みちのまんなかにひとつの石が、あたまをちょっとのぞけてうまっていました。はるのことです。あるひそのそばで、二ねんせいのぜんたがともだちにいっていました。
「 ぼく、この石につまずいて、もう三どころんだ。」
するとともだちもいいました。
「 ぼくは二どだ。だけど一どなんか、ふくをどろだらけにして、とてもくやしかったよ。」
それでふたりはそうだんして、その石をほってとりのけることにしました。ふたりはおおいそぎでいえにかえって、くわをかついでやってきました。
「 よいしょ、どっこい。」
「 それほれ、やれほれ。」
かわるがわる、つちをほりました。
石のあたまは小さいこぶしくらいでも、つちのなかにはその三ばいからうまっていました。
「 大きな石だなあ。」
ぜんたはかんしんしながら、それをかかえて、そばのやぶの中に、
「 こんちきしょう。」となげこみました。
するとどうでしょう。そのときやぶのくさのなかで、きゅっというようなこえがしました。
「 あれ、いまきゅうっていったぞ。」
ともだちがいいました。
「 ヘビでも、石につぶされたのではないだろうか。」
ぜんたがいいました。ふたりはやぶにはいって、くさをわけてのぞいてみました。かわいそうにそこには、一ぴきのカエルが、石の下でしんでいました。
「 どうしよう。もういきかえらないだろうか。」
ぜんたがいいました。
「 なにだいじょうぶだ。」
ともだちはそういって、ゆびさきでカエルのあしをつまみあげて、そばの水のなかになげこみました。
「 水をのむとカエルはいきかえるんだよ。」
ともだちはいいました。
ところで、そのとしのあきのおわりでありました。ぜんたはフナをつるえさにしようと、ミミズをさがしにそのやぶの中にはいっていきました。くさをわけると、おちばにうもれて、ひとつの石がありました。その石をおこすと、おやおやそこにカエルが一ぴき、さむそうにすくみこんでおりました。
「 あ、あのカエルだ。」
ぜんたははるのことをおもいだし、石をそっとその上にのせかけてやりました。
さむくないように、おちばもあつめてもりあげてやりました。
そのつぎにまたはるがきて、いろいろのはなのさくころ、ぜんたが、そのやぶのそばをとおると、ころころとカエルのなきごえがきこえました。
はいっていってみますと、おやおやカエルはその石をおいえにして、うれしそうに目を、ぱちくりぱちくりやっていました。
所在地: 〒700-8544 岡山市北区大供一丁目1番1号 [所在地の地図]
電話: 086-803-1054 ファクス: 086-803-1763