岡情審査第122号
平成17年3月25日
岡山市長 萩原 誠司 様
岡山市情報公開及び個人情報保護審査会
会長 山口 和秀
岡山市情報公開条例第16条の規定に基づく諮問について(答申)
平成16年4月15日付け岡都総起第44号による下記の諮問について次のとおり答申します。
記
岡山市が実態調査した、平成12年度~14年度に都市整備局が発注した小規模工事に係る文書(以下「本件公文書」という。)の開示請求に対して、一部開示とした決定に対する異議申立て(以下「本件異議申立て」という。)についての諮問
第1.審査会の結論
本件公文書に関して、岡山市長(以下「実施機関」という。)が行った一部開示決定において、非開示とされた項目のうち、次に掲げる部分については開示すべきである。
1 小規模工事発注指示書について
「所属名」、「監督員職氏名」、「工事名」、「施工場所」
2 工事費積算内訳書について
「単価」、「金額」、「交通整理員の数量」
3 当り単価表について
「単価」、「金額」
4 位置図について
「工事施工場所」
5 検査報告書について
「決裁欄中の印影」、「監督員の職氏名」、「検査員の職氏名、印影」、「立会人の職氏名、印影」、「工事名」、「工事場所」
6 工事写真について
「工事施工場所を特定する施設名」、「工事名」
7 支出負担行為決議書について
「決裁欄中の印影、役職名」、「所属課欄中の所属課名、印影」、「令達委託元課名」、「内容欄中の工事名」
8 平成12年度、平成13年度小規模工事・過大額一覧表及び平成14年度小規模工事・過大額一覧表について
「工事名」、「施工場所」
第2.異議申立て及び諮問の経緯
1 本件異議申立人(以下「申立人」という。)は、平成16年2月12日、実施機関に対し、岡山市情報公開条例(平成12年市条例第33号。以下「条例」という。)第3条第1項の規定に基づいて、本件公文書の開示請求を行った。
2 それに対して、実施機関は、「架空工事に係る以下の文書」として請求された文書及び「小規模工事の過大支出に係る以下の文書」として請求された文書が多量であるため、申立人と協議して、当該文書のうち、サンプルとして一例ずつを開示し、その他については一覧表で替えることとして、同年2月25日付けで、下記に掲げる文書について、それぞれに掲げる部分が、それぞれに掲げる非開示事由に該当することを理由に一部開示の決定を行った。
(1)「架空工事に係る以下の文書」として請求された文書
ア 小規模工事発注指示書
「所属名」、「監督員職氏名」-条例第5条第4号カに規定する事務事業執行情報
「工事名」、「施工場所」-条例第5条第2号に規定する法人情報
イ 工事費積算内訳書
「単価」、「金額」、「交通整理員の数量」-条例第5条第4号に規定する事務事業執行情報
ウ 位置図
「工事施工場所」-条例第5条第2号に規定する法人情報
エ 検査報告書
「決裁欄中の印影」、「監督員の職氏名」、「検査員の職氏名、印影」、「立会人の職氏名、印影」-条例第5条第4号カに規定する事務事業執行情報
「工事名」、「工事場所」、「請負人の住所、氏名」-条例第5条第2号に規定する法人情報
オ 工事写真
「工事車両に記載された当該工事の請負業者名」及び「工事施工場所を特定する施設名」-条例第5条第2号に規定する法人情報
カ 支出負担行為決議書
「決裁欄中の印影」、「所属課欄中の所属課名、印影」、「令達委託元課名」-条例第5条第4号カに規定する事務事業執行情報
「内容欄中の工事名」、「債権者の住所、氏名」-条例第5条第2号に規定する法人情報
キ 架空工事が特定できた文書-不存在
(2)「小規模工事の過大支出に係る以下の文書」として請求された文書
ア 小規模工事発注指示書
「所属名」、「監督員職氏名」-条例第5条第4号カに規定する事務事業執行情報
「請負人の業者名」、「工事名」、「施工場所」-条例第5条第2号に規定する法人情報
イ 当り単価表
「単価」、「金額」-条例第5条第4号の事務事業執行情報
ウ 位置図
「工事施工場所」-条例第5条第2号に規定する法人情報
エ 検査報告書
「決裁欄中の印影」、「監督員の職氏名」、「検査員の職氏名、印影」、「立会人の職氏名、印影」-条例第5条第4号カに規定する事務事業執行情報
「工事名」、「工事場所」、「請負人の住所、氏名」-条例第5条第2号に規定する法人情報
オ 工事写真
「工事名」-条例第5条第2号に規定する法人情報
カ 支出負担行為決議書
「決裁欄中の印影、役職名」、「所属課欄中の所属課名」、「令達委託元課名」-条例第5条第4号カに規定する事務事業執行情報
「内容欄中の工事名」、「債権者の住所、氏名」-条例第5条第2号に規定する法人情報
