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「おかやまSDGsアワード2024」受賞 邑久高等学校セトリー運営指導委員会の活動紹介

[2024年12月27日]

ID:67262

岡山という地域に根ざし、SDGsを合言葉として、人々に活気を生み、持続的に生きるための課題解決につながることが期待される取組を表彰し、活動を後押しする「おかやまSDGsアワード」。
今回は、「おかやまSDGsアワード2024」で「特に優良な取組」を受賞した、邑久高等学校セトリー運営指導委員会の矢野祥子先生にお話を伺いました。

校舎の写真

セトリーってなに?

「セトリー(Be a SETOUCHI Leader!)」は、岡山県立邑久高等学校(以下、邑久高校)で2016年から実施している地域探究活動です。
「地域に学ぶ、地域で学ぶ」をテーマに、地域の自治体や企業と連携した様々な探究活動を行っています。

邑久高校では毎週一コマ、セトリーの時間を設けています。この授業の時間に、1年生・2年生がテーマに分かれて探究活動を進めています。
今年度は「瀬戸内市文化財PR動画」「デジタル版瀬戸内市SDGsカードゲーム」「ハンセン病に学ぶ」など、9つのテーマで探究を行っています。

「ハンセン病に学ぶ」のグループが実践報告会に向けて準備する様子

「ハンセン病に学ぶ」のグループが実践報告会に向けて準備中

1年生は、自分のことや進路について考えるとともに、地域の方から話を聞いたり地元企業に取材に行ったりするなどして、地域について「知る」ことを中心に進めます。
2年生になると、普通科では地域課題の解決についてテーマを設定し、グループに分かれて探究を進めていきます。生活ビジネス科情報ビジネスコースでは、漁業協同組合の方や刀匠の方、牛窓オリーブ園などを取材して新聞をつくり、市民図書館などへの展示を通じて地域の方に発信しています。保育・食物コースでは、認知症サポーター養成講座の受講や施設の方とのやり取りなど時間をかけて準備し、地元の高齢者福祉施設を訪問して高齢者へのレクリエーションを実施しています。
生活ビジネス科2年生でのこうした活動は、3年生になって行う課題研究にも生かせる内容になっています。

探究の成果物の写真

探究の成果物が並ぶ応接室

セトリーを学校と地域のみんなで

このような授業を行うにあたって、セトリー運営指導委員会が助言や調整を担っています。
高校教員を含む約50名の委員のうち、大学の先生や地域の方など、学校外の委員が今年度は14名います。
「地域の専門家は地域の方」ということで、瀬戸内市役所、地元企業、教育関係者などと協働して、時には生徒と直接関わりながら生徒の活動を支えています。

邑久高校は瀬戸内市唯一の高校で、地域の方々がとても大切にしてくださっています。
市役所や図書館、公民館などの施設、地域の企業も学校の近くにあり、行き来しやすいことも学校と地域が関わりやすい理由の一つに挙げられます。
このように、地域の多くの方々と日常的・継続的に連携しながら探究を進められることは、邑久高校が恵まれている点のひとつです。

地域連携マップ

地域連携マップ(邑久高校ホームページより)

セトリーは2016年、おかやま創生高校パワーアップ事業の指定を受けたことをきっかけにスタートしました。
当初は学校外の委員も5名で、取り組む生徒も一部に限られていました。しかし、生徒が興味のある取組を実践することの効果を徐々に実感していき、今では生徒全員がセトリーに取り組むことになっています。
実は2016年当時、邑久高校は生徒募集に苦慮していました。しかし、セトリーが学校の魅力の一つになった今、志望倍率は安定して1倍を超えるようになっています。

セトリーの取組

瀬戸内市SDGsカードゲーム

瀬戸内市SDGsカードゲームは、「SDGsカードゲーム」の瀬戸内市版をつくろうと、岡山県環境保全事業団の協力を得ながら瀬戸内市と協働して取り組んでいるものです。
瀬戸内市から約20名の職員に来てもらい、部署ごとに取材をして、聞き取った市の課題の解決に向けてどのような行動ができるか、その行動によって発生する問題は何かなどを生徒が考え、トレードオフカードを制作しています。
カードで使用するイラストは、邑久高校美術部が描いています。取組開始から今年で4年目ですが、毎年バージョンアップを重ねています。

SDGsカードゲーム


当初はカードゲームを制作することが目標だと捉えていましたが、制作したカードゲームを活用して、高校生が小学生に教えることが最も重要な活動だと感じています。
瀬戸内市企画振興課が調整し、今年度は7つの小学校で出前授業を行っています。SDGsについて説明し、瀬戸内市の課題を解決するアイデアを一緒に考える内容です。

教える立場になることで、地域課題についての理解もより深まりますし、子どもに優しく寄り添って教えようとする姿勢も見られます。
小学生は年齢の近い高校生に対してすぐに心を開き、様々なアイデアを出します。小学生の自由で柔軟な発想は、行き詰まっている地域課題の解決に向けた糸口にもなり得るように感じられます。
高校生から更なる次世代の小学生に対してSDGsや社会課題について伝えられる出前授業の取組は、瀬戸内市の中で邑久高校が果たすことのできる大きな役割の一つだと考えています。

今年度は、より多くの方に瀬戸内市SDGsカードゲームを体験してもらい、地域の抱える問題について考える機会を増やしたいと、デジタル版SDGsカードゲームを開発したグループがあります。
大学の先生からプログラミングの基礎を教わり、画面の見やすさなどについて試行錯誤を重ね、完成したゲームを地域のイベントで参加者に体験してもらいました。

「デジタル版SDGsカードゲーム」のグループが実践報告会に向けて発表を練習する様子

「デジタル版SDGsカードゲーム」のグループが実践報告会に向けて発表練習中

瀬戸内魅力かるた

瀬戸内魅力かるたの制作は、生活ビジネス科の生徒が進めています。瀬戸内市の文化財や観光スポットなどに焦点を当てたかるたで、ひとり一項目ずつ担当します。
瀬戸内市出身ではない生徒も多いなか、かるたの制作のために調べ学習を進めることで、瀬戸内市について知ることにつながっています。
かるたづくりにあたっては、瀬戸内市立図書館友の会で「瀬戸内市ふるさとかるた」を制作されている方に協力していただいています。

瀬戸内魅力かるた

瀬戸内魅力かるた(第一弾)

かるたの読み札を考えている生徒たちの写真

かるたの読み札を考えている生徒たち

地域とともに、「Be a SETOUCHI Leader!」

探究学習は、答えがないこと、専門ではないことも多く、その点で教員が大変さを感じることもありますが、生徒の成長に確かにつながっていることを本当に実感しています。
邑久高校では実際に、「地域活性化に貢献したい」と肯定的に回答した生徒が96.8%(2023年度)と、取組開始当初の58.1%(2016年度)から大きく増加しています。

自分たちで決めたことを大変だけど形にしていく。そうしたセトリーによる体験と実践を通じた地域との関わりの中で、自分のしたことが役に立つ、社会に影響を与えているという実感を育んでいるようです。
これらの取組を通じて得意なこと、やりたいこと、目標などを明確にして、次のステップに進む生徒も多いです。

「瀬戸内の未来を担う人になってほしい」という願いを込めて始まったセトリーは、高校生の主体性や協働の姿勢を育み、学校の魅力を生み、市や地元企業からも歓迎される、みんなにとってかけがえのない存在になっています。

瀬戸内市の春夏秋冬の壁画

瀬戸内市の春夏秋冬の壁画は邑久高校の魅力のひとつ