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<感想・エッセイ>「真珠」を読んで

[2020年6月19日]

ID:22709

「真珠」を読んで


 ノートルダム清心女子大学 3年 吉田紗柚季

 「真珠」は、今回私が読んだ童話全集2巻『魔法』の中では比較的短く、お話の規模も小さなものです。だからこそ、坪田譲治の児童文学の持つ、子供たちの日常の純なきらめきを切り取る力がはっきり出ているように感じます。
 「なんだかほんとうに、玉がとられたように思われて、胸がどきどきするではありませんか。そして美代子はこんどはほんとうにそんなことがしてみたくなりました。」はらはらしながらページをめくる私は、もし美代子が真珠を無くしてしまったり、このことを姉や母親に知られてしまったりしたら、そのわけをうまく話せないまま怒られてしまうのではと直感しました。誰しもに彼女のような経験があるかはさておき、そういった大人に理解されない、おさない子供ならではの空想の力に想いを馳せると、そういう意味でもこの理屈で説明できないささいな行動力は、他人に理解されないこと、自分で説明できないことはしてはいけないと知らされてしまった私たち大人の失われた能力の一つといえるのではないでしょうか。譲治の作品には他にも子供たちの壮大な想像力を書いたものが少なくなく、それに触れることでかつて自分の空想が持っていた輝きを懐かしむ、そこに私なりの児童文学の魅力を見つけました。

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