岡山という地域に根ざし、SDGsを合言葉として、人々に活気を生み、持続的に生きるための課題解決につながることが期待される取組を表彰し、活動を後押しする「おかやまSDGsアワード」。
今回は、「おかやまSDGsアワード2024」で「優良な取組」を受賞した、有限会社ウイルパワー代表取締役の江川健次郎さんにお話を伺いました。
リユース業を行う有限会社ウイルパワーは、岡山県倉敷市と香川県丸亀市でリユース・リサイクルショップ「リユースマン」を運営しています。
「地球にやさしい生活応援団」を経営理念に、地域に根ざし、世の中に役立つ価値を提供することを目指しています。
店舗名の「リユースマン」は、アメリカの消防士(アメリカでは「ファイアーマン」)のように「リユースすることがカッコいい!」と憧れられる存在になることを目指した名称です。
「資源循環による元気で優しいまちづくり」をテーマに、資源循環することが当たり前の社会をつくろうと「リユース魂」を背負って仕事をしています。
自分の仕事に誇りを持っていたい、子どもに「お父さんカッコいい!」と思ってもらいたい。そんな気持ちで様々な取組にチャレンジしています。
中古品・不用品を扱ううえで大切にしているのは、価値を生むことです。持ち込まれたモノの買取→販売と、単に横流しにするだけでは、企業の存在価値は生まれません。
リユース・リサイクルによって地域資源が役立ち(=価値)に変わることを伝えたい、知ってもらいたいと考えています。
ウイルパワーとしては、SDGsが浸透するよりももっと以前から、リユース、リサイクルを通じて社会貢献を行ってきました。
当初は、社会貢献をしていることは公表していませんでした。どこか偽善のような感覚を持っていたからです。
しかし、SDGsが国連で採択されてしばらくしてから、あるイベントに参加した際、先生や会社員が社会貢献をしていると挙手するのを目にしました。「社会貢献していることを言っても良いんだ」と思えた瞬間でした。
それから、環境省グッドライフアワードへの応募や、SDGsネットワークおかやまへの参画など、SDGsを念頭に置いた活動を展開していきました。おかやまSDGsアワードを受賞したのは、2021年と今回(2024年)の2回です。
今回のおかやまSDGsアワードに応募した活動の一つに「不要品で世界を元気にする活動」があります。
SDGsネットワークおかやまの会合で出会った認定NPO法人AMDA社会開発機構さんと話が弾んで、2022年4月に連携協定の締結に至りました。
取り組んでいるのは、寄付希望者がリユースマンに持ち込んだ食器やアクセサリーなどの不要品・中古品の査定額が、認定NPO法人AMDA社会開発機構が行う、世界の貧困地域の支援活動に寄付される仕組みの運営です。
お金ではなく、使わなくなったモノが支援活動への寄付につながります。まさに、地域資源が役立ちに変わる取組で、随時受け付けています。
くらしき環境フェア2024では、「不要品チャリティーオークション」という形で活動に取り組みました。市民が不要品を持ち寄り、お客さんが値段をつけて落札するものです。出品者・落札者ともに環境保全や社会貢献につながる取組になりました。
ウイルパワーのリユース事業では、国内では市場価値のないモノを海外に輸出して、現地のオークションにかけるなど市場の構築に努めてきました。
リサイクルについては、空缶・古紙・古着・ペットボトルなどの廃棄資源の回収を行っています。9年間で1152.2トンの再資源化につながっています。
これらの取組に、地域住民の協力や地元企業との連携が不可欠なのは言うまでもありません。
再資源化によって得られた収益金は、その30%を福祉活動に寄付、残りの70%を高齢者・障がい者雇用に活用しています。
これまでに、リユース絵本の寄贈や、困難を抱える子どもたちや家庭を支援するNPOの活動に活用されるKOTOMO基金への寄付など、地域の役立ちにつながる取組を応援しています。
近年、環境省がサーキュラーエコノミー(循環経済)を推進しています。製品や資源の価値を長く保全・維持し、廃棄物の発生を最小化した経済のことで、環境問題や資源不足への対策に加えて、新たな価値を生むことによる経済効果を目指しています。
その実現のために、「静脈産業」が注目されています。血液の循環のようなイメージで使われる言葉ですが、製品を生産する「動脈産業」に対して、消費されて不要品や廃棄物になったモノなどを取り扱う事業が「静脈産業」です。
今の日本では、この静脈産業の存在価値はまだまだ低いです。しかし、私たちが行っていることには誇りを持ちたいと思っています。すなわち、我々のような静脈産業の存在価値をつくっていくため、その拠点をつくろうというのがサーキュラー・ベースです。
香川県善通寺市で2024年から取組を開始しましたが、今後さらに展開していきたいと考えています。
価値のないモノでも、たくさん集まると価値が生まれます。例えば、缶を数個集めただけでは何にもなりませんが、たくさんの量を集積することによってリサイクルができる、すなわち価値が生まれるようになります。
この発想で、扱っているモノに価値を見出す場所(ベース)をつくり、欲しい人が競争する仕組みがサーキュラー・ベースです。
ひとたび行政に「ごみ」として扱われるとリユース・リサイクルができなくなるのですが、その手前にサーキュラー・ベースがあることで、価値をできるだけ長く保持し、廃棄物をできるだけ少なく留められるようにしたいです。
店舗ではリユースマンが取り扱う範囲のモノのみが循環の対象になりますが、サーキュラー・ベースではその範囲を超えて、地域の企業や住民が資源循環に関わることが可能になります。
特に倉敷には日本有数の水島コンビナートがあり「動脈産業」が多いので、ウイルパワーは「静脈産業」の担い手として資源循環を促したいです。
こうした取組には、その旗振り役となる行政にも役割があるのではないかとも考えます。
AMDA社会開発機構さんとつながった時のように、おかやまSDGsアワードを通じて、行政をはじめ様々な企業や団体との連携の可能性を今後も探っていきたいと考えています。
関連リンク
リユースマン倉敷(https://www.doguya.com/別ウィンドウで開く)