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−第18回(昭和61年度)− |
荷台に こぼれるように 切り花を積んで さびついた自転車を 老女が 押して来る 鈍色のぶらうすから 日焼けした腕が太い 遠い日に 彼女がなくしたものを 私は 大事に抱え 私が 捨ててしまったものを 花が 持っている 感情を溜めるだけの 勇気があれば 一日は こんなに簡単には終わるまい
両肩に もたれていることに この人は 気づいているだろうか ポッと 明るい灯を背負った 花売りは 今 角を曲がって行った 置き去りにされて 私は 心をすりむいた |
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