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−第11回(昭和54年度)− |
喫茶店のかたすみに いまにも崩れそうな弱さを 必死にささえている二人がいる 日焼した心が ふっと、ドラマテイックに 駆け出したくなる天気ですネ 二枚の便せんを 手に持ったまま息をつめ まぶたをとじている女がいる 化粧した言葉が さあと、指からこぼれて 明日、雨ならいいですネ 騒音と喧噪の中に 消えるうしろ姿 loveを枯らしてしまった男がいる 明治的なロマンテズムで そっと、あの人のイニシャルを書く 羽のはえそうな日ですネ 喫茶店のかたすみで 私の過去のような未来のような 想い出が通り過ぎて行くのを だまって見ていた こんなに、いいお天気だというのに |
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