2020年2月23日(日曜日)に岡山大学五十周年記念館ほかで開催した「おかやま協働のまちづくり賞表彰式&SDGsフォーラムin岡山2020」には、SDGsについて「もっと知りたい」「どんな取組があるの?」「2030年に向けて何ができるだろうか」などさまざまな思いを持った約300名の方の参加がありました。
午前中は、SDGsに精通した広島大学 吉田 和浩教授による特別講演、ユース世代からの提言、午後の分科会に向けたパネルディスカッションが行われ、持続可能で豊かな社会を実現するためにわたしたちにできることを考えました。午前の締めくくりに、「第4回おかやま協働のまちづくり賞表彰式」が行われ、持続可能な地域づくりに貢献している取組を会場全体で称えました。
午後からは「第4回おかやま協働のまちづくり賞受賞取組の事例報告会」および「2030年岡山地域のありたい姿と具体的アクションを考える6つの分科会」が各会場にて行われました。ここでは、協働のまちづくり賞の表彰式と報告会について詳しくお伝えします。
第4回おかやま協働のまちづくり賞は、「すべての人に健康とやさしさを」をテーマに取組を募集しました。インターネット投票と協働推進委員会による審査を経て、受賞取組が決定しました。
第4回のテーマ「すべての人に健康とやさしさを」は、
SDGs目標3:すべての人に健康と福祉を
を軸に、子どもからお年寄りまで健康で心豊かに生活できる地域社会を実現するために協働で取り組む活動に焦点をあてたものです。
表彰式では、大森市長より、大賞1取組・入賞4取組に表彰状と副賞、奨励賞4取組に表彰状が贈られました。それぞれの団体の思いあふれる取組を、会場一体となって称え合いました。
各取組の詳細は、第4回おかやま協働のまちづくり賞のページからご覧ください。
まちづくり賞報告会ではまず、大賞・入賞を受賞した5つの取組について、事例発表を行いました。
事例報告は、取組の代表団体「地域包括ケアみつネット」代表であり、国立行政機構岡山市立金川病院院長の大森信彦さんと、岡山県立岡山御津高等学校の生徒2人により行われました。
みつネットが地域にある御津高校と一緒に何かできないかと考えていたところ、高校の地域課題解決学習(ルネス学)の一環として共にレストランをする提案に至ったことや、実際に認知症の方と一緒にレストランを運営した高校生から取組を通じて感じたことなどが報告されました。
高校生が中心となり病院や地域包括支援センター、薬局などがサポートしたこの取組を通じて、認知症の方やそのご家族、高校生、関わった地域の多くの方々みんなが自己肯定感を感じられ大変有意義な場であったことが報告されました。
この取組は今後も継続予定です。「間違えて良いんだ」という心持ちが、関わる地域の方々にやさしい気持ちをもたらすものと思います。
おかえりこども食堂を運営する上平聖子さんからご報告いただきました。
相対的貧困状態にある子どもが多くいることなどが明らかになったのをきっかけに平成28年から子ども食堂を始めました。子ども食堂の立ち上げや継続にはさまざまな試行錯誤が必要ですが、おかえりこども食堂の場合、日頃からの地域のコミュニティや信頼関係がベースにあったことで、無理なく食堂を開始できたそうです。
まちづくり賞では、運営に関わる主体の多様さや適切な役割分担が評価されましたが、多くの人のつながり、みんなの支えで事業効果や持続性が向上することを食堂やカフェの運営を通じて実感されていることが触れられました。とみやま助け合い隊の取組は、事務局長の難波徳行さんから報告されました。
富山学区では、学区内に暮らす高齢者や若者を含む住民の困りごとを同じ地域に暮らす住民がお手伝いして解決する取組が実施されています。助け合い隊メンバーが困りごとの依頼を受ける携帯電話を持ち回りで管理し、46名の登録サポーターが草刈りや買い物、病院への付き添いなどのサポートを行っています。
この仕組みの構築には、小地域ケア会議や連合町内会、老人クラブ連合会など地域に関わる多くの関係者の議論がありました。また、事前に住民アンケートを実施し住民ニーズなどを確認、さらにはある町内を対象に試験的に事業を実施し、手応えをつかんだうえで学区内での実施に至りました。「竜之口コミュニティハウス」を活用した取組は、竜之口学区コミュニティ協議会の守谷俊昭さんから報告されました。
竜之口コミュニティハウスは年間約800回、のべ10,000人以上の利用があり、地域の団体が趣味・教養・健康などさまざまな活動を行っています。これらの活動を通した三つの健康づくり「食・運動・社会参加」の観点からフレイル予防に地域をあげて取り組んでいます。
