第34回坪田譲治文学賞受賞作
『ペンギンは空を見上げる』(東京創元社刊)
八重野統摩著
平成31年1月22日発表
平成29年9月1日から平成30年8月31日までの1年間(※)に全国で刊行された小説、児童文学等の中から、小説家・児童文学者等から推薦された91作品について、「大人も子どもも共有できる世界を描いたすぐれた作品」という観点で、予備選考会を経て候補作5作品を選定。
これを、平成31年1月17日(木曜日)開催の第34回坪田譲治文学賞選考委員会(会場:東京都千代田区平河町「ルポール麹町」)で慎重に審査した結果、八重野統摩著『ペンギンは空を見上げる』が選ばれた。
選考委員は、阿川佐和子、五木寛之、川村湊、中脇初枝、西本鶏介、森詠、森絵都の7名。
※選考の基準日は9月1日(岡山市文学賞条例施行規則第2条)
八重野 統摩(やえの とうま)
1988年生まれ、北海道札幌市出身。
立命館大学経営学部卒業。
電撃小説大賞への応募作が編集者の目に留まり、
2012年に書き下ろし長編『還りの会で言ってやる』でデビューする。
ミステリ仕立ての青春小説を得意とする新鋭。
この度は、このような大変栄えある賞に拙作『ペンギンは空を見上げる』をお選びいただき誠にありがとうございます。正直なところ、まさか受賞することはないだろうと思っておりましたので、受賞のご一報をいただいた時は本当に驚きました。本作は、小学六年生のハルが困難とともに風船での宇宙撮影を目指して努力する物語です。私もそのハルに遅れを取らないよう、坪田譲治先生のお名前を冠した賞をいただいた人間として恥じない努力を、今後も続けていきたいと思います。
「おれはNASAのエンジニアになりたいんだ」それが彼の将来の夢。小学六年生の佐倉ハルくんは、ひとりで風船宇宙撮影を目指しています。できる限りおとなの力を借りず、自分だけの力で。そんなことくらいできないようでは、NASAのエンジニアになんて到底なれないから。意地っ張りな性格もあってクラスでは孤立、家に帰っても両親とぎくしゃくし、それでもひたすらひとりで壮大な目標と向き合い続けるハルくんの前にある日、金髪の転校生の女の子、鳴沢イリスが現れました。教室でなくなったうさぎのぬいぐるみを一緒に捜したことから、妙にイリスになつかれたハルくんの日常は、次第に賑やかなものになってゆきますが……。生きてゆくにあたって“夢”というものは、光り輝く道標でしょうか、それとも自分たちを縛る鎖でしょうか? ハルくんの、夢と努力の物語。奮闘するこの少年を、きっと応援したくなるはずです――読み終えたあとは、もっと。
今回の選考会では、選考委員の意見が大きく分かれ、これまでの坪田譲治文学賞にはない作品が選ばれた。八重野統摩氏の『ペンギンは空を見上げる』である。受賞作には、たしかに気になるところはあったけれども、それを上回る魅力があった。風船ロケットでの宇宙撮影に挑む少年の物語で、思いがけないどんでん返しもあり、未来に希望を抱かせる。若い書き手のこれからの可能性に、大いに期待したい。
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