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−第19回(昭和62年度)− |
昨日までは 通過するだけで満足していた 小さな駅で 何か買いたいと思い始めた もう訪れることはないかもしれない 目立たない駅だ 日向の匂いのする駅舎に カレンダーが掛かっていた 形のない三十日を 未整理のまま 積み上げてきた悔恨 破り捨てられた一枚を 裏返しにすると ただの 白い紙だろうか 途切れた感覚をつなぎ 言葉を探して 空洞を埋めようとしても 褪せかけた私の身体に 発車をつげるベルが 微熱のように 広がっていく ああ 買う時間がない これでいい これで充分なのか |
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