「食」の取組では栄養士や栄養委員会、スーパー等の企業との連携などが行われています。「運動」は地域包括支援センターが関与、史跡や公園の散歩など学区の地域資源を活用した取組となっています。「社会参加」では、地域の子ども達と一緒に作って食べる等、多くの住民が関与できる場が開かれています。岡山市中区地域保健医療福祉連携の活動の中から発足した「なかまちーず」の取組は、会長の是澤俊輔さんからご報告いただきました。
なかまちーずは、岡山市中区に暮らす住民が健康で医療や介護が必要になっても住み慣れた地域で最後まで暮らし続けられる地域づくりに寄与することを目的に、保健・医療・介護・福祉の連携強化や在宅医療や介護・福祉・防災等の普及啓発に取り組んでいます。中区内の多くの病院、薬局、地域包括支援センター、保健センターなど多様な組織で構成され、多くの専門職が関与していることが特徴です。
「多職種意見交換会」「市民と専門職の意見交換会」「なかまちーずフェスティバル」などを開催し、地域のニーズ把握から課題解決につながる循環的な取り組みがなされています。地域の医療従事者、町内会、学校、企業などが「ちーず」のようにとけこみ、巻き込みながら活動を行っています。続いて、事例発表をした5団体に登壇いただき、ESD・市民協働推進センター センター長 高平 亮の進行の元、パネルディスカッションを行いました。
パネルディスカッションの様子
パネルディスカッションでは、
などを伺いました。
岡山御津高校 小西 彩織さん
ルネストラン:世代間交流が自然にできた。高校生が地域に興味を持って活動したことで自分たちもできるという自信につながったと思う。
おかえりこども食堂:人が集まって来てくれたことでマンパワーが得られた。
とみやま助け合い隊:パワーとスピードが良かった。
地域丸ごと健康づくり:各団体が地域ぐるみでコミュニティを使って活動している
なかまちーず:参加者の考え方・技術・知識が多様であること。
高平:回答はそれぞれですが、協働だからこそ取り組めたことがあり、お互いを知ることで地域ぐるみの基盤ができて、結果的に取組のパワーもスピードも上がる、ということかと思います。
おかえりこども食堂 上平 聖子さん
なかまちーず 是澤 俊輔さん
ルネストラン:元々地域活動が活発で、ケアマネージャーなど地域に密着していた方々からネットワークができていった。病院関係者も活動が楽しいと思い、そうしたことからコアメンバーができた。
おかえりこども食堂:地域に大学がありそこから学生のボランティアが来てくれている。ボランティアをとても大切にしていて、この取組のメンバーだということが伝わっていることが大事だと思う。
なかまちーず:多様な関係者それぞれの人脈が大きく役に立つと考えている。専門職”として”地域に出るのではなく、専門職”だけど”こういうことにも関心がある、という意識を持つようにしていて、同じ方向で進んでいくことを考えている。
高平:人脈やつながりが大切で、さらにはそこに「感謝」というのもキーワードになっているかもしれません。一度来た人がもう一度来たいと思えるような工夫が次につながるヒントのように思いました。竜之口学区コミュニティハウス 守谷 俊昭さん
とみやま助け合い隊 難波 徳行さん
なかまちーず:3月になかまちーずフェスティバルを開催予定。今後も多くの人とつながっていきたい。(※新型コロナウイルスの感染予防のために中止になりました)
地域丸ごと健康づくり:「食・運動・社会参加」の3本柱とつながりを大切に、近道はないので、声の掛け合い・誘い合いを続けていく。
とみやま助け合い隊:ささえあいの取組をまちづくりの大きな柱にしていきたい。サポーター70名、御用聞き200件を目標としている。
おかえりこども食堂:「めざせ井戸端会議」ということで細く長く、安心できる地域の場所として続けていきたい。
ルネストラン:継続して実施していくことが目標。高校生が自ら進んで活動に参加できるような体制になるとなお良いと思っている。
報告会の様子
進行を務めた高平センター長
協働を通じて地域の組織、人の相互理解が深まり、結果的に事業の成果向上につながっていることがわかりました。また、医療・福祉機関は地域の課題解決に意欲的であり、様々な主体との協働を期待されていることが確認できました。今回の事例報告を参考に岡山市全域で医療・福祉機関と地域住民組織による協働事例が生まれ、健康と優しさがあふれる岡山市になることを期待しています。
ESD・市民協働推進センター センター長
高平 亮