第24回坪田譲治文学賞受賞作
『戸村飯店青春100連発』(理論社刊)
瀬尾まいこ著
第24回坪田譲治文学賞選考委員会は、平成21年1月20日(火曜日)午後3時から東京都千代田区平河町で開催され、選考委員会の五木寛之、高井有一、竹西寛子、立松和平、西本鶏介(50音順・敬称略)の委員5名で行った。
選考委員会で、平成19年9月1日から平成20年8月31日までの一年間に全国で刊行された単行本の中から、大人も子どもも共有できる優れた作品という観点から予備選考委員会を通過した候補作品4編を、一作ずつ慎重に審議した結果、瀬尾まいこ氏の『戸村飯店 青春100連発』を受賞作品に決定した。
瀬尾 まいこ(せお まいこ)
1974年大阪府生まれ。大谷女子大学国文科卒業。
2001年『卵の緒』で坊っちゃん文学賞大賞を受賞し、翌年、単行本『卵の緒』(マガジンハウス)でデビュー。
2005年『幸福な食卓』(講談社)で吉川英治文学新人賞を受賞。
他の作品に『図書館の神様』(マガジンハウス)、『天国はまだ遠く』(新潮社)、『優しい音楽』(双葉社)
『強運の持ち主』(文藝春秋)、『温室デイズ』(角川書店)、『見えない誰かと』(祥伝社)、『ありがとう、さようなら』(メディアファクトリー)がある。
この度はすばらしい賞をいただき、ありがとうございます。
賞をいただけただけでも嬉しかったのですが、大人も子どもも共有できる世界を描いた作品に贈呈される賞だと伺い、ますます光栄に感じています。
今回の作品は、児童文学を書こうと意識したわけではなかったのですが、日々中学生と過ごし、中学生の素敵な姿に影響されてできあがった作品なので、このような賞をいただいたことをとても嬉しく思います。
今後も気を引き締めて努めていきたいと思います。
本当にありがとうございました。
大阪の下町に住む戸村兄弟は、性格も外見も正反対で仲が悪い。兄のヘイスケは、器用で要領が良く、頭もいい男前だが、地元に馴染めず高校卒業後は東京の専門学校に通う予定。一方、弟のコウスケは誰からも愛される明朗快活な野球部員。近所に住む同級生に思いを寄せながら、将来は両親が切り盛りする戸村飯店を継ぐつもりで、手が空けば店の手伝いをしていた。
春になり、上京したヘイスケはバイトをしながら新生活をスタートする。高3になったコウスケは、最後の高校生活を謳歌しようと部活引退後も忙しい日々を送っていた。ところが冬のある日、コウスケの前に予想外の大問題が現れ、悩んだ末に東京のヘイスケを訪ねるのだが……。
同じ屋根の下で育っても全然違う人間になる兄弟の不思議さや、二人を取り囲む人々、東京と大阪の違いなど、バラエティあふれる人間性をユーモラスに描いた、珠玉の成長小説。
(解説:理論社 編集担当)
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