キ 過大支出行為が特定できた文書-不存在
(3)平成12年度、平成13年度小規模工事・過大額一覧表及び平成14年度小規模工事・過大額一覧表
「工事名」、「施工場所」、「契約業者名」-条例第5条第2号に規定する法人情報
3 上記決定を受けた申立人から、実施機関に対し、同年4月8日付けで、本件処分は、条例第5条第2号、同条第4号及び同条同号カに該当しないにもかかわらず、該当するとした違法なものであるとして、異議申立てが行われた。
4 それに対して、実施機関は、同年4月15日、本件異議申立ての取扱いについて、条例第16条の規定に基づき、当審査会に本件諮問を行った。
第3.実施機関及び申立人の主張の要旨
実施機関及び申立人の主張の要旨は、次のとおりである。
1 実施機関の主張要旨
(1)本件公文書について
本件公文書は、実施機関自ら事実関係を調査した、都市整備局が発注した小規模工事に係る関係文書である。この調査後、岡山市は、虚偽の完工検査書類を作成したとして、当時の都市整備局職員2人を虚偽公文書作成容疑で、また、過大な支払いを強制したとして、市内在住の1人を職務強要容疑で、それぞれ、岡山西警察署へ告訴及び告発を行った。
(2)条例第5条第2号に規定する法人情報該当性
この事件に関して、岡山市は、平成15年10月1日付けで、業者1人を告発したが、本件一部開示決定処分を行った平成16年2月25日においては、報道機関から被告発人が特定される情報が報道されておらず、また、検察当局が起訴していない段階で当該業者の非開示情報を開示することは、本件告発の容疑者として特定されることになり、その結果、当該業者に対する評価に否定的な影響を与え、競争上又は事業活動上の地位その他正当な利益を明らかに害すると考える。
なお、この告発については、平成16年5月25日付けで、不起訴処分になったものの、岡山市から一度は告発されているので、これが公開されることにより、何らかの事件に係わっているのではないかと疑念を持たれ、不当な利益を得たのではないかと一般市民から推測され、その結果、業者の企業イメージが低下し、受注事業が減少するなど、不利益を被ると思われるので、不起訴処分後も、不起訴処分となった被告発人が特定される関係情報を非開示とする。
(3)条例第5条第4号に規定する事務事業執行情報該当性
工事費積算内訳書は、積算の基礎となる数量と単価を用いて、個々工種ごとに金額を積み上げ、設計金額を算出したものである。これを公開すれば、近接した日時に反復継続する同種の事務事業における予定価格を類推され、落札価格の高止まり等不正行為を誘発して、契約事務の公正かつ適正な執行に支障が生じることとなるなどの弊害を伴うおそれがある。
(4)条例第5条第4号カに規定する事務事業執行情報該当性
岡山市は、平成15年10月1日付けで職員2人を告訴しており、本件一部開示決定処分時において、報道機関から被告訴人が特定される情報が報道されておらず、検察当局が起訴していない段階では、当該職員に係る非開示情報を開示することは、本件告訴の容疑者として特定されることになり、その結果、当該職員に対する評価に否定的な影響を与え、生命若しくは身体に危害が加えられ、又はその地位若しくは平穏な生活が脅かされるおそれがあった。
なお、この告訴については、平成16年8月27日までに起訴猶予処分になったものの、岡山市から一度告訴されているので、職員は被告訴人として、市民又は職員から誹謗中傷を受けたり、あらぬ疑いを受け、平穏な生活が侵されるおそれがある。
2 申立人の主張要旨
(1)はじめに
市の財産が水増請求と架空工事で不当に詐取された犯罪行為についての情報は、公益上特に公開の必要があるので、実施機関は監督責任を怠り、財産管理を怠ったにもかかわらず、関係情報を非開示とすることは、条例第1条の趣旨である、「市民の知る権利を保障し、本市の諸活動を市民に説明する責任を全うし、もって市政の民主的発展に寄与することを目的とする。」に違反するものである。
(2)条例第5条第2号非該当性
本件一部開示決定で非開示とされている業者は、いずれも岡山市の内部調査において、岡山市から過大あるいは架空の工事の代金を受領していると特定されたものである。これらの業者名が開示されれば、当該業者に対する評価に否定的な影響を生じるであろうが、それは、本来受領し得ないはずの過大あるいは架空の工事の代金を受領したという、当該業者自身の反社会的行為の結果である。したがって、これらの業者にとって、その業者名等が公開されないことが、条例第5条第2号によって保護される「正当な利益」であるということはできない。また、条例第7条では、「実施機関は、開示請求に係る公文書の非開示情報(第5条第5号に該当する情報を除く。)が記録されている場合であっても、公益上特に必要があると認めるときは、開示請求者に対し、当該公文書を開示することができる。」とあり、まさに本件は、「公益上特に公開が必要である」場合に該当する。
