2点目は、大学の先生方と協力をして保育者や保護者向けのESDのセミナーや実用例などを知ってもらう機会をつくるということです。持続可能な社会を作っていくためには、現代を生きる人だけでなく次世代を担う人材が持続可能な社会を目指していく必要があると思います。そのためには、次世代を担う子どもたちを育てている保育者にESDに興味をもってもらうことが必要です。だからこそ、ESDについて知ることができる機会を沢山設け、少しでも多くの人にESDの取り組みが広がっていけば良いと考えます。学会のシンポジウムの中でも、まずは保護者に興味をもらえるようにすることがとても重要であるとおっしゃられていました。視察園でも、ESDを主として取り組まれている保育者が、まずは自分がしっかりと知ること、そして園の中全体での研修を大切にされているとのことでした。今回の保育園視察を通じて、一人からどんどんとESDの輪が広がっていけるような環境、岡山市にしていくことが大切であると強く感じました。

今回の経験を生かし、上記2点の活動をしっかりと形にしていくことができるよう努めていきたいと思います。
集合写真