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インターンシップ・レポート/『市民の「文学」創造と県立図書館』

[2024年9月30日]

ID:64978

野村 朱里

 大学のレポート課題が溜まる度、私は岡山県立図書館に通いつめる。人もまばらな平日の昼下がり、書庫から取り出してもらった年代ものの専門書と睨み合いながら、A4サイズのレポートパッドで構成を練る時間は、苦しさとともに、えも言われぬ達成感を私に与えてくれる。思い返せば、幼少期より、私の側にはいつも図書館があった。父母に読んでもらった紙芝居に、少し背伸びをして選んだ児童文庫。読書感想文でも、総合的な学習でも、図書館は常に、私の学びと、遊びを支える場所だった。そして、これから先、就職して、年を重ねていっても、図書館は変わらず、私にとって近しい場所であり続けるに違いない。思うに、公立図書館は、地域に暮らす全ての人の生涯学習のために必要不可欠な施設である。市民の知を支える図書館と、分野を問わぬ充実した蔵書があって、はじめてその地域を文化的に豊かな地域と評せるのだと、私は常日頃から考えている。

 前置きが大変長くなったが、ここより、本レポートの本題に入る。本レポートは、令和六年度岡山市役所文化振興課、キャリア教育活動の中で書かれたもので、テーマは冒頭にあるように、「市民の『文学創造』と県立図書館」と定めた。活動の中で見学した岡山県立図書館の様子を記したのちに、市民が「文学」を創造するうえで、当図書館がいかなる役割を果たせるかを論ずる。

 現在、岡山市では「文学創造都市おかやま」をスローガンに掲げ、「文学」を軸とした文化芸術活動の推進に力を入れている。なお、今回の文脈における「文学」は、一般的にこの語から想像される小説や詩歌に加え、戯曲や評論、さらには所謂人文学と呼ばれるであろう学問全般のことも示す。したがって、本レポートにおける「文学」も、そのような、広義を持つものとする。

 私が県立図書館を訪ねたのは、平日の昼間のことであった。平日とはいえ、図書館は決して閑散としていない。閲覧のための机は、そのほとんどが、本と向き合う利用者で埋まっていた。平日の昼間ということもあり、その年齢層はやや高めであったが、休日には老若を問わず、あらゆる人が本の世界に浸っている。場所を変えた子供向けコーナーも、休日程ではないにせよ、幼児とその親を中心として、積極的な利用が為されていた。

 このように、岡山県立図書館は、全ての世代の市民に活用される施設である。では、そういった施設が、市民による文学の創造にどう寄与するのだろうか。

 私の考える、文学創造における図書館の役割として、以下の二つを挙げる。一つ目が、市民が文学を創造するうえでの礎となることで、二つ目が、創造されたものを後世に残すことである。

 文学に限らず、あらゆる創作物は、先に存在する作品があって、、はじめて創造されるものである。人文系の研究は言わずもがな、先行研究の熟読が求められる。小説や詩歌には、作者がこれまで触れてきた作品を含む、彼らの人生が現れる。つまるところ、書くことと読むことは、不可分の関係にあると言えよう。したがって、全ての世代が利用する図書館は、文学創造の基礎としての役割を果たしていると、私は考える。

 加えて、図書館は、創造された作品を保管し、後世に残していく役割も担っている。作品を作りっぱなしにするのでなく、適切な方法で保管・管理するまでが、真なる創造であるというのが、私の考えである。引き継がれた作品はまた、後世の人々の新たな創作の礎となる。そのようにして、長い目で市民の文学創造を助けることが、公立図書館のあるべき姿なのである。

 今年で開館二十周年を迎え、全国一の利用者数を誇る岡山県立図書館は、以上に述べたような図書館として、これからも内山下の地にありつづけるだろう。

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