また、サンプルとして一例ずつ一部開示された工事関係文書が、告訴及び告発に係る工事に関するものであるか否かも明らかにされていないので、当該工事関係文書が開示されても、被告発人の氏名を特定することはできない。
(3)条例第5条第4号非該当性
最近、多数の自治体で入札制度の改革が行われており、その対策の一つとして入札予定価格を事前に公表するという試みもなされ、岡山市でもこれを行っている。予定価格が厳重に秘密にされていたはずの時代に、実際には落札価格率は非常に高かったし、現在では、岡山市でも入札予定価格の公表が行われている状況である。したがって、積算内訳の開示によって予定価格が類推されることは、現実には、落札価格の高止まり等不正行為を誘発する要因には全くならない。
さらに、申立人が、平成13年に、条例に基づき、岡山市庁舎の冷暖房等機械設備保守点検についての積算資料の開示を請求した際に、実施機関は、その全部を開示した。岡山市庁舎の機械設備保守点検についての積算内訳は開示してよいが、小規模工事の積算内訳については差し支えがあるというような理屈は成り立たない。
(4)条例第5条第4号カ非該当性
岡山市が告訴した職員の氏名が特定されれば、当該職員に対する評価に否定的な影響が生じるであろうが、当該職員は自身の公務に関して反社会的な非行を犯したとして、岡山市の内部調査によって特定され、告訴されている。地方自治体が、このような違法な職務行為に関して職員を告訴し、そのことを公表する際に、被告訴人の氏名を秘して発表するということ自体が異例であって、自身の行為のやむを得ない結果であり、職務に関することでもあるため、条例第5条第1号による保護は及ばない。しかも、「生命若しくは身体に危害が加えられ、又はその地位若しくは平穏な生活が脅かされる。」というに至っては、誇張も甚だしい。
また、サンプルとして一例ずつ一部開示された工事関係文書が、告訴に係る工事に関するものであるか否かも不明なので、本件文書が開示されても、被告訴人の氏名を特定することはできない。
さらに、実施機関は、被告訴人以外の職員氏名に関する情報について、その非開示理由を全く主張していない。
第4.審査会の判断
実施機関と申立人との間における本件の争点をめぐる諸問題に関し、当審査会は、以下のとおり判断する。
1 本件公文書の性格について
実施機関は、本件公文書を、「都市整備局が発注した小規模工事のうち、架空の工事や過大な支払いの実態について調査し、その該当の可能性が疑われる対象工事をまとめた、調査段階の文書としての性格を持つもの」としながらも、職員2人と業者1人についての、告訴あるいは告発の対象となった工事に係る文書が存在したこと自体は、審査会の審議の過程において認めているところである。しかし、本件一部開示決定において、実施機関は、架空工事が特定できた文書及び過大支出工事が特定できた文書は存在しないとして非開示にしている。これは、実施機関が行った事実関係の調査では、調査結果の一覧にある工事の全てについて、架空工事あるいは過大支出工事として断定するには足らず、今後の調査によって精査し、厳密な基準をもとに確定したいとする実施機関の考え方があるためである。架空工事あるいは過大支出工事を特定するための厳密な基準について、当審査会が判断する立場にはないが、本件公文書が、「調査段階の文書としての性格を持つ未成熟な文書」であるとの実施機関の主張を前提とした上で、本件異議申立ての争点について、以下に検討を行うものとする。
2 条例第5条第2号に規定する法人情報該当性について
条例第5条第2号は、「法人その他の団体に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、開示することにより、当該法人等又は当該事業を営む個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの」(以下「法人情報」という。)を非開示情報としている。
(1)契約業者名
申立人は、本件一部開示決定で非開示とされている契約業者は、本来受領し得ないはずの過大あるいは架空の工事の代金を受領したと特定されており、これらの業者名が開示されれば、当該業者に対する評価に否定的な影響を生じるとしても、当該業者自身の反社会的行為の結果であり、正当な利益を害するには当たらないと主張する。
