まぶしい晴天の中、文学を探しに出掛けた。文学というと、屋内でぱらぱらと本のページをめくる姿を想像する方も多いだろう。しかし、岡山市内には文学の薫るスポットが数多存在する。私が見つけた「アウトドアな文学の楽しみ方」を今からレポートしたい。なお、私の趣味である単価を見出しの代わりに書いていこうと思う。
岡山県庁に向かって川沿いを歩くと、多くの石碑があることに気づく。暑さに負けじと歩き、碑に刻まれた作品にしばし思いを馳せる。碑が伝える人物の生き様を考える。すると、自分の足取りがまるで星座のように、文学ゆかりの地をつないでいた。本を開く時とはまた違う達成感がある。皆さんも、自分だけの星座を描くように文学スポットを探索してみてほしい。
ここからは、実際に訪れた碑について述べたい。一つ目は早逝の俳人・住宅顕信の句碑だ。「水滴のひとつひとつが笑っている顔だ」という俳句が書かれている。字余りによる余韻が、水滴にクローズアップするようなゆったりといた響きを醸成している葉の形をした影が碑に映って、水面のきらきらした反射に似ていた。奥には旭川を臨み、涼やかな印象だ。現在大学生であり、短歌を詠むのが好きな私は、二十代で亡くなった作者に親しみを覚えると共に切なくなった。
次に訪れたのは夏目漱石の句碑だ。小説家として有名な漱石だが、実は俳句にも親しんでいる。親交の深かった正岡子規と共に句作に励んだそうだ。漱石の句碑には「生きて仰ぐ空の高さよ赤蜻蛉」と刻まれている。胃潰瘍から回復した漱石が、生きていることをしみじみと喜んで詠んだ句だそう。もうすぐ秋がやってくる空を見上げて、漱石の心に連帯するようにその美しさを噛みしめてみる。空の青さと蜻蛉の赤さの対比がきっと見事だったのだろう。俳句は、季語が心の中と外界とをつなぐ架け橋として機能していると思う。空や蜻蛉を通じて文豪の感じた喜びを追体験できるのは、実際に句碑と景色を見ることの醍醐味だ。私の心にも、飛び回る蜻蛉のような嬉しさがはじけている。
旭川沿い以外にも、岡山市内には多くの文学スポットがある。まちを歩いて文学の息づかいを感じてみてはいかがだろうか。五感や想像力で文学を味わえば、その記憶はきっとこのまちの過去と未来をつなぐ。私たちが栞となって、岡山を読み継いでいこう。
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