岡山市教育委員会は、昭和57年に策定した「岡山市図書館整備基本計画」を平成6年11月に見直し、新たに「岡山市立図書館整備基本計画」を策定した。
この計画の中で、岡山市の「すべての地域に図書館サービスが行き届くこと」を基本方針に据えた上で、当面の方向として、8万冊から10万冊規模の地域の基幹となる地区図書館(以下、単に「地区図書館」という)を、北部地域、西部地域、東部地域に新たに建設するとともに、西大寺図書館については移転新築する方針を示した。
この計画を具体化するために、平成8年6月に「岡山市立図書館整備実施計画策定検討委員会」を設置し、西大寺図書館を含む4地区図書館の建設に関する基本的考え方、その他建設推進に必要な事項について審議を行い、「検討委員会案」として報告された。岡山市教育委員会ではこの報告をもとに検討を行い、この度実施計画として策定するものである。
基幹地区図書館建設の対象となっている4地域については、理由や程度に違いはあるものの、現状ではいずれも図書館サービスが十分に行き渡っているという状況にはない。
現在の西大寺図書館は西大寺市民会館に併設されているが、蔵書収容能力においても、サービス機能の点でも、数年前からすでに限界に達しており、早急な整備が求められている。
西大寺地域は、旭東・上南・西大寺・山南及び上道の各中学校区を想定しているが、エリアが広大であることから、将来的には、地区図書館を拠点に地区公民館の図書コーナーの充実等により図書館サービスの充実を図ることが必要である。
北部地域の範囲としては京山中学校区及び中山・香和・高松・足守の各中学校区が想定されるが、エリア面積は広大である。
この地域には足守に足守図書館(開架図書約1万冊)があり、主として周辺住民により利用されている。
また、京山公民館内に伊島図書館(開架図書約1万冊)が整備されており、西大寺図書館に優るとも劣らない利用者数を数えている。
こうした状況から見て、この北部地域は不十分ながらも、西大寺地域を除く3つの計画地域の中では、部分的にはもっとも図書館サービスが行き届いているといえるが、伊島図書館の利用状況にも端的に現れているように、住民の読書意欲が大変高い地域であり、基幹となる地区図書館の整備が待たれている。
西部地域は御南中学校区及び吉備・福田・妹尾・興除・藤田の各中学校区が一応のエリアになるが、生活動線や人口の密集度を考えると南北2つの地域に分かれている。
この内、南部にあたる福田・妹尾・興除・藤田の各中学校区は、地域内人口に比較して地域面積が広大であるため、地区図書館を整備した場合の利用効率は悪いと言わざるを得ない。
吉備中学校区及び御南中学校区をエリアとする北の地域は、県道岡山倉敷線沿線を中心に人口が集中し、吉備公民館と御南西公民館の図書コーナーの利用頻度の高さが示しているように、地域住民の図書館サービス利用意欲は非常に高く、地区図書館の整備の必要性は極めて強いと言える。
東部地域とは、おおむね西大寺地域を除く旭川以東の地域を指すが、この地域は操山山系を間に南北2つの人口密集地域を持っている。
この内、南の地域は道路網が比較的整備されていることから、自動車を使用すれば西大寺図書館や中央図書館、幸町図書館などの利用が比較的容易である。また北の地域は国道2号で市街地中心部につながっており、自動車を使用すれば、幸町図書館や中央図書館の利用も可能である。
しかしながら図書館の利用エリアは徒歩もしくは自転車で行ける範囲が主となるものであり、北の地域には東公民館と高島公民館が、南の地域には操南公民館と富山公民館がそれぞれ整備されているとはいうものの、いずれも現状では図書館サービスが行き渡っておらず、基幹となる地区図書館の整備の必要性が非常に高い地域である。
地区図書館の建設には相当の年月と多額の費用を必要とするため、用地取得から竣工まで、1館の整備に要する期間を平均約3年間と想定して、全体計画期間を12年間とした上で、前期計画と後期計画に分けて整備を進めるものとする。
前期計画及び後期計画の計画期間並びに建設計画は次の通りとする。
建設順位や建設位置については、他の公共施設の整備や総合支所構想との関連性なども視野に入れながら、用地の確保等建設推進に必要な諸条件が整ったところから順次整備することとする。
