みずうみの岸に、ふじの花が咲きました。三郎くんは、毎日たくさんのふなや、はやを釣ってきました。八郎くんも釣りに行きましたが、一ぴきも釣れません。それで三郎くんに聞きました。
「どうしてそんなに釣れるの。」
三郎くんがいいました。
「ぼく釣る時、いつでも思うんだよ。ここにはいるぞ。ふなやはやがうんどうかいで、それはたくさん集ってる。そらきた。もうきた。そう思うとすぐうきが沈んでいく。」
そこで八郎くんは、釣竿をもって出かけました。しかもお父さんのこいを釣る竿です。
「おかあさん、ぼくこいを釣ってきます。」
そういって行きました。
岸にやなぎがしげっていました。その上でかっこうがないていました。八郎くんが思いました。
「あの木の下にはこいのおうちがある。こいの子が三びきかっこうのこえをきいている。おかあさんがおいしいものを、取りに出かけてるのだ。そうだ、そこへぼくがえさをおろしてやる。そらおいしいものだと、こいの子たちが集ってくる。うまいぞ。うまいぞ。」
八郎くんはにこにこして糸をたれました。と、もううきが沈みました。あれ、糸をひっぱります。竿がぐんぐんしなりました。あげてみたら十二センチもあるようなこいの子が、ぴんぴんはねておりました。
「ああうれしい。」
八郎くんはまた糸をなげ入れました。またうきが沈みました。また糸をひきました。またぴんぴんはねるこいの子が釣れました。
「ああうれしい。」
と、その時です。ばしゃっと音がしました。水をはねて大きなこいがとびあがったのです。そうです。こいのおかあさんが、かえって来たのです。子どもがいないとうろたえて、今きちがいのようにさがしているのです。
どうしましょう。
八郎くんはこいの子たちが、かわいそうになりました。こいのおかあさんにもすまなくなりました。だってこいのおやは、またばしゃんとはねとんだのです。八郎くんは、
「ではおかえり。おかあさんがさがしているよ。」
そういって、こいの子を水の中へはなしてやりました。
所在地: 〒700-8544 岡山市北区大供一丁目1番1号 [所在地の地図]
電話: 086-803-1054 ファクス: 086-803-1763