−第13回(昭和56年度)−
悲しみ
井上 明子
悲しみは だれにも理解されない電線です
あまりに高く ぴいんと張られていますので
多くの鳥は見たことすらないのです
あまりに空気が希薄ですので
ほとんどの鳥は死んでしまうのです
けれども そこにいると静かな森の暗がりから 明るい響きのタイコが聞こえます
あまりに澄んだ空は 鳥の魂さえ青く染めていきます
風は電線を揺らすことがありません
風景は静止しています
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