−第14回(昭和57年度)−
いのち
吉永 ゆり子
ふと手をとめて肩の力を抜き
確かな手ざわりを
静かに味わう
暗やみの中にもう何年も
あてもなく重ねられたまま
途方もなく長い時間が通りすぎて
今 やっと生まれる
たおやかな緑の双曲線
白い風の中で韮の花がゆれ
乾いた木綿の秘めた暖かさを知る
ちょっぴり不揃いの針目に
丸めた素手の間から
はにかんだ表情がのぞく
その瞬間過去が遠ざかった
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