「赤ちゃんがなかなか寝てくれない」「やっと寝たと思ったのにすぐに目を覚ます」と、何をしても泣き止まず、寝かしつけで困ってしまうことってありますよね。そこで今回は、赤ちゃんが寝なくてぐずる理由や、赤ちゃんを上手に寝かしつけるコツについて、「くまの森」代表の森廣美郷さんにアドバイスいただきました。
赤ちゃんが泣くのは、何らかの不快感に原因があって、大きく「肉体的不快」と「精神的不快」に分けられます。「肉体的不快」は、たとえば「お腹が空いた」とか、「おむつが汚れて気持ちが悪い」「眠たい」「暑い、寒い」といった生理的な要求を訴えようとしているもの。
「精神的不快」により泣いている場合は、たとえばお昼寝の時間が短かったり長すぎたりすると、リズムが乱れてしまって寝られないことがあります。また、刺激的な一日で興奮して落ち着かないという不快感もあります。成長の過程で感情が少し複雑になると、「なんだか寂しい」だとか、「お母さんと一緒にいたいんだけど伝えられない」といった、不安やそわそわした気持ちで泣くこともあります。
こうした精神的不快感が原因の場合は、なかなか理由がわからず手こずることもあります。けれども、あまり躍起になって泣き止まそうとか寝かそうとすると、逆効果になる場合もあります。
赤ちゃんが不快に感じている原因がわかれば、その原因を取り除いてあげましょう。また、生活習慣や環境を整えることも大切です。朝の8時までには起こし、夜の9時には寝かせるようにすること。お昼寝もなるべく夕方にずれこまないように、1回の時間を分けながら、適切にお昼寝を取ることも大切です。寝る1時間ぐらい前から室温を快適に整え、照明を落とし、眠りやすい環境にしてあげましょう。
赤ちゃんや小さな子どもは、毎日同じリズムを繰り返すことで安心します。お風呂に入ったあとにマッサージをしてあげて、歯磨きをして、電気を消して寝るというように、寝るまでのお世話をルーティン化することが大切です。大人が継続して働きかけることで、眠る時間を意識づけしてあげましょう。
やっと寝たと思ったら、ベッドに下ろした瞬間に起きてしまうこともあります。抱っこで寝た赤ちゃんをベッドに下ろす時は、赤ちゃんのおなかとママの身体を密着させたまま、頭からお尻へ静かに下ろすように寝かせると、赤ちゃんが起きずにすむようです。
赤ちゃんが興奮しているときは、赤ちゃんの耳をお母さんの左胸に近づけて抱っこすると、心臓の鼓動が聴こえて安心するといわれています。また、胎児の時のような丸い体勢も落ち着くと言われています。ベッドに下ろす時は、ゆっくりと体を離していきましょう。
おくるみで赤ちゃんをくるむことで、お母さんのお腹のなかにいたときと同じような温かさや柔らかさを思い出し、赤ちゃんは安心します。赤ちゃんは、大きな音や明るい光に当たったり、頭がグラッと傾いたりする時に、手足をビクッとさせる「モロー反射」が起きて目を覚ますことがあります。おくるみでくるむことで、モロー反射をおさえることもできます。おくるみがなければ、タオルやブランケット、ぬいぐるみなどを持たせることでも代用できます。
赤ちゃんの気をまぎらわすために、音の出るおもちゃを使うのもおすすめ。赤ちゃんはきれいな鈴の音や、高くて心地よい音を聴くと安心します。いろいろなタイプのものが市販されているので、赤ちゃんに合うものをいろいろと試してみてください。
スーパーのレジ袋をくしゃくしゃにした時の音は、お母さんの血管の中を流れる血液の音に似ているといわれ、赤ちゃんが反応して泣き止むことがわかっています。その原理を利用した「カサカサ絵本」「カサカサおもちゃ」などさまざまな商品名のおもちゃも市販されています。
寝かしつけに向かうための時間は、30分でもいいので、お子さんとゆっくり過ごす時間を確保してあげましょう。1日、2日飛ばしたとしても、リズムが乱れることはありません。お母さんやお父さんがいらいらしたり、元気になれなかったりするのであれば、方法にこだわらず、お母さんにとって心地よい方法で行ってください。
時には、安全なベッドなどに寝かせて別の部屋で休むなどしてクールダウンをしてもよいのです。お母さんもたまにはゆっくりしてください。
岡山大学医学部保健学科卒業後、保健所保健師として15年勤務。森廣さんその後母子保健業務に携わりながら、2020年に「くまの森」を開業。コロナ禍により、人とのつながりや子どもの遊びの場が減少している育児現場の一助になることを目指す。「やっちゃ、だめ」から解放されて思いっきり遊べる「無制限あそび」や「体験型おやこイベント」、お母さんのための「自分軸セッション」など、親子で学び、遊べる場を提供している。各種講座も開いている。