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−第11回(昭和54年度)− |
貴女は気付いているだろうか 主婦という名の隠れみのに身を包み すきあらばとピンクの爪をとぐ 秘密販売人の存在に。 田舎者の私などさしずめ絶好のカモ 一杯のコーヒーを飲み終わらぬうちに 巧みな話術のとりこになる。 そっと抱きしめていた小さな秘密 きらめくような大きな秘密を ぜんまい仕掛の人形みたいに話してしまう 女豹のしなやかさで襲われたことさえ気づかずに さあ それからの彼女は大忙し 売り出しは早いにこしたことはない 小さな秘密は赤いリボンで飾って 大きな秘密はもっと大きく見えるよう上げ底をして 利口すぎる女や 男勝りの女はお呼びでない 暇すぎる女や おしゃべり好きな女は上得意様 秘密を買った女達はいそいそと隣の家の戸をたたく 新しい秘密販売人の誕生だ 彼女等は玉ころがしの糞のように増えてゆく でもいつになったら気付くのだろう 手のひらからこぼれ落ちていったやさしいものに。 |
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