しかし、前述したように、「調査段階の…未成熟な文書」という本件公文書の性格を前提とすれば、そこに記載された契約業者の全てについて、本来受領し得ないはずの過大あるいは架空の工事の代金を受領した業者とまでは断言することはできない。また、本件公文書のこうした性格が、広く知られているわけではなく、「小規模工事・過大額一覧表」という標題や、一覧表中に使用されている「未施工のもの」及び「過大支出」といった区分の表記は、調査が完結したものであるとの印象を与えるものである。さらに、不起訴処分になったとはいえ、一部の業者が告発されたという事実があり、こうした状況において、本件公文書に記載された契約業者名を開示すると、これらの業者が、何らかの事件に係わり、不当な利益を得たのではないかという疑念を持たれたり、その評価に否定的な影響が生じる事態も予想されないわけではない。したがって、本件公文書に記載された契約業者名については、開示することにより「正当な利益を害するおそれ」がある場合に非開示とすることができるとする、条例第5条第2号のいわゆる法人情報に該当する。
(2)工事名、施行場所等
実施機関は、本件公文書における工事名、地名、施行場所等を非開示にする理由として、小規模工事の場合には、工事施工場所の近隣の業者が施工するという従来からの慣行があるため、施工場所や地名等を含む工事名を開示すると、業者名が特定されることになると主張している。しかしながら、そうした慣行に精通している業者等関係者及び担当部署の職員は別にして、通常の一般人が施行場所や地名等からただちに業者名を特定し得るわけではない。したがって、実施機関の主張は、非開示とする正当な根拠たりえず、施工場所や地名等を含む工事名は開示することが妥当と判断される。
3 条例第5条第4号に規定する事務事業執行情報該当性について
条例第5条第4号は、「本市の機関又は国若しくは他の地方公共団体が行う事務又は事業に関する情報であって、開示することにより、次に掲げるおそれその他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」を非開示情報とし、その典型例をアからカまでに例示的に列挙している。ここでは、実施機関が、アからカまでの例示を特に明示しないで、条例第5条第4号に該当するとした部分について、以下に検討する。
(1)「工事費積算内訳書」及び「当り単価表」における「単価」及び「金額」
実施機関は、上記の項目を開示すれば、近接した日時に反復継続する同種の事務事業における予定価格を類推され、落札価格の高止まり等不正行為を誘発して、契約事務の適正な執行に支障が生じるおそれがあると主張する。それに対して、申立人は、現在では、岡山市も工事の入札予定価格を事前に公表しており、積算内訳の公開によって予定価格が類推されることは、現実には、落札価格の高止まり等不正行為を誘発する要因には全くならないと主張している。
申立人が主張するように、岡山市では、競争入札による工事請負においては、予定価格は入札前に公表されている。また、随意契約による小規模工事については、平成15年12月26日付けで、岡山市小規模工事取扱要領が全部改正され、岡山市小規模工事取扱規程(平成15年市訓令甲第73号。以下「取扱規程」という。)として、平成16年1月1日から施行されているが、その取扱規程第9条には、「許容価格は、次項に定める場合を除き、見積書の提出を依頼するときに公表するものとする(「次項に定める場合」とは、同条第2項の「1人の者に見積書の提出を依頼する場合」である。)。」と規定されている(なお、「許容価格」と「予定価格」は同義。…取扱規程第5条)。また、1社のみが見積書を提出する、予定価格を公表しない小規模工事はほとんどないのが実態であることは、実施機関も認めているところである。
このような岡山市における予定価格の事前公表状況を前提とすれば、開示によって予定価格の類推が容易になり、落札価格の高止まり等が誘発されるとの抽象的かつ観念的な「おそれ」を、「単価」及び「金額」についての非開示理由とすることは、説得力に欠けるように思われる。
