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ひとつのビスケット

[2020年6月18日]

ID:22672

ひとつのビスケット

 五にんのこどものまえに、ひとつの小さなビスケットがありました。どうしたらよいでしょう。かんがえてみてください。ところがこの五にんのうちの大きなねえさんは、こういいました。
 「みんな、いらっしゃい。このビスケットでおもしろいことをしてあそびましょう。」
 そうして、みんなをつれて、小さな川のそばへいきました。そこは水が、ひのところで、たきのようになっていました。
 ねえさんは、ひから十メートルもある水の中へ、そのビスケットをおとしました。そしていいました。
 「みていらっしゃい。」
 そういうかいわないまに、もう一ぴきのさかながきて、ビスケットをくわえて、ぐっと水の中へひきこみました。それは、大きなふなでした。
 ふなは、ビスケットをたべたでしょうか。いいえ、ふなが水の中へはいると、もうよこから一ぴきのはやがきて、ビスケットをよこどりし、水のそこにはえているもの中へにげていきました。
 はやは、もの中でビスケットをたべたでしょうか。ふなはうろたえて、水の中をくるくるまわってさがしていました。すると、まもなくはやがもの中からでてきました。やはりビスケットをたべもせず、口いっぱいにくわえていました。そのうえなんと、うしろからぞろぞろと、ふな、はや、たなご、めだかまでなんびきもなんびきもついてでてきました。そして五にんのこどものまえで、よってたかって、そのビスケットのとりあいっこをはじめました。
 「おれんだ、おれんだ。」
 みなそういっているようにみえました。そして十も二十もの口がつぎつぎとビスケットをつつきました。なかには、それにくいついて、ひっぱったり、口でふったりしていました。それで、とうとう、ビスケットは、はやの口からはなされて、水のなかを、しだいにひのほうへながされました。それで一ぴきのたなごがくわえれば一ぴきのふながよこどりし、ふながくわえれば、はやがとるようなことになりました。だからだれの口にもはいらないで、だんだんひのほうへひのほうへとながされました。
 そこで、
 「はやくたべろ。すぐもうひぐちの、たきのなかへおちてしまうぞ。」
 ひとりのこどもがいいましたが、そのときもうビスケットは、たきのまえの、きゅうなながれのなかへまきこまれ、二十ぴきのさかなのまえをすうーとおちていきました。

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