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−第17回(昭和60年度)− |
こうして ひとり 雨の呟きを聞いていると 存在だけが 体温と共に 水墨画の中の 一つの情景となって 故郷の山々の中に 溶け込んでいく 私を抱きあげて 私の生きている重さを感じて 仕合せだと 云ったあなた 互いの想いが 季節に染まっていって 枯葉色の木の葉たちといっしょに 風の向こうに 飛び去ってしまった 秋の夜だというのに 一匹の甲虫が 光を求めてきた 落葉の下で暮らすのは 光へ向かって翔ぶよりも 苦しいことなのか 心 通い合い ただ見つめるだけで 話ができる 黙って何時間でも お喋りできる そんなあなたと 暮らしたかった 夢は はかないから美しい だからこそ あなたと いっしょに生きたかった 想い出が 窓に 腰かけて 風の歌を聞いている 空気が 透き通って 心が 透明になっていく |
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