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−第16回(昭和59年度)− |
鏡の中のわたしは 歪んだ醜い人間のぬけがら ますます無口になり 地下室に身を横たえ飢えた野良犬のように 目ばかり異様に光らせていた わからないことは聞けと言う 何のためらいもなく質すと 忽ち 冷酷な眼差しと嘲笑が 茨のように 身体のあちこちに突き刺さる みせかけのあの言葉は偽りだったのか はげしい嫌悪は 沈みきった魂の内側を うねりながら通り過ぎる 反発の壁に凭れ 重苦しい心をひきずりながら 目を閉じると ぼんやりとした地平線がひろがり 遠いところでやさしく呼ぶ声がする やがて 軽やかに足音が聞え いたわりの明日がかけ寄ってきた わたしは よろけながらも ゆっくりと立ちあがる |
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