生まれてそだったおうちから、遠い所へひっこしなさった人がありますかね。きっとそんなことはおいやでしょう。
三ぺいは八つの時、いなかから、とうきょうへひっこして来ました。とうきょうは、にぎやかでりっぱな所です。
けれども、三ぺいはいやでした。いなかへかえりたくてなりません。川があって、さかなのおるのもいなかです。たんぼがあって、ひばりのおるのもいなかです。それを思えば、なみだが出るほどかえりたいのです。
眠っていても、いなかで友だちとあそんでいるゆめを見ました。
ある日のことです。みけのきたないねこが、
「にゃあお。」とないてはいって来ました。
ねこは、やせて、からだがどろでよごれていました。しかってもにげようとしません。
ふしぎなねこですから、外に追出して、戸をしめました。ねこは、かなしそうにないていました。ところがあくる日、さかやさんが来て、見ておどろいていいました。
「これは、前にいらっしゃった方のねこで、太郎という名で、ここで生まれたのです。それなのにうちの人につれられて、遠い所へひっこしました。
けれども、太郎は、もとのうちがこいしくて、かえって来たのでしょう。」
それを聞くと、三ぺいさんはかわいそうになって、太郎にごはんをやりました。
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