ノートルダム清心女子大学 4年 石井唯
これは「おねえさん」が「わたし」にしてくれた二つのお話が述べられた童話である。将監塚とナマズ塚、「おねえさん」の話す、この二つの言い伝えの無関係さに私は初め戸惑った。おまけに最後の二つの塚の描写にも驚いた。美しいさまが表現された将監塚と、あまりにも寂しげなナマズ塚、この対比が意外に感じられたのだ。なぜならば、ナマズ塚は殺生の悲しさを表した話だと私は感じていたためだ。将監はモモの花のそばで、モモの美しさを際立たせようと金のかぶとを外していたために死んだ。これは最後の塚の様子から、美談のように示されている。ナマズは坊主に化け、殺生を止めろと漁師に説くことで、生き延びようとした。この時、ナマズは赤飯を食している。ひょっとすると、己も物を食べている身で、命惜しさのためだけに行動するナマズの浅ましさを冷たい目で批判している作品であるかもしれない、そう感じだ。
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