なお、事業の推進にあたっては、用地確保の状況、その他市政を取り巻く諸条件の変化を見極めながら柔軟に対応するものとする。
西大寺地域の図書館については、カネボウ綿糸(株)西大寺工場跡地の整備計画との整合を図ることが必要であることから、その計画の進捗状況を勘案しながら別途検討することとする。
10万冊規模の地区図書館の場合、これまでの事例からはおおよそ半径1.5キロメートルの範囲内の住民の利用が大部分を占めることが予想される。
岡山市立中央図書館や幸町図書館を例にとっても、1.5キロメートルの範囲外では登録率は15%以下となっている。
したがって、実際の奉仕範囲が人口の密集地域あるいは住民の集まりやすい場所となるよう立地を考えることが、利用効率の良い施設とするための重要な条件である。
また、来館者について居住地域別に分布状況を見ると、図書館の利用圏域は同心円ではなく、住民の日常生活における通勤や買い物等の動線を主軸にした卵形であるとされており、利用効率の高い施設とするために、地区図書館の位置を決めるに当たってはこの考え方を基本におくことが必要である。
地区図書館の建設位置として求められる立地条件としては次のような条件が満たされることが望ましい。
この計画に基づいて整備する予定の4つの地区図書館は、それぞれの地域の中核的な図書館となるべき規模と内容を備えたものであることから、総合支所構想との関連牲や、各地域の社会的状況、人口の集積、地理的条件、交通アクセスなどを総合的に勘案して、地区図書館の立地条件と建設予定地を想定すれば概ね次のように考えられる。
図書館にはその規模と立地その他諸条件の違いにより、果たす機能にも自ずから違いや特色が生じるが、地域の基幹となる地区図書館については、おおむね次のような機能を備えていることを基本に考えることとする。
公共図書館のもっとも基本的な機能は資料提供であり、それは貸出しとレファレンスサービスによって成り立つ。
地区図書館は地域住民のすべての人のための図書館であるが、特に身近な図書館として、子どもや高齢者それに身体に障害のある人たちが気軽に日常的に利用できる図書館とする。
図書館はだれもがいっでも気軽に立ち寄って利用できる場である。地域にこのような施設があることは、単に本を利用するという以上に住民の暮しに豊かさと潤いをもたらすものである。
住民が自らの生活を考え、地域のあり方や街づくりを考えてゆくとき図書館は必要な資料を提供する機能を担うものであり、地域社会をつくってゆくうえで果たす役割は大きい。また職員は徹底した資料提供を行うために、住民に対して積極的な働きかけを行うよう努める。
新たに建設する図書館の外観・構造・内部のレイアウトなどは個々の条件によって左右される面が大きい。したがって以下のような基本条件を尊重しながら、実際の設計に生かすよう努めるものとする。
公共用地の高度利用・公共施設の有効活用等さまざまな条件の中で、複合施設・併設施設となる場合は次のような点に留意する。
次に掲げるフロア構成を基本に、個々の地区陶書館の設計・建設にあたり検討を加えるものとする。
地区図書館の標準面積は下記の算出基準により、算定した面積を基本に、設計・建設にあたり個々の条件を勘案するものとする。
図書館が住民のあさゆる知的要求に適切に応え、信頼される施設になるよう、新たに建設する地区図書館については、図書館の規模とサービスの実情に合った適切な専門職員の配置に努めるものとする。
この実施計画は、岡山市立図書館整備基本計画の推進に必要な事項についてまとめたものであるが、3地区図書館の新設と西大寺図書館の移転改築の完了までにはなお長期間を要することから、今後、本市の行財政を取り巻く環境は一段と厳しいものが予想される。従って、建設計画の具体化にあたっては、その時点での適切な判断に基づき柔軟に対応することが必要である。
また、岡山市立図書館整備基本計画の最終日標である岡山市全域に図書館サービスを行き届かせるためには、これら4地区図書館の整備のみならず、全市的な観点から、学校図書館の地域開放も視野に入れながら小規模な図書館の整備について検討していくことが必要である。
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