確かに、「単価」及び「金額」については、工事の条件ごとに設定される場合もあるが、近接した同種の工事においては、ほぼ同額となることが予想されることから、「単価」が明らかになれば、事前公表がされていない、予定価格の根拠となる設計価格の類推が容易になり、このことが業者の見積努力を損なうことなども、実施機関は、懸念している。しかし、岡山市では、国及び県が公表している単価を使用することが多く、積算能力のある業者であれば、その類推は、現実には容易であると考えられる。しかも、本件公文書において、サンプルとして一例ずつ一部開示された工事については、いずれも、施工後3年以上を経過しているのである。したがって、本件公文書に記載された、「単価」及び「金額」を開示したからといって、設計価格の類推が容易になるなど、事務事業の適正な執行に支障が生じるおそれが―具体的かつ客観的な蓋然性として―存在するとは到底考えられないのであるから、開示することが妥当である。
(2)「工事費積算内訳書」における「交通整理員の数量」
「工事費積算内訳書」の数量の項目のうち、「交通整理員の数量」については、工事施工の際、業者の努力や施工計画により変化する数量であるから非開示にすべきであると、実施機関は主張している(ちなみに、本件公文書のうちの「当たり単価表」における「交通整理員の数量」については開示されているが、実施機関の事後の説明によれば、本来非開示にすべきものであったとされる)。しかし、「交通整理員の数量」は、本来、設計段階において、現場の状況に応じて適正に積算されるべきものであり、仮に、現場での調整等を通じて変更があり得る数量であるとしても、変更についての適正な理由が存在するかどうかが問題であって、設計段階での「交通整理員の数量」を非開示とする理由にはならないと考えられる。また、工事の施工後から相当の期間が経過していることを考慮すれば、「交通整理員の数量」を開示しても、事務事業の適正な執行に支障が生じるおそれがあるとはいえず、開示することが妥当である。
4 条例第5条第4号カに規定する事務事業執行情報該当性について
条例第5条第4号カは、「人の生命、健康、生活又は財産の保護、犯罪の予防、犯罪の捜査その他公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれ」を非開示情報としている。
実施機関は、起訴猶予処分となった職員2人に関する情報に関し、本件公文書に記載された、「所属名」、「職員の職氏名、印影」等の職員に係る情報を明らかにすると、被告訴人が特定されることになり、結果として当該職員に対する評価に否定的な影響を与え、生命若しくは身体に危害が加えられ、又はその地位若しくは平穏な生活が脅かされるおそれがあると主張している。しかし、「小規模工事発注指示書」ほか工事関係文書については、あくまでサンプルとしての一例であり、告訴に係る工事に関するものであるか否かも不明であり、また、担当部署の職員も相当数所属しているのであるから、本件公文書が開示されても、被告訴人の氏名を特定することができるとは考えられない。
さらに、実施機関は、当審査会における審議の過程で、被告訴人の職員が直接特定されない場合でも、被告訴人が所属すると推定される担当部署が絞り込まれて、その担当部署の職員の平穏な生活が侵されるおそれがあるとも主張している。しかし、社会的に厳しい注目を集めているとしても、実施機関には、条例第1条に規定された、「市民の知る権利を保障するとともに、本市の行う諸活動を市民に説明する責務を全う」する立場が求められているのであり、被告訴人が特定されない以上、条例第5条第4号カに規定する非開示事由に該当するとは考えられず、「所属名」、「職員の職氏名、印影」等の職員に係る情報については、全て当該小規模工事に関する「職務の遂行に係る情報」(条例第5条第1号ただし書ウ)として、開示することが妥当であると判断する。
5 結論
以上の理由により、当審査会は、「第1.審査会の結論」のとおり判断するものである。
第5.審査会の処理経過
当審査会における処理経過は次のとおりである。
年月日 | 処理内容 |
---|---|
平成16年4月15日 | 諮問書の収受 |
平成16年5月10日 | 実施機関側意見書の収受 |
平成16年5月24日 | 申立人側意見書の収受 |
平成16年6月14日 | 審議 |
平成16年7月12日 | 実施機関側及び申立人側口頭意見陳述並びに審議 |
平成16年8月2日 | 実施機関側追加意見書の収受 |
平成16年8月23日 | 審議 |
平成16年8月25日 | 申立人側追加意見書の収受 |
平成16年9月27日 | 審議 |
平成16年10月25日 | 審議 |
平成16年11月22日 | 審議 |
平成16年12月13日 | 審議 |
平成17年1月24日 | 審議 |
平成17年2月14日 | 審議 |
平成17年3月14日 | 審議 |
平成17年3月25日 | 答申 |
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