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−第20回(昭和63年度)− |
目をとじて いくら探しても なんにもなかった 体の中に 休まず 血が流れているというのは ほんとうだろうか うすぐもりの空の下 どうやらあのあたりに 海があるらしい 波の音が きこえてくればいい 耳を澄ますと 海は消えて ただ 呼吸だけが残る 私の子ども 私の仕事……私の日常 は 心の海から ひとつ またひとつと 連れ出していった 目をあけると 整理もできない棚のように 私の回りは ものでいっぱい 目をとじるとあふれだしていた あの海 波のうねり そんなものがあったことを ふと 思いだした 今 またひとつ年をとって 夏 |
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