第35回坪田譲治文学賞受賞作
『あららのはたけ』(偕成社刊)
村中李衣著/石川えりこ絵
令和2年1月21日発表
平成30年9月1日から令和元年8月31日までの1年間(※)に全国で刊行された小説、児童文学等の中から、小説家・児童文学者等から推薦された93作品について、「大人も子どもも共有できる世界を描いたすぐれた作品」という観点で、予備選考会を経て候補作5作品を選定。
これを、令和2年1月14日(火曜日)開催の第35回坪田譲治文学賞選考委員会(会場:東京都千代田区平河町「ルポール麹町」)で慎重に審査した結果、村中李衣著『あららのはたけ』が選ばれた。
選考委員は、阿川佐和子、五木寛之、川村湊、中脇初枝、西本鶏介、森詠、森絵都の7名。
※選考の基準日は9月1日(岡山市文学賞条例施行規則第2条)
村中 李衣(むらなか りえ)
1958年山口県生まれ。児童文学作家。
ノートルダム清心女子大学児童学科教授。
おもな著書に『小さいベッド』『おねいちゃん』『チャーシューの月』
『かあさんのしっぽっぽ』『いつか、太陽の船』『こくん』など多数。
縁あってこの岡山の地で教鞭をとるようになり、様々な場所でさまざまな機会に坪田譲治先生の柔らかで繊細なまなざしをもらい受けていることを実感しています。そんな日々をもっともっと大事にしなさい、そして子どもたちの未来の時間に繋げていく働きをしなさいという<風の中の声>がどこからか聞こえてくるようです。この賞に関わる全ての皆様に心よりお礼申し上げます。
横浜から山口に引っ越すことになった、小学4年生のえり。ある日、じいちゃんのすすめで、じぶんだけのちいさな畑をはじめることになりました。
そこで出会ったのは、ふまれても飄々と生きる雑草たちや、ももの木のうえから細かな毛を飛ばしてくる〈もものけむし〉、台風のまえの巣づくりで手ぬきをするクモ……都会から地方にやってきた少女の、みずみずしい視点でとらえた自然のすがたを手紙にして、横浜にくらす親友のエミへ送ります。
畑で見聞きしたこと、あたらしい生活のことに加えて、手紙の内容は、横浜の小学校で不登校になってしまった、ふたりの幼なじみ・けんちゃんのことに。部屋にこもってしまったけんちゃんに、ふたりができることとは……。
ふたりの少女の手紙のやりとりをとおして、自然のふしぎと、いじめをとりまく子どもたちの心の動きを繊細に描いた作品です。
山口県へ引っ越したえりと、横浜にいるエミ。小学四年生ふたりの往復書簡という形で綴られた『あららのはたけ』は、読者の心に栄養を送りこんでくれる滋養強壮童話だ。頁をめくるたびに土の匂いがする。そこには自然界の不思議があり、植物たちのしなやかな強さがあり、少女たちの好奇心の輝きがある。読者の子どもたちもまた二人とともに驚き、ときめき、そして読了後は天を仰いでこう思うだろう。いろいろあっても、大丈夫!
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